第243話 初馬車と運命の出会い
ロレンドさんとトラキオさんには目茶苦茶心配されたが大丈夫だと伝え、そのまま予定通り、ランティエンスの途中にある町へ向けた乗り合い馬車に乗車した。
初馬車………………………すでに辛っ!
臭えヤツが一人乗ってんだよ!悟郎さんは速攻で、俺の服の中に逃げ込んだしよ。
途中休憩の時にソイツに浄化しても良いか聞いたら『要らねぇよ!』って拒否られた……。
え?自分の臭いって大丈夫なもんなの?それとも慣れですか?他の人は平気なの?ダメなの俺だけ?!
「いや、臭いぞ?まあ、だけど旅の途中ってそういうヤツ多いんだ。偶に女性でもキツい臭いの人もいるしよ…。」
「…………人は慣れる。自分がそれに甘んじなれければいいと思う。ただ、ログレスの道具屋で買った様に『洗浄の魔道具』を所持していれば、そんな事にはならない。それを持たない理由は本人の問題だ。強制は出来ない……臭いがな。」
2人にそう言われ、どうしようも無いと諦めた。
お馬さんに癒やして貰おう……。
御者さんの所へ行って、世話をしてみたいとお願いし、ブラッシングや水やりの手伝いをした。
馬、可愛い……。俺の髪を食むのは止めて欲しかったが、これも未来の愛馬の為と思うと平気だった。
よーしよしよし!お前達には浄化を掛けてやるからな〜ついでに回復もしよう!何かあったら大変だし、出発前に護身と健脚も掛けるから、この後もよろしくな〜。
その後も順調に馬車は進み、村を3つ越し、小さな町『キズンリーゾ』へ到着した。
「予定よりだいぶ早く着いたな。」
「…………ああ。休憩後の進み具合が、とても速かったせいじゃないか?」
「………………………………。」
うむ。ここはアレを行使しようか…。
黙秘けーーーん!聞いちゃだめーーーーー!!!
よし!俺は何も言わない!!
「シロー、ここで一泊した後は徒歩で陸路を進む。途中、短縮出来る道があるんだが、幅広の浅い川が流れていて馬車だと通れないんだ。ランティエンスに到着するまでの約5日は野営をしながら進んで行くぞ。その間はハウスの使用は原則禁止にしよう。ゴロー、すまないが一等のご褒美は少し待ってくれ。」
「分かりました!」
「ニャッ(わかった)!」
「…………キズンリーゾは森に囲まれた町で、とても長閑でいいぞ。それにリーストモウの飼育をしているから、モウニュウコやチーズが名産だ。」
「来たよコレ!待ってました!!」
逸る心を抑え、先ずは宿を確保し、その後に町ブラと相成った。
「男だけだと部屋が押さえ易くて良いよな。」
「…………そうだな。一人部屋じゃなきゃ嫌だと、毎回我儘を言うヤツも居なくなったしな。」
「…………。」
危ねえ………。
きっと大丈夫!これも経験だ!
「そう言えば、ギルド長がその昔、宿に泊まってネズミに耳を齧られたって言ってました…。」
「ああ、ギルド長の若い時分にはあったかもな。今はそんな事は滅多に無いし、この宿も何度も使ってるが、一度もネズミに齧られた経験は無いよ。」
「…………ギルド長、いったいどんな宿に泊まったんだか。」
そうして通された部屋は、ベッドが3つ並んで置いてあり、あとはトイレと小さな洗面が付いているシンプルな部屋だった。
やっぱり、こうして宿に泊まると旅をしているんだなって感覚が強くなって来た。
今迄は、何処に行こうと夜にはハウスに戻ってたから、知らない事ばかりだし。
一泊いくらなのか、部屋が空いてるか、夕飯は付いてるか、朝飯もついてるか、風呂や洗い場はあるか……付いてて当たり前と思っていた物事を確認しなきゃなんねぇって、中々面倒くさい。
だが、こっちは無くて当たり前、付いててラッキーが基本らしく、そんな至れり尽くせりの宿は、王都にでも行かなきゃ無いだろうよと、ロレンドさんに言われた。
俺のハウス、王都レベルか?!
「さあ!早く着いた分、色々回れるな!シローの行きたい所は……分かってるから、他に何かあるか?トラキオ。」
「…………鍛冶屋に行きたい。ログレスでも調整して貰ったんだが、いつもの人が居なかったから、しっくり来ない。」
「それなら、バラけて回りますか?」
「「…………。」」
え?何か変か??
それともまだ心配されてるんだろうか?
「まあ、そう言わず付き合ってくれ!案内したい所もあるしな!」
「はい…。俺は別にどっちでも大丈夫なんで、お任せします。」
「…………じゃあ、近場の鍛冶屋から行こう。」
どうしたんだろう…。小さい町だし、別に単独行動でもよくね?
一緒に行く意味あんのかな…?
疑問に思いつつも、2人の後を付いて鍛冶屋へ向かった。
カンカンと鋼を打つ音は、ノコギリを作って貰ったキャスレイさんの所と同じだが、店の中にあるのは冒険者御用達の剣や槍等の刃物で占められていた。
「いらっしゃいませ!何かお探しですか?」
「…………剣の調整を頼みたい。」
「はい、では調整される剣をこちらへお出し下さい。」
チミっ子が働いてる……。偉いなぁ。
異世界の就労年齢は10歳らかだっけ?家の手伝いかもしれねぇけど。
冒険者は確か…14歳からだったか?それでも中坊だしなぁ。
「シロー、念の為に言っておく。この先、人族以外の種族が増えてくるからな。さっきの受付の人もドワーフ族の女性で、お前より年上だ。」
「!!!!!」
ファンタジー来た!ジロジロ見ちゃ失礼だけど、気になってしまうぞ!
ダメだ…刃物でも見ていよう。………これがドワーフ謹製の品々か……。違いの分からない男としては、全部同じに見えるが。
「……あ、これいいな。」
両刃が主流の中で、一本だけ片刃だ。
長さも30cmぐらい。小脇差感が半端ねぇ!
いいな〜カッコいいな〜お幾ら万円すんだろ?
だけど、買っても俺は使わない気がするしな…。
携帯してるだけの物を買うなんて、無駄使いもいい所。
「気に入りましたか?」
「!!!は、はい……。」
ビックリした……。小脇差(仮)を見ていたら、脳内で戦国武将モードに突入していた様だ。そこをドワーフの娘さんに後ろを取られるとは……気を付けねば!!
「冒険者のお客様は両刃を好みますから、それ売れ残ってるんですよ。今なら50000ゼルにして、鞘とホルダーを特別にお付けしますよ!」
「か、買います!!」
「シロー?!いいのか?そんな買い物して……。物はいいと思うがお前に必要な物なのか?」
「大丈夫です!俺には猿の手(の売却残高+α)が残ってますから(答えになってない)!」
俺、生まれて初めての無駄づ……いや無駄にはしねぇ!
剣に慣れてない町人でも扱い易い物で、小太刀術もあったし、この長さは
それにログレスで会った
悟郎さんに頭をポフポフされたけど、気にしねぇ!
きっと、
ありがとう!キズンリーゾ!これだけでも来た甲斐があったよ!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます