第285話 不意の呪い

「そうか……見つかったか。なら、俺達が帰る時に連れ帰ってやれるな。そうしたら、家族の墓と並べて休ませてやろう」

「…………ああ、そうだな。それと、ロシェルの様子なんだが、チビが頑張ってくれてな。お陰で俺達にも慣れたし、明日、外に出ても気が動転しないか確認しようと言う事になった」

「大丈夫だったら、街から出て人目が減った所でハウスに入って貰おうと思ってます。そこからは、飛ばして進んで行くつもりです」

「そうだな。話を聞いていると街でも不穏な動きが多い。あまり日を開けずに戻れる様にしよう。決着はさっさと付けたいが、ランティエンスの問題を知って、協力しない訳にも行かないからな」


 ロレンドさんがボソッと『あの店が無くなったら困るし』と、真顔で呟いていたのを、トラキオさんが暖かい目で見ていた。


 お気に入りのシイタケ販売店のことか?


 それに今日、ロレンドさんがロシェルの親父さんに同行して、ギルドで指名依頼の発注と、受注を済ませてくれていた。


 後は、ロシェルが外に出ても大丈夫であれば、住まいのあるチェンパータへ帰ろうと、用意が着々と進んでいる。


 今回は、巻き込んでしまったお詫びも兼ねて、ハウスでたくさんオモテナシをしよう。ピヨ達にもロシェルと遊んで貰う様にお願いしないとな……。


 そう言えば、食後から悟郎さんがいなかった。先にベッドに行ったのか?チビは今日、ロシェルの所で頑張ったせいで、もう既にぐっすりだし。


 ベッドの並んだ部屋に行くと、既に悟郎さんは横になっていた。……今日は早いな。あれ?それに…何であんなに手足が弛緩して……。


「悟郎さん?」

「…………ミャァァ(痛い)」

「え?!悟郎さん!!どこが痛いの?!博覧強記はくらんきょうき!」



名前 悟郎(士郎の従魔)

性別 男

種族 デザートキャット(転移者の保護中)(チビの主人)

レベル 71

属性 土

状態 衰弱(呪い)


体力 232 (+30)(-124)

耐久 226(+30)(-124)

力  227(+30)(-124)

魔力 229(+30)(-124)

知力 228(+30)(-124)

瞬発力 231(+30)(-124)

運 265(+30)(-124)


特技 猫だまし、砂飛ばし、ネイルナイフ 礫乱射 飛爪斬 砂塵 俊足


装備 従魔の首輪



「はぁ?!どうして!!」


 夕飯までは何とも無かった!食べた物だって、全部確認してる!!どのタイミングで悟郎さんが『呪い』の状態になったんだよ!!!


「『看破』!」


『呪い(ウコハンボウ)』


 ……誰だこの『ウコハンボウ』って!!俺が持ちっ放しだった『解呪の水晶』を取り出し、悟郎さんの解呪に掛かる。


 クソ!クソが!許さねぇ…絶対に許さねぇぞ!!!


「悟郎さん……絶対に助けるから!頑張ってくれ!」

「…………ニャ(うん)」


 時間の経過が少ないのに、こんなにも全てのステータスに減少が表れるなんて……何の呪いだよ!!


 解呪の水晶に魔力を流すと、この前の『ブラックダリア』以上に魔力を吸われて行くのが分かった。

 収納から持っていた魔力回復薬を全て出し、ベッドの上に置いておく。


「…………シロー?どうしたんだ?!」

「トラキオさん……悟郎さんが『呪い』に掛かっていて……いつ掛けられたのかも……今は解呪をしている最中なんです」

「…………分かった!俺達の持ってる魔力回復薬も置いておくから使ってくれ。呪いは、シローも知ってるダンジョン品を使う場合と、呪術師が本人の一部を使って直接呪う方法がある。最近、誰かゴローに触れたか?」

「………ロシェル以外だと、俺しかいません。………トラキオさん……その使う本人の一部って……毛でもいいんですか?」

「…………可能だと聞いた事がある」


 領主館…………あそこで落とした毛を使われたとしか思えない。他はこの宿の中が濃厚だが、ここでは俺が清浄の魔法を掛けているから考え難い……。


「ただいま!……って、どうした?!」

「………ロレンド、ゴローが呪いを受けてしまった。今、シローが解呪中なんだよ」

「……………………あれ?もう…消えた……?」

「え?何が消えたんた?!」

「……たぶん解呪出来た………」




名前 悟郎(士郎の従魔)

性別 男

種族 デザートキャット(転移者の保護中)(チビの主人)

レベル 71

属性 土

状態 疲労


体力 232 (+30)

耐久 226(+30)

力  227(+30)

魔力 229(+30)

知力 228(+30)

瞬発力 231(+30)

運 265(+30)


特技 猫だまし、砂飛ばし、ネイルナイフ 礫乱射 飛爪斬 砂塵 俊足


装備 従魔の首輪




「………良かった……悟郎さん……悟郎さ…ん」

「……………ニャゥニォ(ありがとう)……ニャウニャ(平気)」

「うん……うんっ……疲れたろ?もう休んで……」

「……ニャ(うん)」


 悟郎さんはそのまま寝息を立て、すぐに眠った。


 ゆっくりと上下している腹を見て、緊張が溶けホッと安堵する。


 その様子を見て、トラキオさんに部屋を移ろうとゼスチャーで示され、離れ難かったけど、隣の部屋に3人で移動した。


「すいませんでした……騒がしてしまって」

「そんなの良いんだよ!それより、ゴローはもう大丈夫なんだな?!」

「はい……でも、何であんな簡単に解呪出来たんだ?解呪のし始めでは、物凄い勢いで魔力が使われて行くから『ブラックダリア』の事を思い出して焦ってしまったんです……」

「………シロー、あのダンジョン品『ブラックダリア』が特殊過ぎたんだよ。あのダンジョン品は例えるなら、125回分の呪いが掛った物だった。メリエナさんの呪いの時も、解呪は一瞬だったろ?それに『解呪の水晶』を調べた際に、呪いの種類によって必要な魔力が変わるとなっていたよな?『ブラックダリア』の解呪が出来たシローだからかもしれないが、普通の呪術師程度が掛けた呪いなら、ちゃんと跳ね返す事が出来るはずだ」

「……呪術師の呪いを解呪した場合も、その返した呪いは呪術師に戻るんですか?」

「………もちろん戻る」


 明日……確認は明日しよう。“ウコハンボウ”ってヤツがちゃんと死んだかどうかは。


 もし、死んでいなかったら……ちゃんと片付けよう……でもその前に、生きていたら聞かないとな…。



 寝室に戻って、悟郎さんの温もりを確認し隣に横になる。俺に気付くと、いつもの二の腕枕の定位置にやって来た。


 そのまま胸に抱き目を閉じる。眠れる気がしないけど、気持ちは落ち着いた。


 ………今は考えるな。悟郎さんを休ませる事が先決なんだから…。

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