第255話 キノコダンジョン 〜 色々大量

「何て、俺のヘイトを溜めるダンジョンなんだ!もっと沢山のキノコが出なけりゃ割に合わない!」


 ナメクジ、ムカデに続けて出てきたのは、ダンゴムシと便所コオロギだった。


 しかも、ダンゴムシが出て来てから、ピヨ達が戦力外になった…。ヤツ等、サッカーボール大のダンゴムシで遊び始めてしまった!それに、どんどんパスワークが良くなって来てる………。


 ダンゴムシもしばらくは耐えるが、ピヨ達に遊ばれ、そのうち力尽きて魔石に変わってしまうと、また新たなダンゴムシで遊ぶと言う流れが出来ていた。


「ピヨ達は本当に凄いな!見応えあるぞ?あの3羽の連携!」

「………そうだな。こうも器用にマルムシを使って遊ぶとは。」

「確かに姉弟だけあって、息がピッタリですけど…。チビ、これはチャンスだ!奴等が遊び呆けている今が、お前の独壇場!あの跳ねるクソ虫は、足を『風薙』で飛ばして動きを封じ、とどめを刺す!これで行こう!」

「キュッ!!!」


 代わりにチビとロレンドさん、トラキオさんと共に虫どもを殲滅して行く。

 悟郎さんは、相変わらずのカエル待ち。


 事前に聞いてはいたが、確かに魔物が多い。

 普段と違うと早く気付く2人が、普通にしてるって事は、この湧き方がこのダンジョンの常なんだろう。


 俺だってキノコがなけりゃ絶対に来ないし、入っても速攻出ていく!


「相変わらず湧きが良いな〜。」

「………魔石集めがしたいなら、ここは恰好の場所だ。あとは、新人の訓練に使うヤツがまだいるって聞いた。」

「え?新人の時にこんな虫ダンジョンに連れて来られたら、冒険者辞めますよ?……俺なら。」

「シローに限らず、実際そうみたいだぞ?だから、そうそうこのダンジョンが選ばれる事は無いんだが……中には意地の悪いヤツもいるからさ。」

「………それを愉しむクズも居る。あれに遭遇した時は見てられなかった。」


 ああ、そう言うのか………本当どこにでもいるからな。

 虫よりクソで質が悪い人は。


「………ん?どうやら次の採取場所に着けたようだ。前に見えるぞ。」

「前に……………アンブレラ?!」


 茶色い雨傘が林立してる!


「今度はイマウダケだな!俺、あれの煮戻したヤツが好物なんだ!」

「……………携帯食以外は、滅多に食料品を買わないお前が、あれだけは市場で買うしな。」


 なるほど……ロレンドさんの好物なんだ。

 うん、シイタケだなこのアンブレラは。


 干し椎茸は香りが俺も好きだし、やっと、念願の焼いて醤油を垂らして食べる系キノコをゲットだ!しかも、今ならバターまでありやがる!


 外に出たら、街に帰る前に絶対に食うぞ!!


 石づきの上でカットして、採取して行く。見事な重量感!傘の部分だけでなく、軸も食いでが有りそうだ!


「よし!完了!チビお疲れさま。まだ大丈夫か?ヘタる前に休めよ?」

「キュッ!!」


 ピヨ達に負けたくなくて頑張ってんな。

 リンゴとマカダミアをあげよう。悟郎さんも?じゃあ、トリュイション野ブタのベーコン食ってて。


「イア、オルガ、マシュー!そこまで!戻って休憩しろよ!」

「「「ピヨッ!!!」」」


 ピヨ達にも青菜とトリュイション野ブタのベーコンをそれぞれに出す。………凄い勢いで食うな。


 悟郎さん、競わないで!たくさんあるから大丈夫、無くならないよ!!


 俺等はスパイス入りアイスティーと一口サンドで小休憩。

 トリュイション野ブタのお陰で、BLTがやっと完成したからな!ベーコンを厚めに切って挟んであり、一口でもボリューミーなサンドだ!


トリュイション野ブタの燻製美味いな!いい感じに炙ってあって、いくらでも食えそうだ!」

「……………本当に美味い!これは、たくさんトリュイション野ブタを狩ったゴローに感謝だな。」


 ええ、本当に。ログレスからここに向かうまでの草原は、悟郎さんの勢い良い狩りのペースにトリュイション野ブタが、絶滅危惧種に指定されないか気が気じゃなかった。


 それを話したら『トリュイション野ブタは、出産する時に10匹以上産むから心配無用だ。』と教えてもらい、時間の許す限り悟郎さんに討伐してもらった。


 きっと、帰り道でも狩るんだろうな……。


 小休憩を挟んで、またダンジョンを進む。食堂からの採取依頼は“マッシュルーム”だ。

 それの採取場所は、まだまだ先だと言ってたから、ここでグスってもいられない。


 そして、遊び疲れて腹も膨れたピヨ達は、ディアの入れ物に入ってお昼寝だ。


 チビはまだ大丈夫だけど、ダンゴムシは倒すのに硬くて骨が折れそうだから、ナメクジとムカデ、便所コオロギを任せ、チビの手に余った虫とダンゴムシは俺が討伐。


 チビなら間違いなく魔石が出るし、これ以上の怪しい小瓶はいらない。なんせ、ムカデと便所コオロギの小瓶は、“麻痺毒”入りだったからな!


