第254話 湿気たダンジョン

「やっぱり、独特の湿気がありますね。」

「まあ、採れる物が物だしな。」

「………涼しい。」


 ランティエンスのダンジョンに入った感想は『湿気てる』だ。


 悟郎さん用に除湿しなきゃ。


「悟郎さん、このダンジョンには食える魔物は一種類だけらしい。それはカエルって言う皮に滑りのあるピョンピョン跳ねる両生類だ。それ以外は食えない魔物ばかりだから、出来るだけ魔石を望んで欲しい。あとは、ギリギリ俺の許容範囲の脚付きの虫が出る。虫のアレとかコレとかは一切要りませんので、ご協力の程、宜しくお願いします!」

「ニャッ(わかった)!」


「チビ、今回果物が無いダンジョンだから、討伐に専念してくれ。お前もレベル上げを頑張んないと、ピヨ達に抜かされるぞ?それでも良いなら、俺の頭の上で寝てろ。」

「キュッ!!キュッキューー!!!」


「さて、イア、オルガ、マシュー。ご飯は後で、ちゃんとあげるからここの虫は食わない様に!ゲジゲジだったり、毒を持ってる虫が多いから、お前達も討伐に集中だ。今の所は他の冒険者はいないけど、俺が戻れと声を掛けたら、この入れ物に帰って来るんだ。分ったか?」

「「「ピッピヨ!!」」」


 おし!全員への申し送り完了!

 さあ、進もうか!キノコダンジョン!


「何か、ピヨ達がまた一回り成長してないか?」

「そうですね。俺の畑の野菜達が減った分の成長はしっかり遂げている様です。ログレスで出たアレの肉もたらふく食ってますし。」

「………念の為に言っておくが、ゴローの分の肉は残せよ?一等のご褒美なんだから。」

「わ、分かってますよ!大丈夫でふ…す!!」

「……ニッャ(なに)?!」

「悟郎さん!大丈夫だから、ちゃんと肉残してあるよ!だから頭の上で爪を出さないで!!」


 くっ!ウッカリ、ピヨ達に食われちゃって無くなりました!戦法は使えんか!


 他に悟郎さんが夢中になる様な、そんな肉は無いものか?!


「シロー、このダンジョンは罠は無いんだが敵の数がとても多い。それが不人気に拍車を掛けているんだ。あと、麻痺毒や毛を飛ばす虫も出る。」

「………噛み付いて来る魔物は、毒持ちが多いな。」

「……聞いてると、嫌いなヤツが増えそう…。」


 キノコの為だ、頑張ろう!あとは俺も含めたレベル上げだな!ゴミムシじゃないけど、たくさん魔物が出るならチリツモ狙いで、ジャンジャン稼ぐぜ!


 ダンジョンに入ると暫くして、直ぐにナメクジっぽいのが湧いて来た。ピヨ達のフォローをしながら討伐していくと、『ピリピリ(弱)』を3羽で放って、次々とナメクジを蒸発させていく。

 

 ………なあ、やっぱりそのネーミング間違ってね?

 連発したからって普通の『ピリピリ(弱)』で蒸発するかよ?!

 それと、誰かナメクジ食えねぇかなって思ったろ?!思い出したくもない怪しい小瓶が複数転がってんじゃねぇか?!


「……さっきも言った様に、ここの虫は食えません。誰かな?チャレンジしようとしたのは??」

「「「ピッ!!!」」」


 クゥっ!!全員かよ?!


 ウチの子になっただけあって、君等も食いしん坊なのか?!だがな、タンパク質は虫以外から摂取しなさい!君等が肉もイケる口だって知ってんだかんな!!


「ピヨ達は頼もしいな!」

「………シローは嫌うが、スロネルの粘液は使い道が多い。」

「ま、まさか、またポーション系に使ってるんですか?!」

「食用可能だからな。用途はポーションに限らないぞ。」


 くそ!虫どもめ!!俺の生活圏に侵入してくんじゃねぇ!滅せよ!!


 そして、ナメクジに続いてムカデ……キモっ!

 何で1m以上もあるんだよ?!あああ!!またピヨ達に先を越された!チビ!お前ももっと頑張れよ!!


 悟郎さんは、カエル待ちですか?そうですか…。

 ホロトリの方が美味しいと思うよ?それに、カエルは小さくて食う所が少いかもよ?え?それでも食うの?……そう。


「あ!!キノコ発見!!」

「………メジタケだな。香りはそこそこだが、味は良いキノコだ。」

「市場でも乾燥物ならよく見かけるよな!」


 アスパラサイズのシメジだ!炒めたり、揚げたりしても良さそうだけど、敢えて乾燥させるのも手だな。


「みんな、俺達はちょっと採取してるから討伐頼むな!悟郎さんがリーダーだから、悟郎さんの指示を守る様に!」

「ニャッ(わかった)!!」

「キュ!」「「「ピッ!」」」


 一面のシメジ畑のから、3人でどんどん採取し収納していく。は〜〜やっぱり採取はええなぁ〜。


「トラキオさん、親父さんの所でもメジタケ使いますよね?そのつもりで採取して大丈夫ですから!」

「………もうだいぶ預かって貰ってるぞ?乾燥物を買う予定だったから、生のメジタケを渡せれば、親父も喜ぶが…。」

「それなら、渡したあとでみんなで食いに行こう!それなら親父さんも恐縮する事は無いだろ?」

「………俺も助かる。是非、食いに来てくれ!」


 それなら、お土産にたんと採って行くぞ!不人気ダンジョンなら、誰にも遠慮しないで構わないしな!


「悟郎さん、ありがとう!採取出来たよ!」

「ニャンニャッ(すずしい)!」

「湿気あるもんな〜。チビも大丈夫……大丈夫か?」

「………キュゥ……。」


 元気に飛び回ってるピヨ達に比べ、チビはどうした?……え?ピヨ達に負けたの??ああ〜〜〜……。


「チビ、3対1の相手に討伐で勝つには、悟郎さんの様に日々の精進が必要だ。俺の頭の上で昼寝ぶっこいてたら、そりゃ負けるよ。」

「キュゥゥゥゥゥーーー!!!」

「そんなに悔しいなら、一匹でも多く魔物を倒せ!俺の頭の上からでも狙えるだろ?それに、今はまだピヨ達は3匹一緒に討伐してるが、もっとレベルが上がればピヨ達は各個で動き出すぞ?そうなったら、負ける率はもっと上がって来るからな?因みに採取が無ければ、俺達も討伐に参加するぞ?」

「キュッキュゥゥゥゥゥーーー!!!」


 おいこら!俺の頭の上でダンダンしないの!!

 最近、直に拗ねるねー。もう放っておこう。


「イア、オルガ、マシュー!討伐お疲れ!まだ平気か?」

「「「ピッピヨ!」」」

「大丈夫だな。あとね、ゲジゲジは食えないって言っただろ?!また小瓶が大量に出てるじゃねぇか!!」

「「「ピ〜〜??」」」

「おい、惚けるな!!3羽で同じく首を傾げても、可愛いだけなんだからな!」

「「「ピョ?」」」


 いったいどう言う事だ?!まだ、羽化してからそんなに経過してないのに、既にあざとい雰囲気が……。


「ねえ、悟郎さん。ピヨ達に何か教えた?」

「ニャ(うん)!」

「何を教えてくれたんですかねぇ?!ピヨ達はまだ子供なんだよ?!悟郎さんの手練手管を覚えさせるには時期尚早だ!分かった?!」

「ニャウニャ(平気)!」


 平気じゃねぇ!!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る