第246話 道行き 〜 森の先へ
「結構進んだな。やっぱりシローの魔法が効いてるよ。」
「………川も何時もより楽に渡れた。」
「良かったです。ここで昼飯ですか?」
「そうだな。正直、キズンリーゾの朝飯ってお代わりもさせてくれるし腹持ち良いだろ?まだ大丈夫かな?っていつも思うんだけど、この辺でちゃんと食っておいた方が、この先も半端な所で腹が減ったりせずに進めるんだ。」
良かった!悟郎さんの腹はもう大丈夫じゃなかったからさ!しっかりお昼の時報が、俺の耳に届いてんだよ!
「ニャッフゥ(お腹すいた)!」
「分かってるよ、悟郎さん。」
素早く火の用意をして、ご飯を作ろうと思ったら、2人は町で買ったサンドと水の魔道具で水を入れて食い始めてしまった!
昼飯はもしや簡単に済ますパターンですか?!
悟郎さんには全く足りないし、俺もサンドだけじゃ物足りない!
「休憩時間ってどのくらい取るもんですか?」
「半刻(30分)くらいかな?」
よし!ここはログレスで買ったコンロ魔道具の試運転も兼ねて、サッと飯を作ろう!
木はいっぱい持ってるから、燃えやすい適当な大きさに切って乾燥!さあ、さっさと燃えろ!!
その横でに在庫の牛串を刺して、火で炙る。
チビは、リンゴとマカダミアと……何が良い?
え?
コンロで薄切りの
「悟郎さんお待たせ〜どうぞ!ロレンドさんとトラキオさんも、良かったら食って下さい。」
「おお、素早いな……。ありがとう頂くよ。」
「………ありがとう。急がなくても大丈夫だぞ?」
フライパンを清浄でキレイにし、ハンバーグ種を焼く。別売りの蓋をして蒸し焼きだ。
ソースは……トマトでいいか。適当なサイズに切って、後で焼き汁に入れて味を付けよう。
牛串もいい感じ!もう少し待ってくれ!
先にローストビーフと唐揚げ食ってて〜。
俺もサンド食いつつ、
え?悟郎さんももっと食いたいの?今、フライパン使ってるから、焼き豚で我慢して!
「ゴローは昼飯もしっかり食うんだな。」
「悟郎さんが飯を食わなかったら、由々しき事態ですね。物凄く心配……俺の回復で治らなかったらどうしたら……。」
「…………シロー、大丈夫だから食え。」
想像するだけで恐ろしい。機嫌が悪くなる事はあっても、具合が悪い悟郎さんなんか、会った当初ぐらいだ。
……大丈夫。悟郎さん凄え食ってる。つい、怖い想像しちまった。
そんな俺の妄想を払拭するかの様に、悟郎さんは飯をしこたま食った………きっちり30分食い続けて満腹になり、前足で顔を洗ったあとはフードの中に収まって寝ている。
俺、まだ食ってたんだけど、喉が通らなくなった(物理)。
「ここからは多少の上り下りがあるが、そこまでの険しさは今日は無いからな!」
「分かりました!」
「…………進むにつれ、徐々に乾いて気温も上がって来るぞ。」
「砂漠があるのは、ランティエンスの近くだけですか?」
「いや、3日目辺りから気温の上昇と共に砂地が増えてくるな。ランティエンスの手前にある町からが本格的に砂漠に変わる。ランティエンスの更に先には、果てし無く広大な砂漠が広がってるって話だ。」
「…………俺達もその砂漠には足を踏み入れてない。王都への主要街道が近くを通っているが、砂漠に特化した足が必須になる。」
広大な砂漠とか、俺はもう見たくもないね!!
悟郎さんのリクエストがあるなら、街にすぐ戻れる距離限定で先っちょだけ足を踏み入れるかもしれないけど。
そして、しばらく低木の森を歩くと、足元に少しずつ石が多くなって来た。山の登り始めみたいだが、少し登るとまた直ぐに下って行く。
その途中、チョコチョコとウォンバットみたいなデカいネズミが姿を見せた。だが、ネズミに食指は動かないし、毛皮もゴワゴワと聞いて討伐意欲を削がれた。
他の冒険者も思う事は同じで、その為、時折増えたネズミ討伐の依頼が出されるそうだ。ヤツ等はここでも害獣扱いか?
「まあ、不人気なのは否めないが、ヤツ等は初心者の狩り練習に丁度いいんだよ。辺境で言う所のフォレストラビットみたいなもんだ。討伐証明の歯を持って行けば多少のゼルにはなるしな。」
「…………結構素早くて、下手なヤツでは狩れないぞ。」
「そうなんですね……。でも、ラビットは肉は美味いし毛皮もフワモコで、角も利用用途があるから、あのネズミとは比べられないですね。俺、辿り着いたのが辺境で良かった!」
一瞬、ギルド長の耳を齧ったのコイツなんじゃ?と、思ったけど、耳元にウォンバットが来ても気付かないとか、有り得ないよな〜?
休憩後も滞り無く進み、辺りは荒れ地の様な風景に変わっていた。
まだ、植物は生えているが、樹木と言うよりユッカや顕花種の植生が増えていた。
葉も白っぽくフワフワした毛の様なものが生えていたり、乾燥に強そうって言うか、もう既に乾燥してね?って状態の植物まで様々だ。
その道すがら、い草の様な細長い葉が群生しているのを見付けた。ただ、長さは俺の背丈を超え、葉先は自重で垂れ下がっている。
「ロレンドさん、トラキオさん、少し時間もらえますか?」
「何かあったか?」
「…………大丈夫だぞ。進みが早いからな。」
「この葉っぱ、使えないか試したいんです。」
【フェーグスラザ:常緑多年草。乾燥に強く、乾いても葉が靱やかさを保っている。】
切って水分を抜くと、確かに折っても割れずに曲がるだけで、葉は靱やかなままだった。
これは長さといい、太さといい、しかも乾いても緑色を保ってて、編むのによろしいんじゃありませんか?
「フェルドのお袋さんが、作ってるヤツにか?」
「はい。丁度良い長さとしなり具合なんで、少し刈って帰ります。ありがとうございました。あとは、歩きながら適当にやります。」
使っている内に色味は変わると思うけど、これを染色出来たら竹より色の入りが良さそうだ。
ハウスの畑に一株植えて、ついでにピヨ達の様子見をしたら、元気に駆け回っていた。
俺の姿を見付けると、羽根をバタバタさせながら突進して来る。そろそろ飛べそうな気もするが。
「イア、オルガ、マシュー。この葉っぱは食わないでくれな。代わりに白いアレを置いておくからお食べ。一欠片たりとも残さず食ってくれ!」
「「「ピヨピヨピヨ!!」」」
3羽にアレの肉を出して渡すと、ガツガツと食い始めた。留守番ヨロシク!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます