第265話 贈り物

 宿敵第一号となめこエリアを抜け、次は木耳きくらげ&コオロギゾーンだ。

 

 クリフさんの地図には『ヤツ等本当にうるさい!』って書いてあったんだ。


 いったいどう言う事だ?


 近付くにつれ、聞こえて来たのは虫の声…リーン…リーン……風情があるね?……んなもんねぇよ!!何匹鳴いてんだこれ?!クソうるせぇ!!


「ニャウ(無理)!!!」

「ああ!悟郎さん大丈夫?!マントで覆うから、服の中入ってて!」

「これは………さっさと倒そう!」

「…………了解!!」

「チビ、イア、オルガ、マシュー、大丈夫だったらアイツ等一緒に倒すよ!悟郎さんの耳を守るんだ!」

「キュ!!」

「「「ピッ!」」」


 リンリンリンリン、うるせぇんだよ!

 手前をロレンドさん、トラキオさん、ピヨ達がやってるから、俺は奥に纏めて水弾を落とす!!


 木耳きくらげ云々言ってられんわ!


「……よし!倒せたな!」

「…………うるさかった。まだ耳に音が残ってる様だ。……回復……おい、出来たぞ!ロレンドお前も回復しておけ。」

「ああ!」


 マジか?!悟郎さんを回復!どう?大丈夫??


 そう…。良かったよ。チビ、イア、オルガ、マシューもこっち来てくれ!みんなも回復!俺もだ回復!!


「キーンって、耳鳴りが治まったし…。」

「あの音がヤツ等の攻撃だったのかもな。」

「…………耳を塞いでも、何かが聞こえて来る様だった。」


 クソっ!その場に留まって鳴いてるだけで、脅威にも感じさせずに音波攻撃かよ?!今後も鳴く虫系は即滅だ!


「シロー、ここのタケはどうする?」

「奥の方は俺が魔法で潰してしまったんで、手前の残りを少し採って行きます。」

「…………珍しいタケだな。何の香りも無いぞ。」

「このタケは食感を楽しむ物で、歯応えがコリコリしてるらしいです。」


 残っていたのは僅か……でもまあデカイから充分だな。そんなに単体で食うキノコでもねぇし。


「侮ってたな…。俺たちもしょっちゅう依頼を受けるダンジョンじゃないから、ここから先は、ザックリした情報しか知らない。何ならクリフさんの地図の情報が頼みだ。」

「…………大きく変わっている事は無いはずだ。地図を参考にしよう。ギルドよりは具体的だ。」


 次は確か……書いてあったタケの形状からヒラタケだと思う。それより、今度は魔物が『めちゃくちゃ臭い!』って書いてあったんだ。


 音の次は臭いかよ?!臭い魔物ってなんだ?角張って平たい魔物だって…。何クセぇんだか…。


 地味なダメージを知らずに食らい、若干テンションが下がってしまったんで、また変なのを食らう前にチャージするか!


「はい、ロレンドさん。トラキオさんもどうぞ。」

「おお?何だ??」

「…………ありがとう。」

ピエーピパイナップルスムージー……冷たい飲み物です。一気に飲むと頭がキーンとしますから、ゆっくり召し上がって下さい。」


 悟郎さんは何がいい?甘い物の気分なの?なら、パイナップルジャムのパンをどうぞ。

 チビは?リンゴの気分?君は大体リンゴを希望してるよな。ま、いいけど。

 ピヨ達は何がいいかな?え?さっきの虫??……それは無いんだよ……。ログレスダンジョンの虫の肉で我慢なさい。


「冷てぇな!氷…って言うか、今時期の辺境でたまに降る、凍った雨みたいだな…。甘くて美味いけど。」

「…………美味い。冷たくてスッキリだ。」

ピエーピパイナップルを凍らせて、細かく砕いただけですけど……うん、うまい。」


 一息入れて、全員で次は臭い魔物がいる事を確認して、覚悟を決めた。


 ……いや、ちょっと待て。覚悟も我慢は必要ないぞ!臭いなら事前に魔法で覆えば良いじゃねぇか!


 魔物の臭さにも依るが、ダメならそうしよう!

 近づくにつれ、漂って来る臭い……これは知ってる臭いだ!


「ニャウ〜(無理)!!」

「ギュッ!!!」

「…………これか。」

「何ともいえない……が、確かに臭いな!」

「カメ!!!操風!!!」


 カメムシじゃねえか!!どうして刺激してねぇのに、既に臭せぇんだよ?!


「「「ピピヨ?」」」

「ピヨ達……平気なのか?!」

「「「ピッ!!」」」


 …そうか!鳥は嗅覚が殆ど無い!

 ここもピヨ達に無双してもらおう!


 俺等は魔法で覆って、遠距離攻撃するぞ!


「悟郎さんどう?臭くない?」

「ニャ(うん)!」

「じゃあ、ここからピヨ達の援護をしよう。チビも大丈夫だな?」

「キュ!」

「ロレンドさん、トラキオさんはどうですか?あまり広範囲は無理ですけど、この距離なら維持できます。」

「助かる。今度は鼻が曲がりそうだったよ。」

「…………良く出来てる。聴覚の次は嗅覚を攻撃されてる様なものだ。クリフさんは良く平気だったな。」


 タケへの執念でしょうかね?


 とりあえずは、臭いの元凶を討伐しちまおう!

 今回は投擲でカメムシ本体のみを狙う様にして、臭いが移って無かったらヒラタケを採取しよう。


 淡々とカメムシを討伐して行くと、魔石以外にもドロップしている物があるんだが………。


 索敵で討伐完了の確認をし、操風を使ってコオロギゾーンの方へと暫く風を送り続ける。

 本来なら清浄の魔法も使いたいけど……やり過ぎか?


「悟郎さん、どお?まだ臭い?」

「……………ニャウニャ(平気)!」

「ここのタケは……大丈夫か?あの臭いの中でも臭くなってないんだろうか……?」

「…………確認したが、大丈夫そうだぞ?タケの匂いだけだ。」


 不思議〜〜絶対に臭くなってると思ったけど………本当だ。全くカメ臭くないや。


「どおりでここのタケは、採取数が少ないはずだよ。あれじゃ誰も取りたがらない。」

「…………もしかしたら、魔物を全滅させる必要があるエリアだったのかもな。アイツ等を残したまま採取すると臭いもタケに付いてしまう………とか。」


 その変なルール、ダンジョンぽくてあり得るかも。


 それに、どうやら流通の少ないタケらしいんで、クリフさんへの良いお土産になりそうだ。


「…………クリフさん、きっと喜ぶぞ。」

「あの人は、タケなら何でも喜んでくれそうですけどね。」

「そうだな!でも、俺達も良いダンジョン品を手に入れる切っ掛けを貰ったんだ。現物で喜んでくれるなら、たくさん渡したいよ。」


 確かに……本人が喜んでくれる物を渡すのが1番良いか。それがタケなら、今まで採ったやつも含めてたくさん渡そう。

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