第256話 依頼品の採取完了 不穏な人影

「ゴローが魔物を一掃してくれたから、次の採取場所まであっという間だったな。」

「……………肉が絡んだゴローの右に出る者はいない。」


 そうっすね……。だけど俺は、カエル肉は鶏肉に似てるって話だから、それならホロトリで良くね?!って思う訳よ。


 それをあんな大量に獲ってさ………。


 さあ、あのカエルの姿を上書きするためにも、次のキノコを採取しよう!


「……………これはコウタケだ。香りがとても良い。ロレンドの好物と違った香りだ。俺は食感も合わせるとコウタケの方が好きだな。」

「これも美味いよな!塩して焼いただけでも美味いぞ!」

「……床一面に生えてる……………。」


 採取され無さ過ぎて、こんなに密集してんのか?!

 上部のヒラヒラした感じと香りからして、舞茸で間違い……ない。


 石づきどこだよ?!全然見えねえ!


 俺が戸惑っていたら、2人は至って普通にナイフでサクサクと刈り取りして行く。


 ああ!!草刈り!草刈りの要領で刈りゃいいんっすね!芝だろうと草だろうと舞茸だろうと、刈ってしまえば一緒!いやーー勉強になるね!


 すると、入口付近を刈って手を止めた2人が腰を上げた。


「これだけあれば良いか?」

「……………そうだな。1枚でも十分過ぎる大きさだしな。」


 え……?もう採らないの?

 あとはシローの好きにしろ?


 なら、操風で全刈り&収納!!

 潜んでた魔物もついでに倒したな。よし!


「……………歩きやすいな。」

「そうだ……な。いつもは、コウタケの間を掻き分けて進んでたからな。」

「ここで採れたタケは、バターと炒めて食います。炒めると嵩が減るんで、たくさんあっても支障なし!」

「……………そうだな。バターか……美味そうだ。」

「シローの収納だからこそ、出来る事だな!」


 俺の安心バロメータは、食料品の増減に左右されるんでね。


 減った時の焦燥感や最後の1つを食った時の不安を全く感じない今の状況は大変望ましいけど、過ぎた分については、機会があればチョイチョイ還元している。もちろん、俺が食い物を分けても良いと感じる人に限定されるが。


「ニャォゥニゥ(なんかいた)!」

「そうだね〜何だろうね〜?もう虫はそろそろ退場して欲しいな〜俺は。」

「ニャゥフ(獲った)!!」

「………悟郎さん早い!しかも丸ごとヤモリじゃん!それにデケェわ!悟郎さん?俺さっき言ったよね?ここではカエル以外は食える魔物いねぇって!」

「ニャゥニャア(わかんないよ)?」

「いやこれどう見ても、漢方薬とかで吊るされてるヤツだよ!悟郎さんには、美味しいご飯を食べて貰たいの!丸ごとヤモリは食べ物じゃありません!!あ!待って悟郎さん!」


 だのに…何故〜〜〜〜〜〜〜〜ちゃんと言ったのにそんなに狩るのさ!


 全部丸ごとヤモリじゃないか!!!


「………シャー(こら)!」

「ヤモリに怒ったってしょうが無いだろ?元々食うもんじゃないの!!分かったら戻ってよ、悟郎さん!ほら、燻製食えば良いだろ?!」

「ニャ(うん)!」


 このヤモリ……売れるのか?!魔石なら確実に売れるのに!


「シロー、コイツはランディエーヌさんに渡せば、良い値で買ってくれるぞ?」

「………そうだな。きっと大喜びだ。」

「また薬師!!!」


 そう言われたら、持って帰らない訳にはいかないじゃまいか…。


「チビ、俺に協力してくれ!俺達が倒せば確実に魔石が出る。そうしたら、ログレスに戻って魔石を売っ払った金でフルーツ食おうぜ!!」

「キュキュキュキュキュッ!!」

「よし!疾如風!」

「キュッ!!」


 ヤモリだって、カエルだって、虫達だって!皆々、魔石に変われば友達なんだ!ほら、怖くない!!キモく無い!


「………この先の魔物も虫だが……。」

「いや、もうすぐ依頼品の採取場所だ。シローが進みたいって言うなら行くが、そうで無いなら戻ろう。」

「………そうだな。だいぶ…いやかなり採取したからな。さすがにシローも満足だろう。」


 はい!討伐完了!スッキリしたぜ!

 チビ!サンキューな!残り少いけど、釈迦頭食ってくれ…俺の気持さ!


 あ……れ?おかしいな……釈迦頭を出したせいか?


 眼の前にツートンカラーの巨大螺髪が見える……。


「シロー、あれが依頼品のママルマダケだ。」

「………主として使われる事は少ないが、色々な料理に合う美味いタケだぞ。」

「デカまる!しかも、ブラウンとホワイトがあんじゃんか!」


 螺髪じゃなくて、マッシュルーム……悟郎さんのルームなら掘って作れそう…。しねぇけど。

 あんな小さいキノコが異世界に掛かれば、マンホールの蓋にもなれそうなサイズにまで育つんだな…。


「店からは2種3個の納品を頼まれてる。」

「…………コイツばかりは、採取の際は切るよりも、少し捻りながら手前に倒して取る方がいいぞ。」

「…少し捻りながら……手前に倒すっ!おし!」


 これで依頼品の採取も出来たし帰るだけたな…。


 エノキが無かったが…………………。


 なんであんなポピュラーなキノコがねぇんだよ?!全く持って不思議だ。辺境に生えてたキノコとも種類が違ったし、ダンジョンルール的なもんなのか?!


「シローこの先もまだあるが、もう少し行っておくか?」

「……いえ、これで戻りましょう。それに出る魔物も今迄と同じ傾向なら、もう間に合ってます。はい。」

「…………なら、肉の切り分けも済んでるし、街へ戻るか。」


 マッシュルームの採取も完了し、キノコ&虫ダンジョンを後にする事に。キノコに未練はあるが、それ以上に虫には辟易した、マジで。


 あれからずっと寝てるピヨ達もハウスに入れたいしな。


 そのまま、来た道を戻って行くと、索敵に気配が掛かった。魔物の討ち漏らしはしてねぇぞ?


「チビ、服の中に入れ。ピヨ達は……イアが起きてたか。そのまま袋で静かに待機だ。上から布を掛けるが外には出るな。分かったか?」

「キュ!」

「ピヨ!」

「?シローどうした?」

「この先、複数の人がいます。念の為チビとピヨ達には出ない様に伝えました。」

「…………分かった。」


 不人気ダンジョンに誰かね?俺もカラーチェンジしておこう。


 元エリンギの間に到着すると、蹲った冒険者風のヤツ等が4人壁際に集まっていた。


「…!あ!お願いします!助けて下さい!!」

「どうした?何があったんだ?」


 ロレンドさんが代表して話を聞いている間に、調べておこう。怪しさが大爆発しそうだからな。



名前 カリスィー(偽名 テオ)

性別 男

種族 人族

レベル 39

属性 土

状態 緊張


体力 133

耐久 121

力  109

魔力 95

知力 93

瞬発力 124

運 32


特技 身体強化


魔法 土魔法



 名前の括弧書きは偽名だとよ。そんで、助けてと言いつつ緊張をしてると……。


 どれどれ………他の奴等も一緒か……。…で、一人腕を負傷してるヤツは(自傷)だぞと。どうせ利き手じゃねぇんだろ?男2人、女2人か…何の仕事を請け負ったんだろうな?


 これは罠だろうなぁ。外にもスタンバってるのかね?聞きたいな〜。とりあえずはロレンドさんに任すけどよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る