第241話 ログレスギルドでの売却

「おいおい…。こんなもん買い取る訳がねぇだろ?!浅い所にしか潜れないにしても、せめてギュモンマンゴーくらい採って来いっての!!さあ、邪魔すんなサッサとどけ!!」


 ふむ……。ログレスギルドの売却担当はクソのご様子。話を聞かない系の典型的な使えないヤツで、その面と同じくらいに頭が硬い様だ。


 下手をするとティーキアマカダミアの殻より硬いかもな!


 まったく……ロレンドさんが懇切丁寧に説明したのにこの言動だもんな。クソダメだな、チェンジだ、チェンジ!!


「すみませ〜ん!この使えない売却担当から変えて欲しいんですけど?」

「ああ?!何だとこのクソガキ!!」

「えーーー?!だって人の話は聞かないわ、話しても聞く耳が無いわじゃ、使えないって言われてもしょうが無いですよね?だって事実だし!それに、これだけちゃんと説明をしたのに理解出来ないとか、使えない以前に愚か過ぎて今迄の仕事がどう成り立っていたのか摩訶不思議!脳みそ入ってます?もしかして、空っぽになったティーキアマカダミアの殻でも詰まってんじゃないんですか?それより、アンタもういい年なんだし、そろそろ現役退いたら?その方がきっと売却カウンターもより回る様になりますよ?さあ、お互いの為にも、老害よとっとと去れ!」


 はーースッキリ!ゴリラでさえ、クソ受付を一掃して風通しを良くしたんだぞ?!

 ダンジョン抱えてるギルドの売却窓口がこれとか、マジでクソだろ!

 

「あ!それと老害の前の担当も、同じ理由でクソ使え無いからパスで!仕事と思考を放棄した人なんて、シッキーモトンクソ投げサル以下だから!」

「なっ!!お前っ…!!」


 最初に担当したクソが話を聞いていたのか、不服そうな声を上げて近寄って来た。

 面倒臭いなコッチ来んな!!シッシッ!!


「……おい、シロー。俺は面倒を起こすなって始めに言ったよな?」

「あ、ギルド長、おはようございます。今日もカウンターですか?性が出ますね!!」

「余計なお世話だ…。お前は朝っぱらから、売却カウンターで何を騒いでいるんだ?」

「これを売りに来ただけですよ?」


 採った時のままのティーキアマカダミアギルド長キリエドに見せる。

 そして溜息を付くギルド長キリエド


 あ?こいつギルド長のくせに話を聞かずに否定すんのか?


「……ここのダンジョンに潜る冒険者なら、こんなもん買い取れとは言わない。それをお前は何で売りに来たんだ?一緒に回った先輩達に教えて貰えなかったのか?」

「いいえ、ちゃんと教えて頂きましたよ?ですが……「キュキュキュ!」……チビさん、今大事なお話中ですよ?……「キュ!」……はぁ、しょうが無いな!」


 この際ついでだ!この場でティーキアマカダミアを加工して見せよう。


 手にした実の食えない果肉を剥ぎ、種を取りだし、素早く乾燥と軽い焙煎をして、丸ごと1個ギルド長キリエドに渡す。


 何だかポカンとしてるが、サッサと中味を確認しろよ!


「はい、チビもどうぞ。腹溜まりが良いんだから食い過ぎんなよ?!」

「キュッ!!」


 俺も食っちゃお!ナッツ系って、ポイポイ口に入れて食ってると、止まらなくなんだよな〜。

 あ、2人には燻製ナッツを試して貰おう。


「ロレンドさん、トラキオさん。これ昨夜燻製したナッツです。そのままも美味いですけど、これもイケますよ?」

「お、おう。ありがとう。」

「………頂く。」


 燻製マカダミア、マジで美味かった!腹壊すまで食いたい気持を何とか抑えた。

 植物性オイルだからとか、ギルドの後はランティエンスへ向けて歩くからカロリーは実質ゼロだよな?とか、考えたけど2人に迷惑は掛けられないから我慢した。


「………シロー割ってくれ。今ここには割る道具が無い。」

「……はいはい。どうぞ〜。」


 素直に言って来たギルド長キリエドに殻を割って渡すと、しげしげと見て確認し、匂いを嗅ぎ、やっと小さな一欠片を口にした。


 ウチのグルメっ子チビさんが絶賛なんだから、もっと食えよ!


