第264話 癒やしの指輪

 昨日は、伝説のタケハンターからダンジョンの地図を貰ったお陰で、ロレンドさんとトラキオさんがその地図を見ながら長く語り合っていた。


 ギルドの地図より詳しく、しかもロレンドさんの書き写した地図と違う所が数ヵ所あるらしい。


「シローにも言ったが、あのダンジョンは不人気なんだよ。昨日のクリフさんも、最初は採取物を持ち帰るのに苦労をしていたそうだが、多分、あのダンジョンで収納袋を手に入れたんだろう。そこからが伝説の始まりになった。」

「…………クリフさんが隈無く探しているかもしれないが、ダンジョン品を手に入れるには、競争率が低くて浅いダンジョンは狙い目なんだ。」

「そうなんですね……。因みに俺の狙い目はタケです。」


 俺は既に便利なダンジョン品と、元から持っていた物がダンジョン品になったヤツが複数ある。

 役立つ物が見つかったら、2人に使って貰うのが良いよな。


 俺の覚悟(対虫)も地図を見て大体決まった。最も足を踏み入れたく無いエリアも記憶済。


 あそことあそこは、ウチのピヨ三連星に期待をしつつ、切り抜けよう。


 事前の打合せで、ママルマダケマッシュルームのエリアまではスルーして、次のボウダケえのき茸エリアから攻めて探索をしようとなった。


 翌日、ギルドに行くと新たな採取依頼が出ていて、依頼主はクリフさん、納品物はボウダケえのき茸だった。


「読まれているな。」

「そりゃあ、熱く語りましたから。」

「………どちらにしても受けよう。地図の礼も兼ねて。あとは現物タケを土産にすれば良いだろう。」


 何より現物が1番喜ばれそうだ。


 ギルドで昨日の精算金を受け取り、新たな依頼を受注して、再度キノコダンジョンへ向けて進んで行った。


「ここで提案です。」

「ん?何だ?」

「…………言ってみてくれ。」

「大砂漠の時に飛んだみたいに行っても良いですか?途中で1度休憩して、そこでピヨ達をハウスから出してから、ダンジョンに入りたいんです。」


 ロレンドさんの顔が引き攣ったが、トラキオさんがGOサインを出した。ピューンくらいの緩い跳躍にしますからね〜!


 そして、予定通りピヨ達を出してカバンに入ってもらい、真っ直ぐダンジョン目指して跳躍!


「………かなり早く着いたな。」

「……ああ。……そうだ…な。」


 今回は俺的にかなり緩めの跳躍だったんだけど…。ロレンドさんは三半規管が弱いのか?


「よし、誰もいないぞと…。」

「…………ロレンド大丈夫か?」

「ああ…。少しすれば落ち着く。」


 う〜〜〜ん。我慢をしてるな…。これって回復が効くのか?俺の回復も以前より段位が上がったし、少し試してみようか…。


「ロレンドさん回復掛けてみます。構いませんか?」

「いや、この位で回復してもらっては……」

「大丈夫です!掛けますよ?…はい!」

「……すまないな。あ〜…スッキリしてきたよ。昔から何でか駄目なんだよな…。」


 2人の事はプライバシーもあるし調べてないんだけど、何が原因なんだろう…?


 エリンギは避けるより切ってしまおうと思ってんだけど、それ以外は敵も含めて跳んて避ける予定だったんだよな…。


「もう大丈夫だから、予定通り行ってくれ。」

「…………無理は……してないな?」

「ああ、回復効くな。嘘みたいに何とも無いよ。」

「分かりました。なら、行きます。」


 シメジ、シイタケ、マイタケとエリアを跨いで、エリンギ手前で1度止まった。


トムテダケエリンギは跳ぶのに邪魔なんで切ります!」

「…………了解!」

「………。」


 抜ける分のエリンギを切って収納をしたら、もう一飛だ。


「…………ロレンド平気か?」

「あ、ああ。実は今のは全く平気だったんだ…。何でだ?」

「もしかしたら、自覚が無いけど、どこかに不調があったのかもしれませんね?念の為にもう一度……回復!よし、これでママルマダケの先まで跳躍します。ロレンドさんはご自身の様子にも注意してみて下さい。」

「分かった。シローありがとう。」


 エリンギからマッシュルームを抜け、やっと、えのき茸ゾーンだ!

 本当に眼と鼻の先まで来ていたんだな…。


「今のも全然平気だった…!俺、本当にどこか調子が悪かったのか?!」

「…………シロー、最後の方は勢い付けて飛んだよな?」

「はい。大砂漠で、悟郎さんを追いかけた時と同じ程度に飛びましたよ。」

「本当か?!でも大丈夫だ…何とも無い……。」


 ロレンドさんは辺りを見回したり、手を握ったり開いたりして、違和感が無い事を確かめていた。


「…………大丈夫そうだな。」

「ああ!全く問題無いよ!」

「回復で治る事だったのかもしれませんが、俺は原因が何かを知りません。また同じ様な違和感が出たら、その時は治療院に一度行ってみて下さいね?」

「ああ、そうするよ。兎に角ありがとうシロー!」


 ビス◯ルクなロレンドさんも見物だったけど、身体の不調から来る事が原因では看過できないよな。


「…………じゃあ、ここから探して行こう。ギルドの地図とクリフさんの地図とで差異があったのは、ボウダケえのき茸の次の区画だった。」

「コレ全部刈っていいですか?」

「任せた!やってくれ!」


 何か…この、えのき茸の原っぱを見てると…こう…ラン♪ランララ♪〜って歌い出したくなるよな!肩には悟郎さんがいるしよ!


 今回はやらねぇよ?俺も多少の自重は覚えたし、悟郎さんが何かを察知して、爪を出してるからな!


