第244話 試練後はご褒美

「シロー、ずっと気になってたんだが……マントの下は何を着ている?まさか普段着じゃないよな?」

「?普段着ですよ??」


 え?まさか旅人シリーズの服とかあんのか?!

 なら、値段次第で揃えないとな!


「………ログレスの街で襲撃されたんだ。用心するに越したことは無い。これを機にきちんとした防具を身に着けろ。幸い、この町にはドワーフ一家が鍛冶を、ノーム一家が防具にもなる縫製製品を作っているんだ。それを目当てに来る冒険者も多いんだぞ?彼らの品々は値が張るが一級品ばかりだ。」

「………はい。」


 重いのは嫌だな…。今の服とかほとんどが、辺境の外れにあったリメイク服屋のおばちゃん作で、着心地良いんだよ。


 でも、2人の言った事も確かで、不壊の効果でマントを破って刃物が刺さる事は無いけど、仕込んでいた鉄板の凹みを見て、ちょっとヤベッと思った。


「いらしゃ〜ま〜せ〜!」

「?!」

「何探す〜?直すもするよ〜?」

「これの直しと補強を頼む。あと……シロー!この子に防具を見繕ってくれるか?」

「いいよ〜!そこで待てね〜!」


 ……何か独特だな。あの喋り方は方言的なもんか?

 そして、ドワーフより更に小さいおじさんだ…。出来れば七人くらい集まった所を写真に収めたい。


「こっち来いね〜!」

「あ、はい!」


 呼ばれた方へ行くと、防具と言うより服が何種か置かれていた。


「これ一番勧めるね〜!柔らかいのに硬くなるいいやつ!フェルボンビ鉄の蚕使ってる!」

「か、かい…?!」

「シロー、俺もそれが一番良いと思うぞ。重いのは嫌いだろ?あの防具はな、普段柔らかいのに衝撃を受けると瞬時に硬化する優れものだ。だから、糸の製造元は気にするな!!分かったか?!」

「………俺もそう思うぞ。上だけでも普段使い出来るお勧めを身に着けておけ。あれはただ上質な糸で作られた服の様な防具。ただそれだけだ!」


 あ、れ…?ロレンドさんとトラキオさんが、俺を言い包めようとしてる?

 だ、だけどよ…あれはアレだろ?!ソレは無理な相談ってもんじゃねぇのか?!

 だってアレが…アレで……!!


「ご、悟郎さん痛いんですけど?!」

「ニャーニャッ(命令)!!」

「冗談だろ?!だってアレだよ?!悟郎さん分かってるの?!それに、俺は植物由来の衣類に拘ってんだよ!シルクタッチは、悟郎さんの毛並みだけで十分なんだ!!」

「ニャウニャ(平気)!!」

「平気じゃねぇし!!あ!!売り物にスリスリしちゃダメだよ!!悟郎さん戻って来て!ストップ!!咥えないで!!ヨダレ付いちゃう!!」


 悟郎さんが…アレの服を咥えて持って来ちゃった…。買取り決定……。


あるじ思いね!いい従魔に感謝しろ!」

「ゴロー!助かったよ!ありがとう!!」

「………さすがゴローだ。シローを1番分かってるな!」


 その後も何着かの防具服を出され、上下合わせて3組程買った(買わされた)。


 俺………こんなに金使ったの初めて………しかもアレに………。

 そりゃ、ゼルはまだあるけどさ……売れば金になる物だって持ってる。けどさ……。


 今まで500円以下の古着の投げ売りとか着てたヤツに、いきなりハイブランドの服を買わせるのはどうかと思う……。

 ゼロが3つ4つ違うだろがよ!!


「シロー、無理に買わせた不満もあると思うが、命には代えられない物だ。それに、着回しすれば何年も保つ上に補修もしてくれる。体格が変わったら調整も可能だ。長い目でみれば適当な物で誤魔化すより、結果お得になるぞ?」

「…………俺達も既に5巡(5年)は着てるしな。」


 クソ!ログレスであの暴漢に遭遇しなければ、2人がここまで過保護っぽくはならなかったはずなのに!


 5年だと?全然足らんわ!!購入価格的には、少なく見積って20年は着ないと俺的に元は取れないし、それにまだ身長も伸びるし(予定)!


 そ、それにアレが、アレが包まってたんだぞ?!ソレを身に纏うとか……最早俺が……アレみたいで…。


 ヤ、ヤバいもん想像しちまった!どうしよう…朝起きたら俺がアレになっ……?!


