第250話 ランティエンスに到着

「………シロー……何だか…。いや、気のせいか?」

「??何か付いてますか?」

「ああ、凄ごい寝癖が付いてるぞ?」

「…………………大丈夫です。俺には見えません。あああ!悟郎さん、舐めなくていいってば!!分かったよ!直す!直しま〜す〜!」


 悟郎さんだって寝癖が付いてる時あんだからな?俺の寝癖を気してる場合じゃねえぞ!!


 それに、今日の内にはランティエンスに到着出来る予定だから楽しみで早く行きたいんだ!ギルドもあるって話だから、溜まった物も売れるしよ!


 マントを羽織り悟郎さんに乗って貰ったら、出発すんぞ!


 あ、れ?マントが少し長くなった…様な?

 ……まさか…やだよ?!ホラーは!!


 髪が伸びる人形のマントバージョンとかじゃねぇよな?!これってダンジョン品だし、まさか……いや、調べても機能は同じだ…………大丈夫、きっと気の所為だ。


 止めろよ〜〜!朝っぱらからビビらせんじゃねえ!


 そしてインサニーオを出て、また砂漠をひたすら歩く。

 町を出たら、悟郎さんも自分で歩いて……寧ろ1番前を歩いてる。


 そして、相変わらずゴミムシに容赦ない一撃を食らわせ、ゴミムシの屍ロードを築いて行く。


 それを俺がせっせと魔石拾いで着いて行く。

 なんか、主従が逆転して……ませんか?

 …………だが今更だ士郎、気にすんな。


「この調子だと、凄まじい数のデザートゴミムシの魔石数になりそうだな。」

「…………シロー、魔石拾いは程々で良いと思う。ゴローがここまでやるとは正直思ってなかった。」

「そうですね。そんなに手間では無いんですが、面倒になったら止めます。」


 その後、またクチ臭トカゲが出た!と思ったら、悟郎さんが礫乱射してダメージを与えると、チビと一緒に首チョンパにしてしまい、あっという間に討伐。


 そして、ちゃんと収納する様にと指示が来た…。

 悟郎さん……コイツの肉を気に入っちゃったのか?


「この魔法攻撃を見て、デザートキャットに砂漠で遭遇しても、絶対に近寄らないぞって思ったんだ。だけど実際は、砂掛け魔法で目眩ましをすると、向こうが逃げてくれるんだよな。」

「…………チビもだが、こんなに強いのはゴローだけだと思う……いや、思いたい。」


 2人の懸念もよく分かる。だが、同種の魔物なら悟郎さんがの方が強いに決まってる!


 驕りは良くないけど、悟郎さんはストイックな方だから、胡座をかかずにレベル上げを続けるはずだ。

 

 それが美味い肉の魔物なら、レベル関係なく討伐対象になり、結果レベルが上がるってどっちに転んでも美味しい結果しか見えない。


 しかも、砂漠に入ってからのゴミムシ単独討伐数が、チリツモになってるのは間違い無い。


「ニャーニャー(来て来て)!!」

「どうした?悟郎さん……。」


 お、これはアレのおねだりですな?!

 じゃあ、準備しますか!


「ロレンドさん、トラキオさん、道はこのまま真っ直ぐですか?」

「おお、そうだぞ。ここからは下りも傾斜がキツイから確実に降りよう。」

「………なんか、ゴローがはしゃいでる…か?」


 じゃ~ん!へ〜び〜の〜か〜わ〜!!


 2人に趣旨を伝え、それぞれにヘビ皮を渡す。

 ちゃんと、スピードが増す様に、鱗に沿って使って下さいね?

 先ずは、俺たちで実演しよう!


「じゃあ、俺が先に滑り降ります。大丈夫だったら後に続いて下さい!」

「あ!シロー!」


 さ、悟郎さんも乗って下さい!

 ……え、肩に乗らないの?フードに入ったら……ああ!!悟郎さんが、悟郎さんが立った!!


 フードの底に後ろ足を付き、立ち上がると、俺の額を前足でホールド!


 新たなる、士郎&悟郎withチビのライドスタイルがここに確立した!

 よっしゃーー!!一緒に風になろうぜ!


「行くよ!悟郎さん!チビもしっかり掴まれよ!」

「ニャッニャゥ(やったー)!」

「キュ?」


 この下りは100mくらいか?

 出しちまおうか?新たな記録を!


「では、行きまーーす!!」

「ニャ(うん)!」

「キュ??」


 敵影なし!索敵反応なし!スタバイ…GO!!