 俺の操風の段位がきっと上がってる……また鮮やかな、刈り取り&収納!!を見せちまうな!…あ、なんか魔物も倒した!チビ、残りの魔物を頼んだ!!


「完了です!」

「…………他のヤツには見せられないほど早いぞ?」

「ついでに魔物も狩られてるしな……。」

「細かい事は置いて、先に進みましょう!さあ、ピヨ達!出番です!!」

「「「ピヨピヨピッ!!!」」」


 俺の天敵1号がこの先にいる!!君等の活躍によっては、なめこの採取をしたいと思っている!

 駄目だった場合は、採取を諦め、風の魔法をぶち撒ける。


 俺の指示を聞け〜〜〜!


「この先に、多分ピヨ達の好物の魔物プワムーチミルワームがいます。もし、口にあわなかったら直に戻って来てくれ。」

「「「ピヨ!!」」」

「悟郎さん、チビ。ピヨ達の援護を頼む!相手の魔物は噛みつき攻撃のみらしいんで、遠距離攻撃で充分対応可能だ!」

「ニャッ(わかった)!」

「キュ!」


 ピヨ達が、なめこエリアに突撃した。その後を悟郎さんとチビが追う。俺も薄目でソロソロと後を行くと、ピヨ達の歓喜の鳴き声が聞こえて来た。


 どうやらお気に召したらしい。そして、幸いな、誠に幸いな事に、ドロップは魔石のみと地図に記載されていた。


 また、あの白いブヨ肉みたいな物を拾う羽目になるのか…と、絶望し掛けたが杞憂に終わったのだ!


「凄い勢いで食ってる…。」

「…………雛鳥にとっては、消化も栄養も良さそうな虫だからな。」

「よ、よ、良かったです。ピヨ達ならきっと気に入ると思ったんですよ……経験的に。」


 ハウスでは野菜や果物、タンパクな肉を食わせてるけど、やっぱりフレッシュ?な虫には敵わないよな〜?って思ったけど、ハウスで食わせるのは無理だから……絶対に無理だゴルァ!


「ニャァニャオ(たおした)!」

「…え?もう食い終わったの?」

「…………ああ。完食だ。大きさも丁度良かったみたいだぞ?」

「また、魔石がえらい事になってるけどな。」


 ピヨ達が俺の方へと駆けて来る。…あ…クチバシの端っこに違和感!食べかすダメ!清浄!!


 ピヨ達よくやった。お腹一杯になった?え?まだ?じゃあ、この先にまだご馳走が控えてるからね?


 え?お代わり?ここの虫はお代わり無いんだよ。もう少しまってな?な?


「トラキオ、地図の相違場所ってここか?」

「…………そうだ。クリフさんの地図だと窪んでいるはずなんだ。」


 2人が地図の相違場所を確認している間に、魔石を収納!なめこの刈り取り!収納!!


 ロレンドさんが壁をガリガリとスコップの様な物で削ると、本来崩れないはずのダンジョンの壁がボロっと落ち、空洞がそこに見えて来た。


「あ!何かあるぞ!」

「…………気を付けろよ、ロレンド!」


 ロレンドさんが灯りの魔導具で中を照らすと、床に四角い箱が置いてあるのが見えた。


 それを確認すると、ロレンドさんは距離を取って、先程のスコップで蓋を開けようと持ち上げた。


「……駄目だ。鍵付きの様だ。」

「…………そうか、残念だったな。」

「?俺、解錠してみましょうか?」

「「出来るのか?!!!」」

「…はい。ただ、使う機会が無くて、難しい鍵だと無理かもしれませんが…。」


 試して欲しいと2人に言われたんで、解錠の術を…使う前に確認しよう。


【ダンジョンの宝箱:鍵付き、罠無し】


 はは!罠も付いてる場合があんのかよ?!


 さて、解錠出来るかな?


「解錠の術!」


 魔法を唱えると、宝箱の蓋がパカッと上にはね上がった。後ろから2人の歓声が上がる。


「「おお!!」」


 場所を譲り、2人に中身を確認しもらおう。

 良い物が入ってるといいな。


「これは……指輪?」

「…………シロー鑑定して貰ってもいいか?」

「はい、大丈夫ですよ。」


【癒やしの指輪:装備者が自身の魔力を注ぐと、傷や病を癒やす。状態によって必要な魔力量は変わる。】


「これは『癒やしの指輪』っていう物です。装備者自身の魔力を使って傷や病を癒やす、となってます。」

「え……そんな凄い物なのか?!」

「…………もしかして、クリフさんは見付けたけど、開けらずにそのまま放置したのかもしれないな…。」


 ロレンドさんに指輪を渡すと、指輪を嵌めてナイフで指を切り、魔力を込めた。


「…治った………。トラキオも試してみろ。」

「…………ああ。」


 トラキオさんも結構ザックリ切ってから、魔力込める。瞬く間に傷は癒えて元通りとなった。


「俺は要りませんからね?」

「だが、ダンジョンで手に入れたダンジョン品は高額で売却も可能なんだ。そう言う訳には行かない。」

「その指輪は売りませんよね?」

「…………そうだな。その場合は、やはり対価に見合う物を渡す様になる。」

「……分かりました。でも、とりあえずはロレンドさんかトラキオさんが装備してて下さい。俺は魔法が使えるんで、持ち腐れさせますよ?」

「トラキオ、お前が装備してくれ。敵の近くに行く機会は、圧倒的にお前の方が多いからな。」

「…………分かった。相談は後でゆっくりしよう。」


 ギルドの地図との相違場所はあと2か所ある。

 何が出るかね?







〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






番号ズレとタイトル入れの修正で、お騒がせしました!


2話もズレてた……。


一先ず終了したので、これからもよろしくお願いします!

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