「………シロー、燻製ヤバいな。」

「ですよね?!俺も味見したら、止まらない系の仕上がりだったんで、すっごい我慢しました!これ元が淡白だから味変も楽しめると思ったんですよ!」

「味変?」

「塩味だけでなく、ランティエンスの香辛料でも味付けを試してみたいんです!」

「………手伝う!」


 ランティエンスに着いたら、トラキオさんの買付けを済ませて、後は暫くギルドの依頼を受けつつ滞在する予定になった。


 そうしたら俺も香辛料を色々買って、燻製の味付けを増やしつつ、念願のカレー作成に挑むぞ!


「……シロー、さっきは済まなかった。これは十分買い取る価値がある。しかも乾燥してしまえば、かなり遠くまで流通が可能な商品になる!」

「辺境にも流して下さいね?」

「勿論だ。しかもティーキアマカダミアなら、魔物が食わないから採取を競わずに済む。若手の稼ぎにもなるだろう。」

「絞ればオイルも採れますよ?サラッと上質のオイルは、値段次第では食堂でも使われるでしょうし、そうなったらティーキアマカダミアの消費も格段に増えるでしょうね。」


 俺がそう言うと、皮算用を始めたのかギルド長キリエドが思案顔でティーキアマカダミアを食っていた。


 まあ、採るのは簡単に行くだろう。その後の乾燥と焙煎は、そっちで試行錯誤してくれ。


「今回ティーキアマカダミアは売ってくれるのか?加工用に試してみたいんだが。」

「売却担当が変わるなら売りますよ。」

「分かった。ブイシンキ、お前が担当してくれ。」

「……分かりました。」


 若いけど、今度はちゃんとしていそうだ。

 さっきの使えないヤツ等は、文句を言ってたがギルド長キリエドに制され、後ろへ下がって行った。


「先ほどは失礼しました。改めてよろしくお願いします。」

「「「お願いします。」」」

「では、売却頂ける商品を出して下さい。」


 事前に打ち合わせをしていた量のティーキアマカダミアを出して渡す。

 皆のお気に入りになったんで、当初の量よりかなり減った。まあ、後は依頼でも出して採取してくれ。


「……もっと採取されていそうですが、売るのはこれのみで良いですか?」

「はい。……保存食として俺達も持っていたかったので、少なくてすみません。」


 ロレンドさんが申し訳無さそうにそう伝える。

 周りの冒険者もギルド長キリエドが話を始めた辺りから、聞き耳を立てて様子を伺っていた。


 思ったよりここのギルド長は利益重視か?切り替えも切るのも早そうだ。まあ、お陰で余計な時間を取られずに済んだけど。……ゴリラの様な人情味は薄いな。


 とりあえず助かった事に変わりはないし、辺境に戻る前にまた採取すれば良いよなって事で、サービスでもう少しだけ売ろうか。


「では、速やかにご対応頂いたので、これも売却に出しますよ。」


 忌まわしき『猿の手』、米俵『ピエーピパイナップル』。

 それとイチゴも少し出すか……え?あの〜悟郎さん、この手は何?え?売却不可??ジャムにしろと?!

 あ、はい分かりました。取って置きます。


 アレも売ろう。持っていたくないしな!

 え、え??嘘でしょ?!これもダメなの?!まさか食いたいとか言わないよね?!ね?!

 トリュイション野ブタがあるじゃん!これは悟郎さんには食って欲しくないんだ!!


 一等の約束だ……と?!

 ウォーーー!!ノーーーーーーーーォーーー!!


「どうした?!シロー!!大丈夫か?!」

「……あ、ロレンドさん大丈夫です。大丈夫…。心を強く保てば……きっと……。」

「………ゴローが食いたがったのか?アレを。」

「ああ、なるほど………。頑張れシロー。調理方法はトラキオに習うといいぞ?」


 嫌だ…嫌だよ……。悟郎さん、お願いだから違うのにして?


 え?久しぶりに砂漠のヘビ肉も食いたくなった…? 

 嘘でしょ?!悟郎さん、マウンテンモウの方が美味しいよ?


 約束?約束した……しちゃったよ。好きなものを好きなだけってね……。

 昨夜は今後の打ち合わせで、リクエストに応えられなかったから今晩作るねって……。


 試練の時が来たんだな…………。


 辺境に戻ったら、ログレスの食に付いて絶対にこの事を追記させる!





 今晩、俺はハウスのキッチンで……心を燃やす!

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