第248話 道行き 〜 砂漠を行く
野営明けの朝、自分でも驚くほどしっかりと寝ることが出来た。
なんでだろう〜?
………何でだろうね〜?悟郎さん、分かる?
俺、分かんねぇわ。
「おはよう、シロー。」
「………おはよう、良く眠れた様だな。今日も歩くからいい事だ。」
「……おはよう…ございます…。」
確かに良く眠れた。
「さあ、ゴローの催促に応えるか!トラキオとシローがな!」
「………準備をしておく。火種の葉を集めてくれ。」
「了解!」
悟郎さんのメシ……作るか。なんだか寝過ぎて、まだボーっとしてる。コレはコレで良くねぇ気がしないでも無いが……まあ、いいか。
悟郎さん、もう起きたから舐めなくても大丈夫だよ?……んーーー?そうだなぁ……屋外なのにぐっすりだったよ。
悟郎さん、朝飯さぁ…水炊きの予備があんだけど、それでもいい?あとは…
「………シロー、ボーっとしてる様に見えるが…料理を作るのに問題は無いんだな。」
「あ〜〜〜〜もう、コレは習慣だからですね。トラキオさん、作り置きですがホロトリの鍋……煮物があるんですよ。朝飯にどうか味見て下さい。」
「………お前達の予備食だろう?出して大丈夫なのか?」
「はい、まだありますから。寧ろ、ホロトリはフェルドと山に行く度に獲物としていたせいで沢山あるんですよ。同じメシはまた直ぐに作れますし、大丈夫です。」
コンロ魔道具で豚テキを焼きながら、トラキオさんに水炊きの鍋を渡し、味を見てもらう。
俺等の朝飯なら、この鍋と〆に飯をぶっ込めばいいんじゃね?
「………いい味だな!これはホロトリとホロトリの肉団子か?」
「はい。野菜と煮るとホロトリの旨味と相まって、無限に飲めるスープが出来るんすよ。骨付きや色んな部位の肉が入ってます。……で、〆にこの飯にスープを掛けて食うのがお勧めです。」
悟郎さん、先に豚テキ食ってて。すぐ肉増し豚丼仕上げるわ。
チビ、はよ。お前は何がいい?
「おーー!既にいい匂いさせてるな!」
「………ロレンド、シローがホロトリの煮物を出してくれた。温め直して朝飯に頂こう。」
「いいのか?」
「はい。ロレンドさんが教えてくれた後も、フェルドとホロトリ狩りに行ってたんで。」
そしてみんなで調子こいて食い過ぎ、暫く食休みが必要になったが、再びランティエンスへ向けて進んで行った。
フェーグスラザの葉もたくさんあるし、思ったより花が咲いている。
黄色、赤紫、白、赤と結構な色彩で、森よりも乾燥してるのに、そのお花畑な様相に驚いた。
辺境に戻ったらジェインにも見せてやりたいと思い、ハウスの畑ではなく、悟郎さんのプチ砂漠に植えさせて貰った。
悟郎さんは、ビジュアル的に花を背負っても似合うだろ。………うん、あとで写真撮らせてもらおう。
「シロー、平気か?大分、足元に砂が増えて来ただろう?」
「大丈夫ですよ。悟郎さんと会った砂漠はこんなもんじゃ無かったんで。」
「………そんな過酷な所でゴローとあったのか?」
「過酷………そうですね過酷でした。砂しか無くて、上り下りも多くて、一度風が吹けば目印にしていた場所の状態も変わったし、全身砂でジャリジャリ。俺は、砂漠を越える必須条件、悟郎さんに会えて幸運でした。一人では心が折れたでしょうから。」
そう。あそこで悟郎さんに会えた。
あのまま、もし一人で砂漠を歩いていたら、俺ならきっとデザートウスバカゲロウはスルーした。間違い無くあんなキモいヤツは回避一択だ。
すると、どうなるでしょう?
そう!ずぅーーーと砂漠を彷徨う羽目に陥ってただろうな…。
それ以前にアイツに辿り着けていたか?
俺のカスみたいな運では、無理だった可能性が非常に高い。
俺が悟郎さんを見付けたんでは無く、悟郎さんが俺を引き寄せた。そんな気がしてならないな…。
そして、魔石と魔道具があれば水の心配が無いとは言え、人も動物だ。やっぱり水場の近くに自然と集まる。
1日道程が早まった為、既に周りは砂砂砂で、点在するオアシスには誰かしらが休憩を取っていたり、大きなオアシスには村が出来ていた。
そして、走り出しそうな形のサボテンが点在して来た。
後はここらでは、トカゲが出て来るそうだ。
そう、トカゲ、爬虫類。俺、まだ平気。
ただ、異世界の爬虫類、爬虫類違う…。
あれ恐竜が正しい呼び名!例えトカゲと呼ばれていたとしても、アイツは恐竜類だろ!!
しかも肉食だってさ!噛まれると毒が回るって!
しかも走行速度メチャ速いって!逃げれねぇじゃん!討伐一択かよ?!食えない(食わない)肉なのに!
「何とも………こうも、ドドモラゴンと遭遇してしまうとは…。」
「………しょうが無いだろう?後ろを取られるよりマシだ。さっさと倒そう。シローはそっちのヤツを頼む。」
「了解です!」
目測10m超えって、恐竜ってやっぱデケェな!
しかもあの爪!メッチャ立派!俺を食おうと口を開けたのを見たら、歯っていうか刃物ですか?って鋭利な歯がみっしり生えていて、その上、顎が外れねぇの?ってくらいデカイ口を更に大きく開口して来やがった!
