第262話 サソリを餌にトカゲ狩り

 悟郎さんと出会った、あの時のダンジョンの砂漠を思い出させる砂丘と風と暑さ。エアコン魔法が無かったら、日中は外出をお控え下さいだろう。


 索敵を悟郎さんに任せ、3人分のエアコン魔法をして、悟郎さんには暑くなったら戻ってねと伝えたら、ちょっと出てすぐに戻って来た。


 ここではピヨ達は出せないな…。


「流石にゴローも暑いか。」

「悟郎さんと出会った砂漠に近いですけど、その時も日中は出歩かず、日が落ちてから行動してました。今は俺が涼しく出来る魔法を覚えたから大丈夫ですけど。」

「………その話をシローから提案されなければ、俺達だって動くのは陽が落ちてからだったぞ。」

「そうだよな〜。こんな陽の高い時間から大砂漠を歩くなんて、自殺行為に等しいからな。」


 それをしてる奴らが、街から着いて来て背後に居ますけどね?

 俺達に追い付こうと必死になって歩いてるけど、健脚とエアコンを掛けたこちらとは、ドンドン距離が開いて来ていた。ついでに、足跡は操風の魔法で消しておこう。


「………オオトゲアゴンの足跡があるな。」

「よし、幸先いいぞ!シロー、これがオオトゲアゴンの足跡だ。アイツを探す時は、索敵より足跡の方が先に見つかる可能性が高い。」

「そうですね………まだ俺の方も分かりません。悟郎さんどう?」

「………………ニャォゥ(いた)!!」


 さすが悟郎さん。弾丸ダッシュで狩りに行っちゃった。ええ〜〜?アレか??だいぶ先にいるぞ…。


 向こうも悟郎さんに気付いたのか、こちらへ向かって来ている様に見える。まだ博覧強記はくらんきょうきで調べられる範囲外だし。


 ロレンドさんに、オオトゲアゴンは物理攻撃オンリーだと聞いていたから、悟郎さんなら大丈夫だろうけど、もう少し待って欲しかった。


「………もう一匹いるな。ただ、距離はもっと離れていそうだ。」

「だな。だいぶ足跡が風で消え掛けてる…。」

「あ、もう討伐数しましたね。ロレンドさん、トラキオさん、俺の肩をしっかりと掴んで貰えますか?」

「何をするんだ?」

「………いいぞ?」


 悟郎さんが待ってるからね。跳躍!もう一丁!


「悟郎さんお待たせ〜!討伐ご苦労様!」

「ニャンニャッ(すずしい)!」

「悟郎さんはすっかり家猫(?)だな。毛があるから大丈夫だろうけど、砂がかなり熱いから、肉球火傷に注意してよ?」

「ニャッ(わかった)!」


 悟郎さんの狩ったオオトゲアゴンは、体長4mはある大きな個体だった。太くて立派な尻尾は、約1mあり無数の棘が回りを覆っている。


 鬼の金棒が尻尾に付いてるみたいだな。


 そして、砂が熱いと言うのに、何故かロレンドさんがビスマ◯クの祈り状態で片膝を付いていた。


「大丈夫…ですか?ロレンドさん??」

「…ん?ああ……。シロー、良かったら今度飛ぶ時は、もう少し加減してくれると……嬉しい。」

「はい、分かりました。」

「…………ロレンドはこの手の動きに弱いな。良い機会だ。慣れておけ。」

「……トラキオ…何でお前は平気なんだよ?」

「……………さあ?」


 そう言えば、砂丘滑り台もロレンドさんは苦手っぽかったな。

 誰にでも、苦手なものはある。今度はギューーンと勢い良く飛ばずに、もう少しフワッと飛ぶか。

 

「……ニャォゥニゥ(なんかいた)。」

「…そうだな。さっきのヤツとは違うから、いきなり飛び出さないで、悟郎さん。」

「ニャッ(わかった)!」

「…………砂に隠れてるとしたら、オピンかもしれない。毒を持ってるから注意しろ。…あの砂の膨らみ辺りだな。」


 オピン?名前は可愛い感じだけど毒持ちか…。


「悟郎さん、先に俺がやってみてもいい?」

「ニャ(うん)!」


 じゃあ、砂に隠れてる様なんで、操土の術で下から剣山を長めに生やそう。

 砂の剣山を魔法で生やすと、針に刺さってオピン?が出て来た。………何だよサソリじゃねぇか!!

