第275話 花の採取依頼と埋葬

 出遅れはしたが、まだ依頼が残っていたんで、予定通りリカロスエペロとプローズリムの採取依頼をギルドで受け、大砂漠へと出て来た。


 悟郎さんは早速、ゴミムシ退治に走っている。


 …………すまんなゴミムシ共。悟郎さんのストレス発散の犠牲になってくれ。


 悟郎さんが俺と最初に会った砂漠ダンジョンで、同族と出会っていたかは知らない。


 ここの大砂漠の何処かにデザートキャットは居るらしいが、昼間はもちろん活動時間じゃないんで、前に来た時にも会う事は無かった。


 まあ、ウチの悟郎さんの様に可愛く、毛並みも良いデザートキャットは他にいないだろうけど、数の暴力で訴えて来られたら、それはそれで視覚的な破壊力がありそうだ。

 

 もし、悟郎さんが同族に会いたいと言うなら、今度夜の砂漠に出て来よう。


 そして街が見えなくなった頃、拾っておいた“腕”を1つずつ捨てた。帰りにはゴミムシが溜まってるだろうから、また悟郎さんが討伐するのに丁度良い寄せ餌だ。


 …………辺境から連れ去られた子供も、この砂漠のどこかにいるんだろうか。……本当、子供に暴力を振るう大人なんか、全員くたばれば良いのに……。

 

「ギュキュキュキュキュキュ!!!」

「…………………………何だよチビ。頭の上でダンダンするのは、止めろって言ったろ?」

「ギュゥーーーー!!!」

「……………ふぅ…分かったよ、もう考え無い。考えても…もう遅いからな。」

「キュ!」


 お前のダンダンは脳を無駄に揺さぶるし、しかも髪の毛を無遠慮に掴むから、抜かれないか心配だよ。

 頭頂部だけハゲるなんて、絶対に嫌だからな?!


「…………シロー、チビの指摘通り、考えてももう手遅れだったんだ。フウライさんも諦めず捜索を出していたから、せめて戻せるだけでも連れて帰ってやろう。」

「はい…。」

「それより、シローはティエーエムと一緒にいた爺さんに注意しろ。あの名前ジケイナは、王都にある大商会と同じ名前だ。何かの時は、あっちの方がより面倒な相手になるだろう。」

「俺は用もないし、王都なんか行きませんよ?」

「絡んで来ないとも限らない。既に護衛を1人、使い物にならなくしたしな。」


 マジ面倒臭ぇ…あのクソジジイが“ちょっと手伝ってやれ”なんて、迂闊な指示を出したからだろうに!


 そして、先を行く悟郎さんの跡を追うように大砂漠を進むと、砂では無く岩がポツポツと現れて来た。


 岩場には植物が生え、一部の地面が蔦に覆われている。そこには、白い花が2種と鮮やかな赤紫の花がたくさん咲いている。


「うわ……。ここだけ砂漠じゃないみたいだ。」

「多分、岩場のお陰で、多少でも水分が地中に残っているからだろうと言われてるな。」


 悟郎さんもゴミムシ討伐を止めて戻って来た。花の匂いを嗅いで回ってる。


「悟郎さん、この花を悟郎さんのぷち砂漠に植えても平気?」

「ニャニャゥ(いいよ)!」


 許可が出たんで、早速採取するか…。



【プローズリム(砂漠の薔薇):多年草、一重咲きの白い薔薇 乾燥と暑さに強い。】


【リカロスエペロ(砂漠の百合):多年草 旱魃かんばつ時は地中で球根が休眠状態となる 一枝に白い花が複数咲く 乾燥と暑さに強い。】


【ベナドンサーバ(バーベナ):多年草 小さな花が纏まって咲く 様々な花色がある 乾燥と暑さに強い。】


 薔薇…と言っても一重咲きだからゴージャス感よりさっぱりとした雰囲気。百合もどちらかと言えば、1輪でドーンと存在感がある百合ではなく、ヒヤシンス?みたいに花が付いた咲き方をしている。


