第278話 ギルド長の聴取
「自己紹介がまだだったな、俺がランティエンスのギルド長 ヒッルリウだ。色々納品してくれて助かってるぞ!俺もクリフが辞めて以来、久し振りに
「ギルド長……関係無い話は後にして下さい!」
「少しくらい良いじゃねーか。……まあ、確かにちょっと面倒な事になって来たんで、先に話すか!」
うん。やっぱり副ギルドの舵取り必須な気配がする人だ。それより面倒な事って、例のアレしかねぇだろうな…。
「衛兵隊から照会があってよ、冒険者のシローってヤツはまだ生きてランティエンスにいるか?ってさ。」
「ああ……もしかして、ティエーエム商会の番頭さんから聞いたんですか?」
「そうらしい。ティエーエムが商談している隙を付いて、商会のアレやコレやと集められる証拠品を持って、衛兵隊に出頭したそうだ。今頃は、ティエーエム商会にも捜査の衛兵が入ってるだろう。その証拠品の中に、ティエーエムに指示をされて依頼をした、お前さんの討伐依頼があったって言ってな。しかもその報酬額が10万ゼルだぞ?!釣られたヤツが沢山いただろ?」
「……そんなに居たかなぁ…?一々相手にしてられないから、怪しいのは結構避けていたんですけど。」
探りを入れて来ても、終わった事だしな。面倒臭ぇし…別に話さなくても大丈夫だろ。
「……そうか。所で王都にあるジケイナ商会が、ティエーエム商会で商談中に、お前に護衛を斬り付けられたと訴えが出ている。これについては何か言う事はあるか?」
「ああ!!あの耄碌クソジジイ!!良く覚えてますって言うか、今日の事ですよ?……マジであのクソジジイ大丈夫ですか?それさえまともに覚えて無いなんて、マジで耄碌してたんですね……。」
「どう言う事だ?」
「いや〜〜〜、ティエーエムのクソクズのお陰で移動に時間を取られたり、宿に迷惑が掛ったりで、いい加減に頭にきましてね?ヤツの商会に話をする為に行った時、確かにクソジジイもいましたよ。それで、番頭さんと外に出ようとしたら、あのクソジジイが護衛をけしかけて来たんですよ〜。斬り掛かって来られたんで、自衛の為に俺も応戦はしましたが?……こんな感じで。」
今回の撮影は、チビさんのご協力を頂きました!
襟元に隠れてたチビの前に紐でスマホを固定して、街で顔を出せないチビにも外の風景が見える様にカメラを起動していたんだよ。
だから、あとは録画ボタンをタップするだけ。
それを見せたら、今度は副ギルド長が食い付いて来た。前の時も凄ぇガン見してたから、ダンジョン品オタクか何かっすかね?
「……おい、バルクナイ!俺が全然見れねぇじゃねーか!」
「!!あ…すみません……つい。」
もう1度再生して、ギルド長にも見てもらう。
どうせ衛兵隊の所で見せてくれとか、また言われんだろうなぁ。
「……なるほど。これを示せば、向こうの主張と食い違う事が証明出来るな。って言うか、いつもこんなの撮ってるのか?」
「まさか!誰が好き好んで、あんなクソジジイやクソクズ野郎を撮るもんか!これは耄碌ジジイの戯言と自分に都合良く書き換えらる傾向の強い、記憶の捏造と改ざんをちゃ〜んと見せしめるのに必要な時だけ使ってます。」
「………ゼダンガ商会の時もか?」
「まあ、少し。でも、あそこは妻と長男がアホだったんで、結果、勝手に自滅してましたね。」
ん〜〜〜これどのくらい掛かるんだ?悟郎さんはそろそろ腹が減る時間………だよね〜!時報(腹の音)が聞こえたよ。
「すいません、この聞き取りって、まだ時間が掛かりますか?」
「……ああ。まだ聞きたい事がある。」
「じゃあ、ちょっと失礼して従魔にご飯あげてもいいでしょうか?」
「別にいいぞ。確か……デザートキャットとツリードロワだったか?」
「はい。」
そうか…ギルドには申請してもう知られてるから、チビを隠す必要も無いな。
ログレスでキャンプ用品と一緒に買った、簡易テーブルを出して、ご飯を並べて2人に食ってもらう。
「………凄え美味そうな物を食わせてるじゃないか!しかも、果物の種類がそんなに揃ってるのか?!」
「ここに来る前には、ログレスのダンジョンに途中までいたんで。それにウチの悟郎さんは、美味い飯しか食いませんから。当たり前です!」
「……私、ツリードロワ初めて見ました!確か、辺境の西の山に生息する固有種ですよ!凄いなぁ〜〜!」
副ギルド長の声を聞いたチビが、サービスするかの様にフルーツを食いながら目線を送ってる……。
悟郎さんと言い、君等はどこでそう言うのを覚えてるんだよ?!
