第239話 ダンジョンから街へ 一時帰還と凡ミス

 ロレンドさんとトラキオさんの話を聞いて、俺の為に2日も押してログレスに留まってくれた事が分かったので、三層目探索の途中だったけどログレスの街へ戻る事にした。


「別に納期がある訳でもないから大丈夫だぞ?」

「…………そうだ。買い付け先も馴染みの商会だから、ちゃんと必要な分を確保済だしな。」


 そう言うだろうと、流石の俺にも分った。

 2人はいつもそうやって、俺が気にしない様にしてくれていたから。


 だから、遠慮じゃなく、俺のけじめだ。


 ダンジョンに一緒に行こうと誘ってくれたのはロレンドさん達だけど、俺はそこで先に2人の予定を確認すべきだったんだ。


 予想外にログレスで会って、2人と一緒にダンジョンへ行ける!わーーい!!じゃねぇんだよ!ボケが!

 

「いえ、街には少し買い足しもしたいんで俺も一度戻りたかったんです。ついでにトリュイション野ぶたも狩っておかないと、悟郎さんから言われた一等のご飯の希望に添えなくて…。」

「ああそうか…。ゴローは相当気に入ったしな。」


 気に入ったのはマジで。ただ、リクエストは各種肉のステーキと角煮、ハンバーグ、唐揚げ、ローストだ。肉はたぶん足りるだろう。


「…………街に戻ったらシローもギルドに一緒に行ってくれ。報告はロレンドからして良かったのか?」

「お願いします。面倒な事を頼んですみません。」


 ティーキアマカダミアについては、代表してロレンドさんに売却ついでに報告をお願いした。ギルドで試してもらう様のロースト済の物と、採取したそのままの実をいつでも渡せるように用意してある。


「その時に、ヒナ鳥達の従魔登録をしておけよ?ダンジョンだけで出すにしても、他の冒険者の目に止まった時にちゃんと証明出来ないと守れないぞ?それに、ログレスでは間違いなくホロトリは人気のある食肉用の討伐対象だから、見つかったら確実に狩られるからな?シローがトリュイション野ぶたを狩るのと同じ様に、ヒナ鳥達が狙われる事があるって自覚して注意しろよ?」

「分かりました。」


 はい、俺、迂闊もいい所。偶々、卵から孵ったピヨ達を飼い始めたけど、ホロトリは俺も討伐するし、食いもする。

 他の冒険者にとってもそれは同じ事だし、辺境の固有種でもあるホロトリは、地域が変わればより食肉用としての価値も上がる。それは先の村でも、芋を買う時に聞いていたのに。


 ダンジョンでは他の冒険者が居なかったから出したけど、もし見付けられたら、サクッと狩られてもおかしくなかった。


 今はまだ、成体の羽根の色とも異なる茶色で、身体も小さいからホロトリ感は出てないけど、大きくなったらあのホロトリになるんだ……よな?


 ……………あれ?

 俺………調べたっけ?


 東の山の頂上で岩と同じ様なまだら模様の卵を悟郎さんが見付けて、初めてのホロトリの卵だラッキー!ってなって、頂上の風も強かったし、即戻ってハウスで割った…。割る前に清浄の術は確実に使ったけど、卵自体は………調べて無くね?


 ……で、ボウルに割って出て来たのがピヨ達雛鳥だったから、ヤベー孵化間近の卵だったって、慌てて山に戻しに行こうとしたが時すでに遅しで、諦めて畑に寝床の巣箱を用意して置いたら、俺の野菜達を食い荒らされた。


 それを見て、デカくなったら食ってやる!と、思ったけど、俺を見付けると後を追い掛けてくるピヨ達は思いの外に可愛く、羽根の色味もウズラみたいで、いつ生え換わるのかな〜…とか思って見てたんだよ。…そう。見てただけ。確認してねぇ!!


 今は、街に着いたらギルドで直ぐに従魔登録するべく、偈箱げばこの様に掛けたディアの皮にピヨ達を入れている。



 ………すみません、今更だけどお前等、何者?



名前 イア(士郎の従魔)

性別 女

種族 ミーガンタ(転移者の保護中)

レベル 8

属性 雷

状態 安心


体力 35(30)

耐久 31(30)

力  29(30)

魔力 41(30)

知力 40(30)

瞬発力 44(30)

運 39(30)


特技 ピリピリ(弱)


装備 なし



「はぁ?!誰よ??!!」

「シロー?どうした??」


 東の山で拾った卵だからって『ホロトリ』と思い込んで、確認を怠ったのは俺だよ。それは間違いない。


 だけど、ミーガンタって何?既に8レベルでチビより強そうなんだけど?!


「あ…すみません。俺、うっかりピヨ達を鑑定し忘れてて、それで今見たら……その………ホロトリじゃなくて、“ミーガンタ”って出まして……。」

「は?!ミーガンタだと?!」

「………シロー、それ本当だろうな?!」


 えー…もしかして、飼ったらダメなヤツなのか?

 既に俺の従魔認定だけど、もしかして山に返せとか言われたりしねぇよな…。


「シロー、ミーガンタってのは本来辺境周辺にはいない魔物だ。ヒナ鳥達の卵はどこで手に入れたんだ?」

「東の山の頂上です。岩の間にあったのを悟郎さんが見つけてくれたんで、持って帰って食おうと割ったら、ピヨ達が出て来たんですよ…。」

「………東の山か。そう言えば最近になって不思議な風が吹く様になったって、冒険者仲間から聞いたが…流石に生息域が違い過ぎるか。」

「そもそもミーガンタは渡らないぞ?」

「………そうなんだよな。」


 ううっ……。2人を悩ませてしまった!

 ちょっと厄介そうだから、従魔登録は辺境に戻ってからの方がいい気がするぞ。


「ミーガンタって、本当はどこにいる鳥なんですか?」

「隣国のジラメイラだ。辺境北部の帰らずの森の先にある国なんだ。帰らずの森を横切って辺境に渡る鳥はいる事にはいる。だが、ミーガンタはそもそも渡らないし、それに東の山の頂上に卵だけがあったと言うのも説明が付かないんだよ…。」

「………シロー、ロレンド、雛鳥達の従魔登録は見送らないか?辺境に戻ってから、ギルド長に説明して手続きしてもらった方が良いと思う。」

「ああ。そうだな。シローもそれで良いか?」

「全然大丈夫です!寧ろ、そうしたかったんで!」


 良かった!ゴリラの方が、何かの時は誤魔化せそうだし!じゃあ、それまではピヨ達はハウス待機にしなきゃな…。


 クソー。俺のホロピヨアタック構想が崩れた……。

 しかも特技の“ピリピリ(弱)”って何だよ?!血行でも良くなんのかよ?!


 肩は凝ってないけど、試しに今晩使ってもらおう。

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