 赤紫の花は、バーベナって言われてもピンと来ないから、俺的には葉っぱの少ないランタナだ。


「…………ベナドンサーバもあれば喜ばれるな。」

「そうだな、ついでに採取して行こう。祝の席には飾られる事の多い花だからな。」

「そうなんですか?」

「…………花をたくさん付けて咲く事から、繁栄や団結と言った象徴の花なんだ。」


 花言葉的なやつか?異世界にもあるんだ…。


 だが、先ずは依頼品の採取だ。ロレンドさん達の収納はまだ秘密にしておいて、既に大っぴらに使ってる俺の収納に仕舞い、ハウスを出してピヨ達の飯を追加で置き、悟郎さんのぷち砂漠にも花を植えさせて貰う。


 ピヨ達は元気だな……3羽でいっぺんに飛び付かれると、もう受け止めるのがギリギリだよ〜。

 それと、従魔の首環(足輪)を着けているから、後で試しに砂漠へ出てもらうからな?準備しておいてよ?


 ピヨ達にスタンバイを頼み、ハウスから出て悟郎さんに声を掛ける。


「悟郎さん。埋める場所を決めて貰ってもいいか?」

「……ニャッ(わかった)。」


 岩場から離れ、少し行った砂漠の上で、悟郎さんが止まった。


 その場所を水で少し濡らしながら深めに穴を掘り、袋から出して清浄の魔法で血を落としてから、静かに穴へ置いた。


「俺達のとばっちりでごめんな……。」

「…………ニャゥゥニャッ(ごめんなさい)。」


 悟郎さんと一緒に砂を掛け、その上にリカロスエペロの花を手向ける。


「……悟郎さん行こうか。」

「ニャ(うん)……。」


 袋は清浄をした後で切り裂き、チャ◯カマンで燃やした。


 ロレンドさん達の元へ戻ると、2人に頭をポフポフされた。………早くもっとデカくなりたい。


 そして、スタンバイさせていたピヨ達を試しに呼んでみたが、一歩出た瞬間、速攻でハウスに戻ってしまった。


「暑すぎたか……。」

「…………ミーガンタは、そもそも南の山の山頂に近い辺りが生息域に近い環境だ。真逆のこの暑さでは無理も無い。」


 依頼品の採取も終わり、岩場付近を探索がてら歩いていると、チビが急に鳴き出しセンサーに反応あり!と、知らせて来た。


 え〜〜〜〜?ここじゃ、またナツメヤシかカカライハリス水スイカじゃねぇの?


 早く行けとせっつくチビにダンダンされながら進んで行くと、親指大の赤黄緑色をした木の実がたくさん生っていた。


「?何だこの実は…。」

「キュゥ〜〜〜〜〜〜〜!!」


【シグカイオン(ピスタチオ):女王と呼ばれる緑が鮮やかな木の実。ビタミンBやカリウム等、栄養価も高い。 食用可能】


「…………チビさんや。」

「キュ!」

「でかした!」

「キュ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」


 これはチビだけでなくピヨ達も食えるし、加工すれば悟郎さんも食ってくれるはずだ!とりあえず、ある物は採取して今晩にでも加工しよう。


 あ〜〜味見を!味見用に今、水分抜いて乾燥…乾燥…少しずつ焙煎……頑張れチャ◯カマン!


「……何とか。パカッっと殻も割れたな。」

「また、チビが見つけたのか?」

「…………木の実なのか?」

「先ずは発見者のチビさん!さあ、味見をどうぞ!」

「キュ〜〜〜〜〜〜〜〜〜…ッケホッ!!!」


 鳴き過ぎて咽るなよ……。殻から実を出して渡してやると、チビは器用に薄皮を剥き、中の緑色の鮮やかな実をコリコリと一心不乱に貪った。……美味いらしい。


「ロレンドさん、トラキオさんも試してみて下さい。殻の中の緑色の実が可食部です。」

「ああ、ありがとう。初めて食うな。」

「…………ありがとう。色が綺麗だ。………さっぱりした木の実だ…美味いな。」

「悟郎さん、後でこの実を悟郎さんも美味しく食べれる様にするから、ちょっと待ってな。代わりにジャーキー食ってて。」

「ニャッ(わかった)。」


 木の実の状態で匂いを嗅いでも、悟郎さんの食指が動く事は無いが、後でピスタチオクリームを作って美味いと言わせてやるからな!


