第252話 香辛料の購入と忠告

 このデジャヴPart2は、まさかの商業ギルド長ビンタ美魔女の血縁だったとは!!


「妹?!」

「そうよ。だからあなたの事を知っていたの。その姉から珍しく依頼が来たと思ったら、ある冒険者の報酬用に香辛料を送って欲しいと言われてね。それと、辺境では手に入れ難い物もお願いとあったから、辺境への輸送中にキズンリーゾで、モウニュウコとチーズを足して送ったのよ。だから、今回その感想が聞けて嬉しかったわ。」


 俺は恥ずかしんですけど…?そんな繋がりまで使って、そろえて貰ったのか…。

 経緯の話を聞いていたら、トラキオさんが戻って来て、ポタンリーナ会長がいるのに気づき驚いていた。


「あら、トラキオさん、いつも買付ありがとうございます。商品は大丈夫でしたか?」

「………はい、確かに。こちらこそ、いつも良い品をありがとうございます。親父からも礼を伝えてくれと言付かってました。」

「いいのよ。滅多に行けないけど、辺境に行ったらまた立ち寄らせてもらうわ。お父様へ、そうお伝えしてくれる?」

「………分かりました。」


 トラキオさんは挨拶を済ますと、倉庫番のおっちゃんに木札を渡し、商品の受け取りを完了させた。


 じゃあ、確かに収納致しま~す!

 それを見ていた倉庫番のおっちゃんが、目を剥いて驚いてたけど、ノーコメですヨロシク。


「ふふ、凄いわね。所で、シロー君も香辛料買って行かないの?欲しい物を揃えて上げるわよ?」

「!!!」


 マジで?!まだ滞在数もあるから、今日は様子見だけにしようと思ってたけど、今、買い物してもいいかな?2人を見ると頷いてくれたんで、お願いします!


「お願いします!!」

「分かったわ。何が欲しいか決めているのかしら?」

「報酬で貰った香辛料は一揃え欲しいです。後は、何があるか分らないので、見させて貰っても良いですか?それと、売値を教えてください!」


 ドキドキのハウマッチ!これ大事!


「いいわよ。では順番に出すわね。まずは胡椒よ。」

「……いい香り!」

「そうね。今年の胡椒は出来がとても良かったの。トラキオさんの方にも、今年の胡椒を入れてありますからね。」

「………ありがとうございます!」


 何かと料理に使う頻度が1番高いから、たくさん欲しいな。保存食の干し肉や燻製にも使ってるせいで、残りもあと1/4に減ったんだよ。


「この一袋(約3kg)で、12000ゼルよ。」

「買います!」

「………シロー、ちょっと多いんじゃないか?」

「大丈夫です!1番使う香辛料ですから!悟郎さんが普段食べている燻製にも軽く使っていると、アッという間に消えていきます…。」

「色々使ってくれてるのね。ありがとう。燻製以外はどんなお料理に使うの?」

「そうですね……これなんかハッキリ分かる料理だと思います。」


 ジャーマンポ〜テ〜ト〜!そしてキノコのソテー!

 香辛料使ってますアピールしておこう。だからちょっとサービスしてくれ!

 何だか急に試食会になっちゃったけど、ま、いいよな。


「……いいわね。お酒に合いそう。こっちのキノコも胡椒の香りがバターの風味を引き締めているわ。」

「おお!美味いぞ、ボウズ!」

「これは前に出して貰ったな。やっぱり美味い!」

「………そうか、確かにこう使っていたら消費も多くなるな。」


 ですよ!胡椒の頻度は馬鹿にならないんじゃ!


「ごちそうさま。美味しかったわ。これ、参考にさせて貰っても良いかしら?」

「どうぞ?商業ギルド長ビンタ美魔女にもお伝えしてますし。」

「……ああ、なるほどね。最近、辺境からの発注が多いと思ったら、あなたが姉さんにこうして教えてたからなのね?」

「まあ、元から香辛料を頂いた時に、既にその話はしてたんで。辺境での需要が増えれば、香辛料の供給を商業ギルドがやっても損はしないでしょう?そりゃ、ここで買うより高くなるでしょうけど。」


 でも、ここに来るまでのあの時間を掛けて、遠路遥々買いに来るよりかは絶対に安い。

 俺だって市場に並んでいたら、高けぇなと思っても胡椒は買っていたと思う。


「ふふ…面白いわ。じゃあ次はこれね。ターメリックよ。」

「これも頂きたいんですが、胡椒の半分でお願いします。」


 そうして他に、クミン、コリアンダー、シナモン、グローブ、山椒、レッドペッパー、ローリエを買う事ができた!

 これだけ買っても宿代より安いっ!


「たくさんのお買い上げ、ありがとうございます。」

「こちらこそ、助かりました!ありがとうございます!」

「良かったら、皆さんにお茶をお出ししたいの。お付き合い頂けるかしら?」

「ありがとうございます、お言葉に甘えさせて頂きます。」


 ロレンドさんが答え、俺達は別室へ通された。

 なんか歓待が過ぎて、ちと怖かったりすんだよな。


「……お待たせしたわね。どうぞ。」

「「「頂きます!」」」


 あ、スパイスティーだ!ピリ辛でこれも美味いな!