「シロー!リーストモウ牧場の直営店に着いたぞ!!そろそろ戻って来い!」

「!!直営店?!」

「…………リーストモウの乳を使った製品が多数ある。味見もさせてくれる。それにチーズは、ジェインが気に入ってたんだろ?種類もあるから好きなだけ買うといい。」


 乳製品が多数?!チーズも数種?!牛乳の質的にはマウンテンモウの方が上だと思ってるけど、加工品を量産するとなれば、飼育が可能なリーストモウに軍配が上がるな!


「……わぁーー!凄えいっぱいある!悟郎さん!悟郎さんも食いたいの探して!」

「ニャッニャゥ(やったー)!」


 先ず、目を引くのはチーズ!でっかい!!俺が貰ったやつって、お土産用の持ち帰り易いサイズだったのかも!


 最初に目にしたのは、俺が両手を広げてやっと持てる程の直径だ。厚みは20〜30cmぐらいか?


「いらっしゃい!味見してみるかい?」

「はい!お願いします!!」


 カットされた一欠片を受け取り、半分にして悟郎さんにも渡し、俺もいただきます!!


 美味しーーい!貰って食ったヤツより熟成が浅いのか、こっちの方がクセが無くて食いやすい!その分、牛乳の風味が残ってる!

 この辺の味覚はボウヤのままでも構わない。鼻に抜けるアンモニア臭なんて、俺には必要ない物だ!


「悟郎さん、美味しいな!今までのも美味いけど、これもイケる味!」

「ニャッニャゥ(うんっ美味しい)!!」


 売り場の人に聞いたら、やはり1番食べやすい物らしく、俺の持ってるチーズを見てもらったら『3年熟成』の物と言われた。熟成チーズは、売り場には出して無いけど販売してくれると!


 前の様に住まいが一緒じゃないから、そう頻繁にジェイン達とメシを食う訳でも無いんだが……いや、買って行こう!


「味見ありがとうございます!今頂いた物と3年熟成の物を2個づつ下さい!」

「そんなに良いのか?この食いもんは日が経つと味が変わっちまうんだが?」

「大丈夫です!(収納がありますから!)」

「(そうか、分かった!)じゃあ、今用意する!少し待っててくれ!」


 やっぱり食い物を買うとテンション上がる!

 消え物なんだが、さっきのアレとは比較にならない多幸感が得られるな!


「お待たせ!この若い方が11000ゼルで、3年熟成が15000ゼルだよ。」

「え?!こんなにデカイのに?!」

「はは!なんたって、ここが産地だからな!他所で買おうと思ったらもっと高いぞ!」


 前にネットで見た時は、4kgのホール1個で12,000円だったぞ?!それが十数kgで同じくらいの値段じゃないか!


 さっきのアレの支払額に比べたら可愛いもんだ!


 ……ん?ちょっと俺の金銭感覚に異常が………。



 さあ!少し気になる事があったが、気にせず続けて行こう!お次は、悟郎センサーに1番で掛かった商品だ。


 このトロッとして、そして優しげな香りは……練乳?!さすが、甘い物に目がない悟郎センサーだ!


「ふふふ!あなたの従魔はこれの味をみたいのね?はい、どうぞ!」

「ありがとうございます!」


 悟郎さんのあざとい前足クレクレ攻撃&鳴き声を聞いて落ちぬ者などいまい!


「悟郎さん、さあ、どうぞ!」

「ニャ(うん)!…………ニャゥ(美味しい)!」


 うーーん!濃縮ミルクと、くど過ぎない甘さ!

 それに俺は今、イチゴを持ってるじゃないか!!


 これは、この商品を購入し、今夜掛けて食ってみろと言われている………そうだろ?


「シロー!面白いのが売ってるぞ!」


 そうロレンドさんに声を掛けられ、練乳の精算を慌てて済ませて移動した。


「………何だコレは?食べ物なのか??」

「何があるんですか?」


 2人が不思議そうに見ていた商品ケースを覗くと、濁った液体の中にプカプカと浮かぶ白くて丸い物体が!


「モ、モッツアレラ!」

「シロー、これが何か知ってるのか?」

「たぶん!……すみません!これは生のチーズですか?」

「お!お前さん知ってるのか?!そうだ、これは生のチーズだよ!腐りやすいから、今日食べられるなら是非買ってみてくれ!リーストモウの乳の風味が、1番良く出ているチーズだよ!」


 ヤッホー!!モッツアレラのピーザ!ピーザ!ピーザ!!

 でも生でも食いたい!オリーブオイルは無いけど、マカダミアからフレッシュオイル絞って、トマトとバジルでカプレーゼにしよう!


 ハウス解禁になったら、色々試したい!


 買い物最高(食い物限定)!!

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