 久しぶりの砂漠滑り台に、悟郎さんははしゃぎ、チビは叫んでいた。


 あ、そう言えば、あの時はまだチビが居なかったから、これが初滑り台だったか…。


「ニャオニァッ(もうちょっと)!」

「悟郎さん、この先でまた何度も出来るから、それまでちょっと待ってな?」

「ニャッ(わかった)!」

「キュゥ〜〜!キュキュ!!」

「ゴメンて!チビがあの時まだいなかったの、後で思い出したんだよ。……ビビって漏らして無いなら大丈夫だろ?」

「ギュゥ!」


 それでも腹の虫が治まらないのか、肩に乗ってダンダンし始めた。お〜〜ソコソコ!


 フザケてないで、上の2人に合図を出して来るのを待った。


「………も、物凄く速かった……………。」

「………下りだけだが、あっという間に下れるし、かなり楽だな。」


 ロレンドさんの足が、若干、産まれたての子鹿みたいになったが、見なかった事にしよう。


 陽のある内からこうして動いて分かったが、ここの砂漠は俺が悟郎さんと会ったダンジョンより気温が低い。だから、こうして日中の活動が可能だった。


 もしかしたら、大砂漠の方が環境がより過酷なんじゃないか?それは、ますます行きたくないね。


 加えてちょいちょい見掛けるオアシスには、木陰を作るナツメヤシと低木の木が生えている。

 丁度、そのオアシスに着いた時、ロレンドさんがみんなに声を掛けた。


「そろそろ休憩するか!」

「………そうだな。今日も順調過ぎるぐらいに進んでるしな。」

「悟郎さん、休憩するよ!戻って来て!!」

「ニャッ(わかった)!」


 チビは既に悟郎さんのゴミムシ狩りから抜けて、俺の頭の上で寛いでいる。

 お前にもレベル上げの為に、討伐して欲しかったんだけど。


「これなら、日暮れ前には着くな。」

「………そうだな。早く着ければ宿探しも楽になるだろう。」

「ログレスみたいな定宿は無いんですか?」

「ランティエンスでは、いつもここに泊まれれば良いなって宿はあるんだが、混雑してる事も多くて、部屋が空いてない可能性があるんだよ。」

「………それに従魔の宿泊も大丈夫だ。だから、他のヤツ等より早く到着出来れば、部屋が取れる確率も上がる。」


 昼飯の準備をしながら話を聞くと、ランティエンスってかなり賑わってる街なのか?

 見てのお楽しみもあるし、どんな街なんだろう…。


「ニャッフゥ(お腹すいた)!」

「はいよ!どうぞ〜。ほら、チビも降りてご飯食え!」

「キュ!」


 昼飯は出来合いで済ませ、悟郎さんがお腹いっぱいになったらオアシスを出発した。


 そして、ようやく前方にランティエンスの街がその姿を見せてくれた。

 外周がどれ程あるのか知らないが、物凄くデカい街なのは分かった。蜃気楼みたいに霞んでるぞ?


「……外壁の先が見えないんですけど。」

「そうだな。とにかくデカい街だから、俺たちも全部を知っている訳じゃない。」

「………もう一息だな。あと少し頑張ろうか。」


 俺、着いたらお上りさんになりそう。

 しかも、街のど真ん中には緑が見えるし!


 ここからは、討伐を控えて進もうとなったんで、悟郎さんにはフードに入って休んで貰った。


 悟郎さんも、さすがにゴミムシへのヘイトが、少しは解消出来たみたいだし。


 そして例によって、街が混んでるって事は審査待ちも大変混雑してますよ〜。


 大人しく最後尾に並んでいると、あとから冒険者らしい面子や背負子を背負った商人の様な人達が次々と列を伸ばして行った。


 滑り込みセーフ!やっぱり知ってる人達は、ラストスパート掛けるんだな。


「………シロー俺達の前にいろ。」

「?はい。」

「シロー、人か多いって事はそれに伴う諍いも多い。変に絡んでくるヤツもこの街にはたくさんいる。俺達でさえ絡まれた事があるからな。お前はより注意をしろ。」

「……分かりました。」


 クソ。もう少ししたら、もっと身長だって伸びて、そんな舐めたマネ………いや絡んでくるヤツは見境ないか。だってケン◯ロウだって絡まれてたからな。


 そのまま列は進み、街への入場審査の順番が来た。

 身分証明を渡すと、門兵さんが俺の方を見て視線を彷徨わせた。

  

「冒険者シロー。君の従魔はどこかね?」

「あ!この中です。今、休んでて…すみません!」

「……本当だグッスリだな。分かってると思うが、従魔のした事は主たる君の責任となる。街中では気を付けろよ。」

「はい!」

「特にツリードロワは珍しい。出来れば目立たない様にした方が賢明だぞ。では、以上だ。ランティエンスへようこそ!楽しんでこいよ!」


 俺は、門兵運は良いな。今の所、ハズレを引いてない!


 さあ、やっと街に入れるぞ!

 どんなお楽しみか早く見たい!

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