第286話 宿前の清掃作業

「ニャッフゥ(お腹すいた)!!」

「キュキュキュ!!」

「……………………………悟郎さん、もう大丈夫?」

「ニャ(うん)!!」

「良かった………本当に良かったよ〜〜!!!もう、俺、生きた心地がしなかった!」

「ニャゥゥニャッ(ごめんなさい)……」

「悟郎さんのせいじゃ無いだろ?!悪いのは呪いを掛けて来たヤツなんだから!!ああ、もう項垂れないで!!ご飯食べに行こう、お腹減ったもんな!」

「ニャ(うん)!!」 「キュ!!」


 隣の部屋で待っててくれた、ロレンドさんとトラキオさんにも挨拶し、皆で食堂に行くと、ロシェルと両親も席についてご飯を食っていた。


「あ!おはようございます!」

「「「おはようございます」」」

「今、妻とも話していたんですが、朝食後に少し様子見を試そうと思います。大丈夫であれば、すぐ用意をしますので、護衛をお願い出来ますか?」

「もちろんです。シローは大丈夫か?」

「はい。1つ先に済ませたい事があるんで、速攻で片して来ます」


 そのまま相席させて貰い、ロシェルの隣に悟郎さんを座らせて、飯をたくさん持って戻った。


「すごい!ゴローさんいっぱいたべるの!」

「ニャ、ニャッム(うん、食べる)!」

「きっと、お代わりもするよ。ロシェルもご飯ちゃんと食べたか?」

「うん!たべたよ!……ボクももっとたべたらゴローさんみたいになれる?」

「ロシェルはもうお腹いっぱいだろ?だから、それ以上食べるのは止めておこうな。悟郎さんみたいなるには、毎日良く寝て、良く食べて、小さい時はお父さんとお母さんの側にいるんだぞ?悟郎さんだって、いつも俺と一緒にいるだろ?」

「うん!」

「なら、ロシェルはコレを食べてな。」


 使っていない皿にレイニアさくらんぼの実を乗せ、両親と一緒に食える様に渡す。

 あ、チビさんもね?俺達も今日のデザートはレイニアさくらんぼにしよう。


「あかくてピカピカ!きれい!」

「そうだな。甘くて美味しいから、齧ってみな?」

「うん!…………!!ふわぁ……おいしい!!」

「だろ?チビも大好きなんだよ。……ほら」


 マントで隠した膝の上にいるチビをロシェルに見える様にチラ見せさせる。


 ロシェルがそれを見て、一緒にレイニアを齧ってみせる。チビもさっき迄のだらし無い食い方から、即座に姿勢を正し、ロシェル用のあざと可愛い状態にバチッと決めていた。


 そして朝食の後は、宿を引き払える準備をし、ロシェル次第で早目に部屋の解約をして、戻った時の予約を受けてもらえるかを確認する事になった。


 先払いした宿代は、予約をすると次の宿泊時の代金に充当してくれるそうだ。……なんて良心的!!


 それから、ロレンドさん達に断りを入れ、街の中に繰り出す。『隠密』は部屋を出たと同時に掛けておいた。


 宿の外に出て見回すと、建物の陰に散らばって入口を監視するヤツ等がいた。……おい…増えてるぞ。


 とりあえず、近場の2人組に話を聞こう。


 そうだ……2本あるし、ジケイナの護衛が持っていた刃物を使うか。背後から近付き、一気に距離を詰めてその脇腹に刃物を突き刺した。


「ぐぅ!」 「あがっ!!」

「静かにしないと、このまま貫通させるぞ?」


 悟郎さんには正面に回ってもらい、記録をお任せして、質問コーナーを始めよう。


「さて、話すか死ぬか選ばせてやる。とりあえず聞くから素直に答えろ。あ!命がいらないなら、今すぐ申告してくれ。俺としては、後者を選んでくれた方が楽なんだよ。死体は収納して砂漠に捨てれば済むしさ。先ずは1つ、ここで何をしていた?全部言え!」

「……あ、ぼ…冒険者のシローの監視を……こ…殺せるなら殺せと言われてる……」

「次の質問、誰からの依頼だ?」

「……ティエーエムから…」

「……おい、嘘は駄目だぞ?ティエーエムはとっくに衛兵隊に捕まってる。これが最後の機会だ。素直に吐け!」


 全く……どうして直ぐにバレる嘘を付くんだよ!時間を取らせて…面倒臭え!


「……衛兵隊長のカークに頼まれた!」

「いつ?」

「昨日だ!昼頃には依頼を…」

「……ああ、残念。その頃は俺と一緒だったぞ。」

「ほ、本当だ!」

「ふ〜〜ん……。どんな容貌だった?」

「き…着崩して隊服を来た…口髭のあるヤツだ!」

「誰だよそれ?カーク隊長じゃないぞ?」

「え…?」


 ああ…偽物まで跋扈ばっこしてんのかよ?!

 

「次の質問。その依頼の印に何か渡されたか?」

「……これを…他には無い!……頼む助けてくれ!」

「へぇ……助かりたいんだ……。そうだな……なら、このまま真っ直ぐ衛兵隊舎に行って、今と同じ事を話せるかな?」

「…ぐっ……話す!約束する!!」

「分かった……。最後に名前を言え。」

「ベキャナだ!」 「タック…!」

「はい、嘘つき君はさよなら~。」


 ベキャナからは刃物を抜き回復し、タックはそのまま、さよなら。


「……なん…で…」

「嘘つきは、信じられないだろ?自分の名前をこんな状況でもかたるヤツは特にな。それと、ベキャナはさっさと行く!」

「ああ…はい!」


 さて、ロシェルが来る前に、残りも片付けよう。


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