「それで、ランティエンスに到着した時、衛兵さんに注意されたんです。だからツリードロワのチビは、街では姿を隠してます。あと、宿には『ビズミネート』で申請させて貰ってます。」
「まあ、それが妥当だろうな。ここにも従魔の連れは多くいるが、さっきバルクナイが言った様にツリードロワは流石にいない。良からぬ理由で、目を付けられるのがオチだしよ。」
悟郎さんの飯を出す度に、ギルド長の目がそれを追っててウザい。悟郎さんが気にせずガツガツ食ってるから良いけどよ…。
「……で?あとの聞きたい事は何ですか?」
「あ?ああ。ジケイナ商会の件では、1度衛兵隊の詰め所に同行してもらう可能性が高い。お前達はあとどのくらいランティエンスにいる予定だ?」
俺だけの問題じゃないんで、ロレンドさんの方を見ると、頷き返して代わりに答えてくれた。
「予定は今日も入れてあと5日だ。用事も済んだんで、延長をするつもりは無い。場合によっては護衛依頼を受けつつ、早く出立する可能性もある。」
「……そうか、分かった。それと、ダンジョンはどうだった?
「ああ。特にその奥が増えている事も無かった。」
「何かダンジョン品はなかったかい?!」
あ、やっぱり副ギルド長はダンジョン品オタクだ。食い付きの素早いこと……。
「ダンジョン品はクリフさんのお陰で、見付ける事が出来た。取得品は売る予定も、何を取得したのかも、詳しく話すつもりは無い。」
「分かった…。クリフの報告では、鍵が掛かっていた物があったはずた。アイツは欲しい物しか目に入らないから、鍵の解除が必要な宝の在り処をギルドにも教えてくれていたんだ。それを狙って何人もダンジョンに行き、そのまま戻らなかった。罠があったはずだが、その情報だけでも教えてくれないか?」
ロレンドさんが少し考え、俺に話を振って来た。
「シロー、罠の情報と呪いのダンジョン品の事だけ説明を頼む。」
「了解です。じゃあ、先ずは罠から。1つは解錠すると飛び出す鉄の毒矢。数えたら30本ありました。もう1つは、解錠後に無色の毒の霧が出て来る罠でした。鉄矢は……これです。毒の霧は、俺の魔法で、解毒と念の為の清浄の魔法を2種3回掛けてやっと無くせました。……俺の想像ですが、たぶん臭いも無かったか、前のエリアで鼻が利かなくなっていたら、気付かない程度だったかもしれませんね。」
「……はあ。宝に目が眩んだヤツ等が、帰って来ねぇはずだ。」
やっぱりエグい罠だったのか?聞いていたギルドの3人が一様に渋い顔を作っていた。
それとブラックダリアの説明か……解呪の水晶では無く、俺の魔法で壊した事にしようか。
「最後に呪いのダンジョン品が一点ありました。」
「待て待て待てよ!お前は、魔法が何種使えるんだ?!解錠、解毒、清浄の上に鑑定も持ってるのかよ?!」
「……ははっ!秘密です。さて、呪いのダンジョン品の説明に戻ります。名前は『ブラックダリア』。一見、宝石で花を象った美しい花の宝飾品でした。……こんな品です。物騒な性能だったんで、その場で消滅させましたけど。」
「なんて美しい!!」
「どうやってだよ?!それと、その物騒な性能って何だ?!」
……確かに見た目の良いあの花を渡されて、受け取らないヤツは俺の様な品の確認が出来るヤツだけだろうな。
「『ブラックダリア』は、触れた者を殺すダンジョン品です。黒曜石と言う黒い石で出来ていて、どうやらその花弁は今まで犠牲になった死者の数を表す様でした。ちなみに花弁の総数は125枚です。」
「125枚だと?!それだけの人数が今まで犠牲になったってのか?!」
「『今まで』がいつからかは知りません。それと、犠牲者が亡くなったと認識されるのが、ダンジョン全体なのか、その品が有った場所なのかは、俺には分かりませんよ。」
ギルド長は犠牲者の総数に驚き、ため息を付いた。
それだけの忌まわしさを聞きても、
「……あ〜〜〜頭痛ぇ!聞きたくないが、どうやってそのダンジョン品を破壊した?」
「解呪の魔法で……「また魔法かよ!」………それを使って破壊しました。ただ、破壊する為には1枚1枚の花弁を解呪する必要があり、魔力回復薬を飲みながら解呪したんです。死んだ人の怨念か、最後の1枚にメッチャ手こずりましたよ。」
「おい、125枚だぞ?!その解呪を回復薬を飲んだとは言え、1人で解呪したのかよ?!」
「………何とか出来ましたよ?今度、機会があったらギルド長も試しでみて下さい。以外とイケます!」
「イケる訳がねぇ!……ただ、そんな物騒なダンジョン品を破壊してくれて助かったよ。持って帰られたら、ギルドで何とかしなきゃならなかったからな。」
「じゃあ、今度見付けたら持って帰って来ます!」
「だから、要らねぇ!!」「是非!!」
ギルド長が、
良くも悪くも効果が凄いよな。ダンジョン品。
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