「確か、次のは凄い太いタケだったよな。」

「……………そうだ。まず、収納持ち以外は持って帰れない太さだ。だから、俺達も食った事が無くて、美味いか知らないんだ。」

「そうなんですか…。でも食えるなら何でも楽しみです!」


 そして、しばらく行くと今度は、ワラジムシが頻出し、続いてハサミムシが……。


 本当、虫が多過ぎて嫌になるダンジョンだ!

 ロレンドさん達と二手に別れて無心で倒す。


 チビもドンドン討伐数を増やしているし、この調子なら間違い無くレベルも上がってるだろう。


「魔物の出も落着いて来たな。進もうか!」

「不人気になるはずですよ!払う労力が間違いなく多いです!」

「……………シローの場合は、心的労力だしな。」


 本当、その通り!


 チビには切れない様に“気炎万丈”を掛けて、底上げしているから、残りの討伐はお任せしよう。


 すると、矢鱈と天井の高いホールみたいな場所へと到着した。ボス的なのが出てもおかしく無い雰囲気。

 でも、中には枯れ木が立ってるだけだった。


「相変わらず壮観だな……。」

「……………ああ。これがタケだとは思え無いよな。ダンジョンはこれだから面白い。」

「ええ?!タケ?!」

「これが、トムテダケだ。持って帰る気が失せるって意味が分かるだろ?」

「……はい。電柱かよ…………デカっ!」


 エリンギよ……育ち過ぎだってば。


 とりあえず、一本切って水分だけを抜いてみる。それでも半分のサイズか。


 エリンギは食感を楽しめるソテーにはもって来いだし、確かサザンオールス◯ターズの桑田さんが一時期ハマって食ってたって………。そんで、ポケットからエリンギ出したのを放送されて、爆売れしたって逸話を聞いたな…。


「ロレンドさん、トラキオさん、こいつの採取は任せて貰えますか?」

「いいが……一本あれば十分じゃないか?」

「……………好きにしていい。シローなら持って帰って有用しそうだしな。」


 久しぶりの一斉伐採からの収納!おお!切った跡から水分がたくさん滲んてる!

 ジューシーな証拠だな!


「……………あっという間だな。」

「……そうだな。柔らかいけど太いから、本来は切る手間も掛かるんだが…。シローだしな。」

「……………モンバレイノの採取もこんな感じだった。」

「ああ、だからトラキオはあまり驚いて無いのか。」


 慣れて下さ〜い!俺の採取はだいたいこんなだし!

 

 そして、元エリンギの森を抜け、先へ進むとまた跳ねた虫が………虫……じゃねぇ!カエルだ!


「悟郎さんお待たせ!カエル出たよ!」

「ニャッニャゥ(やったー)!!」

「チビ、討伐してもいいけど肉を望んで討伐しろ。それがお前の為だ。分かったか?」

「キ、キュッ!!」


 俺は手を出しません!


 悟郎さんは、一匹討伐すると匂いを嗅ぎそのまま食った。そして、お気に召した様子で、ドンドン討伐して行く。


 チビに注意はしたものの、介入する隙が無いね!


「ここはゴローに任せるか。他の魔物が出たら討伐する。」

「……………フェログの肉はアッサリして、何にしても美味いぞ?それに解体する手間が無ければ、シローも大丈夫じゃないか?」

「……そうですね。あとはせめて、この丸ごとの形状を残さなければ、より良かったんですが。」

「「ああ〜…。」」


 悟郎さん無双の後を、カエルの形を残した肉を拾いつつ着いていく。

 

 砂漠でもあったな………こんな情景が。いや、ログレスの草原でもか。


 きっと、俺が果物採取してる時、悟郎さんはこんな気持だったんだろう。俺も極力、気を付けよう。


「ニャゥフ(獲った)!!!」

「そうだねー。もう一匹もカエルいないねー。全部ちゃんと仕舞ったから、安心してな!」


 カエルを殲滅して満足気な悟郎さんに戻ってもらい、魔物のいなくなった洞窟を行く。


 マッシュルームの他には何があるんだろう…。

 松茸とかトリュフもあったら採りたいけど、あまり深くまでは潜りたいダンジョンじゃあないな。


 庶民以下の食生活だったんだ。シイタケとエリンギがあればもう御の字。


 あ、でもエノキが………俺の友とまだ再会してねぇじゃん!


 何処かにいるのか?


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