第247話 道行き 〜 初めての野営
「よし!今日はここまでにしよう!野営の用意をするぞ!」
「…………了解。5日の予定をしていたが、この調子だと大分早く着きそうだな。」
「本当にな!少なくとも1日は短縮出来そうだ。」
2人にはログレスで余計な時間を使わせてしまったから良かった。
さあ…野営か………。日中の気温上昇と共に湿度は低下し、夜は冷え込む。確実に砂漠に近付いてるな。
でも正直な所、ハウスがあったから砂漠のダンジョンでは寒い思いをしてない。
悟郎さんには、砂丘があったらまた滑り台したいって言われてるし、下りだけは更に早く進めるから、ロレンドさんにもさらなる時短提案をしてみよう。
火の保ちが良い乾燥した葉っぱを集め、火を確保して、寝る場所の土地を少し均す。
均すと言ってもゴロゴロした石を除けるぐらいだ。
……俺はつい、操土の術でちょっとガチ均しちまったけど。
「野営時の夕食は、通常、温まるスープや飲み物と保存食か途中で狩った獲物がほとんどなんだが………それだとゴローは満足出来ないよな?」
「はい。全く足りませんね。作っても良いですか?」
「…………大丈夫だ。俺も手伝おう。」
温まるスープ……
トラキオさんに、ニンニク、ポロネギ、トマトを刻んでもらい、水分が飛ぶまで炒めたら、かに味噌投入!
焦げないようさらに和え炒め、俺が粉砕してオイルも出てる
味見させて貰ったら、ヤバかった!美味すぎ!!
並行してロレンドさんには、各種肉を焼いて貰ってる。串焼き用の肉を用意しておいた俺GJ!
その間に俺はかに味噌スープ作り。
刻んだ玉ねぎ、
それをストックしてあったホロトリ出汁スープで少し煮て、リーストモウの牛乳を入れ沸騰する直前で火からおろし、生クリームを加えて完成だ!
「…………もはや、野営のメシでは無いよな。」
「シローと一緒だと、ハウス外でも品数豊富な贅沢な夕飯になるのは避けようが無いのか…。」
「いいじゃないですか?!美味しいは正義です!さあ、食いましょう!あ、因みにパンは辺境の
「「パンまで………。」」
ガーリックかに味噌ペーストをパンに塗って先ずは一口。…………美味くない訳がない!いくらでも食えるぞ!
悟郎さんは、かに味噌あんまり好きじゃないけど、肉と交互にスープは飲んでいた。カニの出汁もよく出てるし、クリームは最強!
今夜のおかずは炭水化物と相性抜群なんで、
2人もガツガツ食ってるから、美味いんだろう。
やはり異世界でもカニは、その味噌だけで人を無言にさせるんだな……。
あ?リンゴお代わり?はいよ〜。チビも良く食うね。会った時より若干大きく………なって無いな。
頬と腹が膨れてるだけだった。ゴメンゴメン。
食後は片付けをした後に夜番の順番を決めて、各々休むことになる。
どのタイミングが良いか聞かれたから、最初にしてもらった。まだ、眠く無かったし。
そして宿でも思ったけど、本当に2人の寝付きがいい!
その寝付きの良さは、俺も何とか会得したいぞ。
悟郎さんとチビにはラビット寝袋に入って寝てもらい、その上に寒くない様、ホロトリの羽根を集めて作った羽根布団を掛けた。
ホロトリの羽根は、羽毛ってよりかはザ・羽根が多く、羽根布団にはあまり向いて無かったけど、他に代替え効きそうな物も無かったんで、南の山に行く際に作ってあった物だ。
夜番の間は、ピヨ達の入れ物を予定通り作ろう。
ディアの皮で作れば、背中部分を底にして、足を肩掛けにすれば大した縫製無く作れるだろうし。
それにしても、不思議な感覚だ……。こんなに何日も同じ面子で、誰かと行動を共にするのは初めてだ。
一緒に行動して、メシを作って食って…。
仲間か………。2人は違うんだよな…やっぱり頼れるパイセン位置なんだよ。
今の所、俺の仲間は悟郎さんとチビだ。
ちょっと前までは、チビはそこまででは無かった。居なくなったらなっただな……って思ってたし。
それを踏まえると、悟郎さんは最初から俺の中で別格なんだよね〜。
そんな特別には早々会えなくても、チビみたいに一緒にいる事で変わっていく場合もあんだな…。
だけど、アイツは未だに従魔の首輪を付けてねぇよなぁ?!…ま、それは折を見てもう一回聞いて見るか…。
ここに来るまでにも2人には色んな話を聞いた。
何で冒険者になったのかを聞いたら、子供の頃から冒険者から聞いた話を自分たちの目で見て、実際に行ってみたくなったからと言っていた。
憧れアルアル。たが、実際は中々進めず、行くにはゼルも知識も力も必要だと気づき、徐々に行動範囲を広げて、今ではランティエンスの先にあるオストレイエレスまでは辿り着いたと言っていた。
ああ…あの余りお近付きになりたくない、ダンジョン冒険者の姉さん達が潜ってる所だな。
………卵があるって言うダンジョン。そして、その前には海があって魚が捕れると言うあの……。
でも俺はランティエンスで香辛料を仕入れたら、ログレスにまた戻る。ロレンドさん達は仕入れ後は辺境に1度戻るって言ってた。
今回、行動を共に出来るのはそこまでだな。
ダンジョンには俺たちだけで潜って、ロレンドさん達の到達した20階層を目指そう。
そうしたら、今度また一緒に潜る機会があれば、一気に20階層から進めるし。
俺は、とりあえず冒険者になった。
飢えずに食って行ければ、それだけで良かったから。
不定でも、ハウスがあるから場所はどこでも良かったし。
だが辺境に来て、人との付き合いをちょっと覚え、ハウスを置ける場所を街の中に確保し、知らない事を教えてくれる知己も得た。
他の人もあんな風に他人を心配するものなのか…?
2人が特別お人好し………って訳でも無いのか?
対人の経験値が薄い俺では良く分らないし、今だに裏切りは正直怖い。
だけど、トラキオさんから言われた『俺は自身の譲れない基準』をずっと考えてる。
悟郎さんとチビは、何があっても譲らない。
これは確定。
……俺が見限られた場合は除くがな。………辛っ。
あとは、俺の問題か……。
俺が自身をどうしたいか。衣食住が安定して、余裕が出来た今だから考えないといけない。
“今日は何か食えるかな…”はもう無い。逆に“今日は何にしよう?”と、選べる様になれた。
生活して行く上で、ギルドに登録して売却出来る環境が無くならない限り、食事や買い物に困る事にはならないだろう。
アレが欲しい、コレが欲しいと言った欲求も、殆どが食いもんだ。
……馬とは素敵な出会いが出来たら良いなとは思ってるけど。
それと、ドワーフの鍛冶屋で買った小脇差の様な出会い…。きっとあれと同じ様に、その場で目にして初めて気付く欲も有るだろうし。………あるよな?
どこかに行きたいとも、なりたい物も無い。
安定した衣食住の先を、俺は1度も考えた事が無かった。
「…シロー。交代の時間だぞ。」
「あ!はい…。ありがとうございます。」
「夜には余り考え事をするな。明るい時の方が、いい思考を導いてくれるぞ。」
「………はい。」
「ほら、ゴローとチビを見習ってゆっくり休め。…おやすみ。」
「……おやすみ…なさい。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます