第245話 道行き 〜 川の向こうへ
おはようございます、士郎です。
初めての宿屋泊。何とか大丈夫だった。
みんな寝付き良いのな…。
あっという間に寝られるの凄えよ。
まあ、俺も悟郎さんを撫でてたら、知らぬ間に寝てたけど。
何だかんだで、疲れもあったんだろう。
良かった、良かった…。
「シロー…早く用意しろ!」
「………諦めも肝心だぞ?何だったら1枚着た上に重ねて着れば良いんじゃないか?」
「ニャウニャッ(はやく)!ニャッフゥ(お腹すいた)!」
ええ、愚図っておりますよ。アレを着たくなくて……。
嫌だ……。でも、悟郎さんがハラヘリで機嫌も悪くなり掛けてる。
どうせ包まれるなら、他の素材を使用した衣類が望ましいよ絶対に。
その暁には、アレ素材のこの服はフェルドにあげようと思ってる。
着用時のストレスとか、マジ要らねぇんだよ!
「……きっと今晩だ。今晩寝たら、朝には俺はアレになって……。そうなったら、悟郎さんに速攻で狩られる……間違いない。サヨナラ異世界。結構楽しかったよ……。」
「い・い・か・ら!早く着ろ!!これ以上愚図るなら、シローだけ朝食抜きにするぞ?!」
「ああ!!待って下さい………着ます…。」
ここの宿屋の飯を昨夜食ったが、ミルクとチーズがこれでもか!ってくらい沢山使われててメッチャ美味かったんだよ!
女将さんにそれを伝えたら“朝ごはんも美味しいわよ!楽しみにね!!”って言われたんだ!!
それを食いっぱぐれる訳には行かねぇよ!!
元世界から着ていたTシャツを着て、その上からアレを着用する。
怖っ!!嫌にジャストフィットする!!ロンTじゃなかったから、二の腕から下は素肌にサラッと触れてしまう!!ウフフ……鳥肌立った。
「お待たせしました…。すみません。」
「………もう諦めろ。直ぐに慣れて、違和感も薄れるだろうからな。」
「全く!シローがここまで嫌がるとは思わなかった!」
「ロレンドさん。例えばですが、防御力の非常に優秀な服が、昨日給仕をしてくれた娘さんの着ていた様な服だったらすんなり着ますか?俺はこの服に同等の拒否感をどうしても感じてしまうんですよ。」
宿屋の娘さんが給仕の手伝いで、昨夜店内に入って仕事をしていた。
可愛い系の娘さんで、それを本人も自覚して服も可愛らしくキメていた。
俺はああいうのは、私可愛いでしょアピが強くて好かんが。
「あ、あの服をか?!ううむ………確かに物凄く抵抗感があるが…。」
「………止めてくれ!想像しただろ!!」
「トラキオ、お前だって似合わないぞ?!シローならギリギリ大丈夫な気がするが…。」
「まさかの流れ弾被弾?!俺だって着ませんよ!!」
そのまま3人でワチャワチャと、タラレバ話をしながら食堂に行って席に着くと、朝ごはんが1種類だけだからか、直ぐに運ばれて来た。
「おはようございます!こちらが朝ごはんのクリーム煮です!」
「あ、ありがとう。頂く…よ。」
「………頂く。」
「いただきまーす!悟郎さんも、どうぞ!お代わり出来るからね!」
「ニャッ(わかった)!」
ロレンドさんが若干挙動不審だけど放っておこう。
朝ごはんのクリーム煮は、ゴロゴロ野菜とチキンに似た肉が入っており、ガッツリ&ハイカロリー間違い無しの一品にパンが付いていた。しかも、どっちもお代わり自由。
因みに、悟郎さんの食う分はちゃんと一人分の支払いをしている。
だって、悟郎さん凄え食うからね。店にも気兼ねなく遠慮せずに頼めるし、また次に来た時に入店のお断りをされたくないし。
そして、食後はすぐ宿を後にし、一路ランティエンスを目指して歩いて移動を開始。
2人に了解を得て、健脚の術を掛けさせて貰い、馬車が通る街道を外れ進んで行く。
浅い森を分け入ると、暫くして川の気配がしてきた。
ログレス前に魚を獲っておいて良かった……。
でなければ、この川を見て、在庫が減った魚を捕りたい発作が出る所だった。
「水深に問題はなさそうだな。予定通り川を突っ切るぞ!」
「………分かった。」
「了解です!悟郎さん、大丈夫だと思うけど、念の為フードに入っておいて。チビはそのまましっかり捕まってるか、悟郎さんと一緒にフードに入ってな。」
「ニャ(うん)!」
「キュ!」
川幅は、確かに先が見えないくらいに広い。
それなのに水深が袋脛辺りまでしか無い。
こんなに浅いなんて、日照りって訳でも無さそうだし不思議な感じだな。
「水深が浅くとも、地味に足を取られるから気をつけろよ!」
「この川って、いつもこの位の深さなんですか?」
「………一度、雨が降ればあっと言う間に水嵩が増す。俺の腰くらいまで深くなるから、渡れるかどうかは天候に左右されるんだ。」
そう言えば、渡り始めの岸には下草があまり生えていなかったな。
おお!確かに地味に足に負荷が掛かるぞ!ちょっとトレーニングみたいだな!