 よし、まだ生きてるな…調べとこ。



オピン(毒サソリ)

レベル 55

属性 土

状態 瀕死


体力 273(-268)

耐久 281

力  281

魔力 210

知力 104

瞬発力 139

運 72


特技 串刺し 鋏切り 毒砂飛ばし


弱点 腹




「悟郎さん、コイツは食えないし、砂と一緒に毒を飛ばして来るみたい。遠距離攻撃で確実に仕留めよう。」

「ニャッ(わかった)!」

「キュキュキュ!!」

「チビもやるか?なら、俺が針で上げたオピンにとどめを刺してくれ。」

「キュ!!」


 よく見ると、前方には微妙な砂の盛り上がりが多数ある。この先は奴らの巣窟か?


「シロー、どうやらオピンの巣に当たったみたいだ。だが、オピンはオオトゲアゴンの好物だから、ヤツ等を狩るにも絶好の場所になる。」

「………先にオピンを片付けよう。死骸を放置しておけば、それでオオトゲアゴンが釣れる。」

「了解です!悟郎さん、チビ行くよ!」

「ニャッ(わかった)!」

「キュ!」


 悟郎さんは『砂飛ばし』でオピンを露出させると、『礫乱射』でしっかりトドメを刺して、次々と討伐をしていた。安定感がありますな!


 俺も負けんぞ!剣山でサソリを持ち上げ、後をチビにやらせればチビのレベル上げになんだろ。


 餅つきよろしくチビと討伐をしていると、ふと、いつもの風薙が一気に3本出てオピンの節を切り裂いた。


「………チビさんや。風薙が強くなってんだろ?あとでステータス確認するからね?」

「キュゥ〜〜〜〜〜〜!!!」


 随分と自慢げに……。まあ、既存の使い慣れた魔法が強化された方がチビには向いてるな。


 ロレンドさん達も、弓でロレンドさんが射て、トラキオさんが追撃のトドメを刺していた。


 いや……ロレンドさんの弓矢、オピンを貫通してんじゃねぇか…。俺も引かせて貰ったけど、あの弓、凄え剛弓なんだよな。それを軽々引いては放ってるから、フェルドもキラッキラの眼差しで見てたんだ。


 トラキオさんも喋る時の不思議な間はどこ行った?!ってくらい素早く剣を振るっては、オピンを両断してるし、しかも時折火の魔法も使うんだよ。


 俺の火魔法って『点火』のチャッ◯マンだから、まだガスバーナー程度の火力までしか育ってない。

 せめて、世紀末でも使える火炎放射器にはしたいよな。


「ニャーニャー(来て来て!)」

「はいはーい。あ、悟郎さん、オオトゲアゴンまた倒したんだ。じゃあ仕舞っておくな!食うのはハウスに帰ってのお楽しみに!」

「ニャッニャゥ(やったー)!」


 悟郎さんは元々砂漠が根城の魔物だから、砂漠の魔物の肉の方が好みなのか?ヘビも好きだしな〜。


「シロー!こっちのオオトゲアゴンも収納してくれるか?」

「はい!」


 その後も順調に、オピンに釣られたオオトゲアゴンを討伐し、納品分プラスアルファをしっかり確保して、街への帰路についた。


 もちろん、途中でハウスを出し、みんなで風呂を使ってサッパリしたあと、昼めし&昼寝まで決め込んでから、ゆっくり街へ帰って行った。


 その道すがら、ゴミムシが溜まっている場所がいくつか目に付いた。


 悟郎さんにはゴミムシの討伐を我慢してもらい、そのままにしておく。


 2人も気付いた様だったが、何も言わずにそのまま通り過ぎた。


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