 ピスタチオを採取しつつ岩場を抜け、また砂漠に戻ると、砂漠の上に黒いゴミムシ溜まりが出来ていた。


 アイツ等はいったいどこから湧くのか、悟郎さんの殲滅なんのそのだな。


 そこにもう一種、砂漠ダンジョンでも良く見た砂の模様が刻まれていた。


「悟郎さん、ヘビもいるから気を付けて。」

「……ニャォゥ(いた)。」


 濃い砂色のベース色に、黒い鎖模様が『毒持ってます!』と主張してる様な長い蛇だった。こいつもパニック映画に出られるサイズで、ウネッてるから良くは分らないけど、全長10mは超えていそうな長さだ。



ツルセラ(毒蛇)

レベル 58

属性 土

状態 捕食中


体力 279

耐久 340

力  301

魔力 221

知力 109

瞬発力 207

運 63


特技 噛み付き 飛び付き 毒撒き


弱点 腹



「……何か食ってるな。悟郎さん、その蛇、毒を撒き散らすから遠距離攻撃しよう。」

「ニャッ(わかった)!」

「シロー、ゴローも気を付けろ!この大砂漠で一番、毒の強いヤツだ!」

「…………今の距離を保つんだ!」


 そんなに毒が強いのか……。


 食事中の蛇に、悟郎さんが『爪飛斬』を首元に向けて続け様に放ったのを見て、チビもピスタチオをムシャりながら『風薙』を飛ばす。


 蛇が攻撃を受けて、飲みかけていた獲物を吐き、こっちへ向き直ろうと体勢を変えた所に、悟郎ガトリング(礫乱射)が炸裂した。


 俺は毒吐き防止で、ヤツの顔を覆っておくか……と、魔法を掛けたら、いきなり蛇の顔周りが霧状のモヤで曇った。おお、間一髪、ナイスガードだったな。


「皮が凄く硬いのか?あれだけ魔法を受けても、切れ目が入って、皮が切れたくらいだなんて!」

「…………ツルセラは、防御が非常に高い魔物だ!一点集中で倒そう!」


 トラキオさんの声掛けで、悟郎さんとチビも同じ場所に狙いを付け、攻撃を繰り返した。


 俺が毒吐きを抑えているのを見て、2人も近距離・遠距離と攻撃を織り交ぜ首元を狙っていく。


 よし!皆の防御と補助魔法も掛け終わったから、俺も参戦するぜ!


 じゃあ、お得意のエアカッターとウォーターレーザーよ、行け!


 皆の攻撃の合間に魔法を放った。


 ………きっちり蛇にヒットし、そのまま頭が飛んで、砂漠に落下した…。


「「あ!」」

「ニ゛ッャ(なに)?!」

「ギュッ?!」

「……………………あ……マジで…すみません。」


 悟郎さんは駆け寄って俺の肩に乗ると、久し振りに俺の頭を叩いて来た(爪有り)。

 

 脳震盪と爪3本分の切り傷を回復し、言い訳混じりの謝罪を繰り返した。


「まさか、切れると思わず、空気読めない魔法を放って、大変申し訳ありません!」

「ニャオン(ばか)!!」

「今度遭遇したら、援護と補助に徹します!悟郎さん許して下さい!!」

「ニャァフ(だめ)!!」


 せっかくの共闘を駄目にされ、悟郎さんが思ったよりご立腹だ…。


 俺だって、共闘してぇよ!

 あ!今度は、投擲オンリーにするから!


「シロー!来てくれ!」

「………ゴローも!説教はあとだ!」


 え?!嘘だろ?また後で説教されんの?!






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




おはようございます。さっきオキマシタ……。


更新ボタンも押し忘れて……しかも、もう夜やん…↷


遅くなり、すみませんm(_ _)m!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る