「ニャウニャ(平気)?」
「大丈夫だよ!悟郎さんは湿気多過ぎない?エアコンしようか?」
「ニャンニャゥ(お願い)!」
ランティエンスまでは、まだまだ距離があるからか、やっぱりこの辺りの気温と湿度は悟郎さん向きでは無いな。
リーストモウの製品はとても素晴らしがったけど。
キズンリーゾは、山に囲まれた辺境と違って平坦な土地だ。
木の生えている間隔も広く、下草も生えやすい所がリーストモウの飼育に適していたんだろう。
それに、今渡っている川から一定距離を置いて町が出来ているのは、水嵩が増して氾濫しても町が飲まれない様にだろうな。
「……何かいるな。岩みたいに見えるけど…何なんだ?」
「………ニャゥフ(獲った)!」
「ありがとう悟郎さん!良く見付けたね!」
「シロー、何かいたのか?」
「はい…………コイツですね。襲って来る訳でもなさそうでしたけど、気配がしてたから悟郎さんが狩りました。」
【リブクラーバ:浅瀬の川に生息している蟹。岩に擬態し、動くことは少ない。身は少ないが蟹味噌がふんだんに詰まっており、殻からは良い出汁が取れる。(食用可能)】
「珍しいな!リブクラーバじゃないか!!こいつ見付け難いんだよな!」
「………魚も好きなシローは、多分これも好きな味だと思うぞ。濃厚で後を引く美味さだな。」
「やった!美味そう!悟郎さんありがとう!!」
「ニャォフ(当たり前)!」
極端に足の短い沢蟹だな!それにこの甲羅のゴツゴツとした感じ、岩にしか見えないぞ!
だが!俺と悟郎さんの目(索敵)は欺けなかったな!
「悟郎さん、さっきのヤツは、発見次第狩ることが今決定しました!俺は俺で狩るんで、悟郎さんもよろしく!あ!歩きながらの狩りだから、やったら教えて!回収は俺がする!」
「ニャッ(わかった)!」
そして、蟹ハンター士郎&悟郎で、川を渡り切る迄に合計31杯の蟹ハンティングに成功した。
途中から悟郎さんと競争になってしまい、指導を受けたが、歩みを止める事無く、川を渡り切って向こう岸に無事到着。
「シローは、食が絡むと途端に集中するな…。」
「………ゴローと競わなければ問題は無い。単なる狩りに留める様に。」
「はい!悟郎さん、競争はまた今度な!」
「ニャ(うん)!」
蟹取り面白かった!索敵で掛かっても、擬態してるせいで、俺の方は当りが少しズレたりした事もあったしよ。
悟郎さんはそれを外さなかったんだよな!これが野生の勘か?!
向こう岸に渡ると、徐々に木の本数が減り、低木が増えて行った。
川から離れて行くと、湿度も自然と減って来る。
悟郎さんも肩の上でゆったりだ。
「この先に開けてる場所があるんだ。そこで休憩にしよう!」
「………了解。」
「はい!」
天気も上々!
ランティエンスへ向けて好スタートだな!
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