第249話 インサニーオの町

 インサニーオの町中は、低層の石積の建物が並び、その軒先にテント地っぽい厚手の生地で庇を張って、道に影を作っていた。


 そうやって町全体が協力して、日中の直射日光を遮る様に生活しているようだ。


 市場も同じで、テントの影を利用して商品がズラリと並べられている。


 どこだ〜どこにあるんだ?!この町の特産品は!!


「キュキュキュキュキュ!!!」

「クソっ!チビに負けた!!俺が見つけたかったのに!」


 諦めてチビの指示の元、市場を歩き目的のブツがある場所へ向かおう。


 ここ最近気になるのは、チビが俺の操縦を覚えたかの様に、頭に乗って右の毛を引っ張ったり、左の毛を引っ張ったりして俺を誘導する事…。


 そして目的物が近くなると、興奮して髪の毛を引っ張る力が増すんだ!あの野郎は!


 良くない…良くないよ!そう言うのは!!

 俺の友達に何してくれてんじゃ!!


 しかし、俺もブツを前にすると発作の様に、確認・実食したい欲望を抑えきれず、チビに注意をする機会を逸していた。


 毎晩、友達への労りの回復はしてるけどさ……。


 あまり広い町ではなかったので、ロレンドさんが宿を取りに、トラキオさんは武器のメンテにそれぞれ分かれて行っている。


 俺も行きますよと言ったら、この町は狭いから大丈夫だと、先に市場へ行かせてくれた。


 あと、ここの宿屋には飯が付いてないから、夕飯を外の店で食う予定で市場集合になった。


「キュッ!!」

「はいはい、わかりました~。」

「いらっしゃい!干したメッツナーデナツメだよ!1つ味見にどうだい!」

「ありがとうございます、頂きます!」

 

 はい!持ってました!そう言えば、料理に使ったりしてたけど、その物をチビに上げた事が無かったな。


 うーーーん。まあまあだな。俺が前の砂漠ダンジョンで採ったナツメの方が甘くて美味いや。


 でも、せっかくなんで少し購入しよう。チビもまあまあっぽいし。


 あとは、食用サボテンが売ってたけど、これは夕飯時に食えないか期待している。

 出来ればそこで、食べてから実物は買いたい。


 続いては、チビセンサーには掛からなかったが、シローセンサーにはヒットしたぞ!!


 アロエベラです!!これは買いです!!水々しさと食感が好き。香りが特に無いから他のフルーツと一緒に食べてもいいよな!


「………珍しい物を買うな。」

「あ、トラキオさん。コレは食感が好きなんで買いました。」

「………シローならメッツナーデナツメを気に入ると思ったが。」

「そっは、もう先にチビが見つけてくれたんで、買ってあります!」


 2人で市場を散策していると、ロレンドさんが合流して来て、ちょっと早いけど飯屋に行くことに。


 同じ町でも、キズンリーゾの様には栄えておらず、細々と町を維持して、ランティエンスへ向かう冒険者に野営以外の休憩場所を提供してくれている。


 砂漠の過酷さを思えば当たり前か。


 ん?ならランティエンスは何でそんなに発展出来たんだ?!メッチャ広大な砂漠にも隣接してんだろ?


「ああ、それはな………。行ってのお楽しみだ!」

「………そうだな。自分の目で見ても最初は信じられなかったからな。」


 と言われ、おあずけ食らいました。


「この町と言えば、ボザンサボテンのステーキだな!」

「………あとはドドモラゴンのステーキ。どちらかだ。」

「ご、悟郎さん。違うお肉出そうか?無理してクチ臭トカゲを食わなくてもいいんだよ?!」

「ニャッム(食べる)!」


 俺はサボテンステーキだ。チビはさっきのナツメとリンゴ?あとはネフール枇杷だな。よし。


 サボテンステーキと生のサボテンを使ったサラダが一緒に出て来た。

 ソースがスパイシーな香り!うわ〜〜どんなだろ?


「……不思議な味って言うか、味はほぼスパイスか。シャキシャキしてるのに粘りがあるんですね。」

「そうだな。これが苦手だと食うのは無理だろう。」

「………実は俺はあまり得意ではない。なんで、ゴローと同じドドモラゴンにした。」

「ニャオニァッ(もうちょっと)!」

「え?!悟郎さんもう食ったの?!えええ?!美味しいの?!……え〜〜クチ臭トカゲ…。あ…すみませんドドモラゴンのステーキもう一人前下さい。」

「はーーい!少々お待ち下さいー!」


 悟郎さんのお代わりが3回ほど続いたが、やっと満腹になって宿屋へ向かう事になった。

 待ってる間、食後に出たチャイの様なスパイスの効いたお茶が美味くて、俺もお代わりしてしまった。


 ミルクは入って無かったからチャイではないんだろうけど、スパイスは同じ物を使ってるんじゃ?と思って聞いたら、当店オリジナルの秘密のブレンドだと言われた。


 いいだろう。俺もオリジナルブレンドでチャイを入れでやんよ!!ちゃんとミルクと砂糖も入れて甘々のヤツをな!!


「シロー、さっきのお茶に入ってた香辛料は、きっとランティエンスでそろうと思うぞ?」

「………そうだな。買付の店は小売もやってるからそこで探すといい。」

「ありがとうございます!そうします!その暁には俺のオリジナルブレンドでお茶淹れます!」

「そうか!俺達にも飲ませてくれ、楽しみにしてる!」

「………シローがやっとスエルサ笹の葉以外のお茶を飲むようになりそうだな。それならこれを期に、茶器も揃えた方が良いぞ。」


 禁断の茶器……。今の俺なら買えるだろうか…?


 ノビタケのカップも、悪くないと思うんだが…。ちゃんと加工して、木肌を美しく見せる様にしてあるし、飲む物によって分ける為に、タンブラー、湯呑み、マグカップ風にして各種揃えたが……。


 磁器には敵わないのか?落として割ったら一巻の終わりだと言うのに?!


 とりあえず、全てはランティエンスで分かる事だ。

 買えるのか〜?買えないのか〜?どっちか見定めようじゃないか!



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