第238話 ログレスダンジョン 三層目③ 教え

「「「ピ……ピヨ………。」」」

「ニャウ(無理)。」

「くっ!君達の食い意地をもってしても、ヤツ等ムシ共の全滅は無理だったか!」


 ホロピヨ三連星が、食い放題を途中リタイアしやがった!

 しかもドロップが漏れ無くヤツ等ムシ共の肉って……。


「シロー…。シュニールイモムシの方が多いんだから、全滅は無理だよ。ヒナ鳥達は良く食ったと思うぞ?」

「…………そうだな。それにこのドロップ品を見る限り、肉は気に入った様だし、また次に参戦させれば良いだろ?」


 あ゛あ゛あ゛〜〜!!せっかく他の冒険者が居ないチャンスタイムだったから出したのに!!そんで、殲滅してもらってから、気兼ねなく探索をキメたかったのにぃ!!


 しかもあのドロップ……。拾いたくない〜ヤツ等ムシ共の肉ドロップなんか収納したくないんだよぉ俺は!


「ニャウニャッ(はやく)!」

「………………はい…分かりました……。ピヨ達、とりあえず…“清浄”。ここではハウスが出せないから頭と右肩に乗って。チビ、落ちない様に見ててくれ。」

「キュ!」


 いやだぁ〜〜〜!キモいよ〜〜〜!何で肉が白いんだよクソが!!…うわっ!ブヨブヨしてる!最悪!!


「……拾いましたぁ。」

「ほら、元気だせ!この先に市場にも並んでる赤くてデカい実があるから。」 

「…………あれも美味い。だけど実が柔らかいから、傷が付きやすくて俺達はここで食うのみだ。この実は日に2回は何処かしらで再び実を付けるから、たくさん採るといいぞ!」


 イチゴの予感!悟郎さんも苺ジャムは気に入ってくれたから沢山採るぞ!あと気になるのはカカオ豆。いったい何層にあるのか、ロレンドさん達は知ってるかな…?チョコーレート原料の採取次第で作れる物が変わって来るんだよな。


「あの、お二人はこの実が生っている階層をご存知ですか?」


 ギルド長に貰ったカカオの実を出して見てもらうと、何だか表情が芳しく無い…。


「シローはこれをどうやって手に入れたんだ?」

「辺境のギルド長に貰いました。食い方分からないからやるって。」

「…………そうか。これはな、21階層に生っている実だ。俺達は3人で潜った時に、20階層までなら行った事がある。ログレスダンジョンは10階層ごとに転移方陣があって、それに乗れば行きも帰りも短縮して行けるんだ。だが、方陣を使えるのは、その階層から方陣を使って戻った履歴がある者のみだ。一足飛びにシローを手前まで連れて行ってやりたい所だが……。」


 うっわー……21階層かよ。だいぶ先の階層だな。

 でも、どこに有るの物なのかが分かっただけでも、目指して進んで行けるから助かるわ〜。


「大丈夫です。階層が分かるだけで。それに、俺はきっとじっくり時間掛けて周りそうなんで、この時期一杯は入ってると思います。ロレンドさん達はこれからの予定はもう決まってるんですか?」

「ああ。この後はランティエンスで、トラキオの親父さんに頼まれてる香辛料を買い付けに行くんだ。」

「…………良かったらシローも一緒に行かないか?」


 うっ!魅力的な提案だな……。ランティエンスへは俺も行く予定ではあったし。

 ……だけどな。まだ聞いていたスイカのある9階層にも到達していないし、そこまで2人を付き合わすのは甘え過ぎだろう。


「ありがとうございます。でも、俺はこのまま潜ってみます。出来たら次は同じ階層からロレンドさんとトラキオさんと行ってみたいんで、その時はまたご一緒させて下さい!」

「そうか……。」

「…………ギルド長が、通信のダンジョン品をシローに持たせた気持ちが少し分かった。」


 どうしてさ?!俺、そんなに心配掛けてないよね?!

 そりゃ、日本人は西洋顔に比べればガキっぽく見えるだろうけどさ!


「大丈夫です。慎重に進んで行きますから!」

「あ〜〜正直言うと、そっちはあんまり心配してない。どっちかって言うと、さっきの様な対人関係と逆恨みだな。」

「…………ダンジョンは一見広く見えるが、極めて閉鎖的な空間だ。悪意を持ってお前に何かをしようと思えば、秘密裏に力を行使して、ダンジョン内で葬ることだって可能だ。そんな事にならないとは思うが、セダンガの事を聞いて、注意をした方が良いと感じた。逆恨みと言うのは、避けるのが難しいからな。」


 あ……、それを心配されてたのか……。

 逆恨みって、アイツ等が居なくなって不利益を被ったヤツがって事だろ?


「……もし、そんな風に襲われたら、やり返して良いですよね?」

「当たり前だ!必ず自分を守れ!それは、お前を襲って来た相手を殺してでもだ!いいか?!」

「…………シローは従魔達を大事にしてるだろ?同じ様に自分も大切にしろ。それが結果、従魔達を守る事にも繋がる。それと、シロー自身の譲れない基準を考えろ。それ以外は他人が何と言おうが気にするな。そう言った声は人の数だけあって、相手にしても無意味で無駄な戯言だ。勝手に言わせておけばいい。」

「はい……。」


 能天気に『そんなの来る訳ねぇじゃん!』って言えたら良かったけど、ロレンドさんとトラキオさんの言葉が重く響いて来る。

 可能性がゼロにならない以上、2人が言った様に注意は必要だ。


 俺的にヤツ等が居なくなって、ハイ終了!だったが、それでは収まらないヤツがどこかにいる…?


 どこにいる?このダンジョンにいるのか?


 それに、俺の譲れない物って何だ……?

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