「そう言えばシローもこんなお茶を自分流に淹れるんだって、言ってたな。」

「………選ぶ香辛料によって変わりそうだ。」

「あら、良かったら試しに淹れてみて?必要な香辛料は用意するわよ?」

「あ〜〜……はい、では………」


 シナモンとカルダモンとグローブをもらい、癖になりつつある清浄を使ってから、水に適当に折ったシナモンとグローブはそのまま、カルダモンは種を出して荒く粉砕し皮も投入。


 火に掛けて色と香りが出て来たら、火を止めてドエル店主さんさんに貰った茶葉を投入。


 しばしおいて、リーストモウのミルクを入れ沸騰しないように温める。

 

 茶こしは無いので、揚げ物で使ってる“かす揚げ”で濾してカップに注ぐ。清浄してあるから油臭くはないだろう……たぶん!


「はい、どうぞ。お好みで、甘くしても美味しいと思います。」

「「「頂きます。」」」


 おお〜!!これがチャイ!!飲み物は高校に入ってから、極限チャレンジで薄めた粉末のスポドリしか買って飲んだ事が無かったから、ミルクティーも未経験なのにチャイ飲んじゃったよ!


 図書館にあった紅茶の世界とか言う本に載ってたのを見て、スパイス香るお茶って書いてあり、そりゃ何だよってびっくりしたんだよな…。


 スパイスって言や俺はカレー系の食いもんしか頭に無かったから。


 でもカレーと同じインド式ミルクティーと知って、是非飲んでみたかったんだ。

 ……美味いな。アイスチャイもイケるだろうから、今度外に出た時に試してみよ!マジ氷雪バンザイ!!


「シロー君、とても美味しいわ!お茶にミルクを入れると、また違う風味でとてもいい!これ、溶いたモウニュウコでも大丈夫かしら?」

「粉っぽさが無くなるまでしっかり溶けば大丈夫だと思いますよ?良かったら、色々な香辛料の組み合わせを試してみて下さい。」

「ええ!やってみるわ!」


 何歳違いの妹さんかは知らないけど、ポタンリーナさんは商業ギルド長ビンタ美魔女よりか、まだ可愛らしさの様な感じが残ってる。


 それが無くなって研ぎ澄まされると、なるんだな…。ブルッ!あ、れ…少し寒けが……。

 

「シロー特製のお茶も美味いぞ!」

「………ああ。俺も試したくなった!」


 好みが出ると思ったけど、2人も平気そうだ。

 そして、もう1つ気になる事を確認したい。


「あの…ここランティエンスでは、お茶の栽培もされてるんですか?」

「ええしてるわ。シロー君もお茶の購入をしたいなら、ウチで買ってね?私自身が好きだから、種類も揃えてるわよ。」


 やっぱり!さっきのお茶も茶葉の香りが、貰ったお茶よりしっかりしてたんだよ!


「………ここで買えって事だったのかもな。また時間を見て買いに来よう。今日はそろそろゴローが待てない感じだそ?」

「……ニャッフゥ(お腹すいた)!!!」

「ああ!!大変本当だ!!悟郎さん待たせてごめん!ご飯食べに行こうな!」

「あら、可愛い。私が引き止めたからね。待たせてごめんなさい。お詫びに美味しいお店を紹介するわ。」


 買い物に夢中になってたよ!悟郎さんのご機嫌が既に下がってる!!


「……それとシロー君。セダンガ商会が潰れた件の影響はここにも出ているわ。アイツ等が捕まって喜んだ者もいれば、その逆もいる。このランティエンスにもアイツ等と結託して利益を得ていたティエーエム商会と言う店があるの。そこには行かない様にして。今回、かなり芋づる式に捕まってはいるけれど、全てではない。ティエーエム商会は小狡く尻尾を切って逃げたわ。」

「……そうですか。ありがとうございます。十分気をつけます。」

「あなたが気を付けなきゃいけないなんて、不条理な話だと分かっているけど、自分の都合や利益を優先して不法行為に慣れた者は、そうは考えない。飽くまで自分本位で身勝手。その上、法や常識は都合良く解釈を捩じ曲げて、己を正当化する事が本当に得意なのよね。……だから本当に気を付けて。」

「ええ…セダンガ達もそうでした。最後まで自分達は悪くないと言ってましたし。歩み寄りも相互理解も出来ないなら、俺がソイツ等に思う事は、纏めてくたばれクソ野郎共ってくらいですね。もし、やられたらやり返します。捕まらない範囲で。ただ、避けれるなら極力近寄りません。それと………こんなのどうです?誤魔化せそうなら、使おうと思ってたんですよ。」


 久しぶりの虚偽の術で、カラーチェンジ。

 髪はこの街で多かった金髪、目は緑にした。


「まあ!!凄いわ!!その色なら街人にも紛れるし、似合うわよ?」

「…………シローが金髪に……。」

「凄いな!黒髪に慣れた俺達には、違和感が半端ないが、何も知らないヤツには効果があると思うぞ!」

「なら、ランティエンスの街中ではコレで行きます。」


 そこで、他の人にも掛けられる事をウッカリ話してしまい、そこからカラーチェンジ大会になった…。


 だが、余りに待たせ過ぎた結果、とうとう悟郎さんの逆鱗に触れてしまい、大変な事になった……それはもう大変な事に……。


 こっちの方が余程怖いじゃねぇかよ!!

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