加えて毒のせいか、口臭がクソヤバかった!
噛まれる前に毒を散らしてねぇ?!
「悟郎さん、チビ。アイツ臭いから、口開ける前に倒したい。俺が口を串刺しにするから首切るの手伝って。」
「ニャッ(わかった)!」
「キュ!!」
ドドモラゴン
レベル 50
属性 土
状態 空腹
体力 283
耐久 266
力 291
魔力 162
知力 107
瞬発力 205
運 81
特技 噛みつき 爪裂 砂塵魔法 死肉探知
弱点 腹
うわっ!砂塵魔法だと?!絶対に撃たせねぇぞ!
全員に護身と健脚、更に“気炎万丈”も使おう。
で、ヤツには“喪家の狗”を掛けて……行くぜ!
悟郎さんに乗ったチビと離れ、ヤツの届かない位置まで跳躍して上から口をぶっ刺そうと思ったら、あのクソトカゲが口を開口して待ってやがる!
上昇気流ぅ??くっさい臭いがモロ上がって来た!
「いやマジ止めろ!開けるな、クセぇぇーー!!その口塞げやクソボケカスが!!一球入魂!!」
投擲目潰しで体勢を崩させ、直ぐ様、
おお!
どんな皮も刺すよ!刺せない皮無いよ!って言ってただけある!
そこに悟郎さんの爪飛斬とチビの風薙が連続して放たれ、クチ臭さトカゲの首を落とす事が出来た。
縫い針を戻し清浄。ヨダレ付いてたらヤダからな。
血が飛んだ周りも清浄しとこ。
そしてトカゲは即収納!ヤツ等の死肉探知にもし掛かったら、またクチ臭さトカゲの相手をしなきゃなんねぇとか、マジ勘弁してくれ!
ロレンドさんとトラキオさんは………あ、もう倒してる。2人の討伐を見たかったな…。
「シロー!コイツの収納頼めるか?」
「はい、大丈夫です!」
「………助かる。ヤツ等、同種の死肉でも食うから放って置けないんだよ。」
「調べたら“死肉探知”って、特技がありましたから。食料が少ない分、食い漏らさない様に特化したんでしょうね。」
クチ臭さトカゲを収納し、再び歩き出す。
今、悟郎さんは俺の肩から降りて、砂漠を一緒に歩いている。
歩く悟郎さんの後ろ姿を見ていたら、索敵に………あ、倒しちゃった。
何がいたのかと思ったらゴミムシだった。久しぶり!
「ゴローは、デザートゴミムシが嫌いなのか?」
「嫌いと言うより目の敵です。まだ悟郎さんが強くなる前に、ヤツ等に集団で集られて酷い目にあったんですよ。」
「………魔石だけ取っておいてはどうだ?使い勝手のいい大きさだぞ?」
「はい……。じゃあ魔石だけ。」
解体の術で魔石を取り出し、即清浄をして仕舞う。
………あれ?何か頭に引っ掛かったぞ。何だ…?
ああ!!そんな考え事をしてる間にも、悟郎さんがデザートゴミムシの屍を量産してる!!
悟郎さんの後を追い、ゴミムシの魔石を取っていたら、今度は俺の頭に乗っていたチビから、何かの発見のお知らせが鳴り出した。
忙しいな!おい!!
「悟郎さん!!チビが何か見つけたみたいだから、ちょっと待って!ゴミムシ殲滅はまた後で!」
「…………………………………ニャッ(わかった)。」
うわ…不満そう。
チビもビビってるし。
「ほら、悟郎さんおいで。燻製食べな。」
「ニャ(うん)!」
肩に戻った悟郎さんに、
俺たちは、
氷雪バンザイ!
喉を潤しつつ、チビのお知らせに沿って進んで行くと、砂漠の上に白くて丸い物体がゴロゴロしていた。
【カカライハリス:砂漠の一部に自生している瓜の1種。甘みは少ないがミネラルを含んだ果汁がたくさん入っており、外皮が水分の蒸発を防ぎ、割らない限り中の水分を保持し続ける。果汁は、そのまますぐ飲める為、砂漠の水筒と言われる程。食用可能】
「おお!カカライハリスだ!ついてるな!」
「………そうだな。ただ、シローから美味い飲み物を貰う前に見つけたかった。こっちの方が美味い。」
「確かにそうだけどさ、シローは飲んだ事無いか?砂漠の水分補給と言えばカカライハリスって、くらいに中にそのまま飲める果汁が入っているんだ!」
「はい、初めて見ました。試して良いですか?」
2人は要らないそうなんで、大玉スイカサイズの上部を切り、中を見るとタプタプに果汁が入っていた。
急遽、竹で柄杓を作り、果汁を掬う。
ほんのり甘い香りがする以外は、ほぼ無臭。
チビにも器に入れて、さて飲んで見よう!
「どうだ?」
「う〜〜〜〜ん。何かボンヤリした味です。ただ、水分補給と言う意味ではとても優秀ですね。」
「………普段の行程で、これを見付けたら俺達も嬉しかったよ。」
チビさんの反応もイマイチだったんで、味をみた後は他の旅人の為に採取は見送った。
再び、悟郎さんのゴミムシ殲滅に付き合いつつ、先を行くと、ボンヤリと建物の影が見えてきた。
「シローも見つけたか?あれがランティエンスの手前にある町でインサニーオだ。」
「………今日はあそこで宿泊だ。ランティエンスほどでは無いから、ここでの買い物はあまり勧めない。ただ、シローが好きそうな物がこの町の特産にあるぞ。市場を探してみるといい。」
おう!市場探索任せてくれ!
何があるか楽しみだな!
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