第235話 ログレスダンジョン 二層目②
「俺は分かった……。」
「…………何がだ?ロレンド。」
「この家には長居をしちゃ駄目だ。快適過ぎる上に、シローのメシが美味くて根が張りそうだ。」
「…………分かる。早くダンジョンに出よう。」
……たぶん2人は大丈夫だと思う。
まあ、そもそもヤツは家に入れないけどねw。
「じゃあ、今日は最初に
「…………アレは好みが別れる。」
「そうだな。シローが気に入ったら採取してくれ。」
「?分かりました。」
何だろ?好みが別れる果物って……。
とりあえず、俺と悟郎さんでマンゴー採取。ロレンドさん、トラキオさん、それとチビが
チビのマカダミアの気に入り様は、今迄の採取物中でも一番だな。次に林檎だ。
それなら胡桃も好きそうだよな〜。まだ見つけてないけど。
「ニャオゥン(うるさい)!!」
「ごめんな〜悟郎さん。俺がいる以上、あのプ〜〜ンは寄って来ちまうんだよ。」
「ニャァニャオ(たおす)!!」
「俺も倒す!クソ蚊め!」
悟郎さんと2人でマンゴー近くにいる魔物を討伐し、追加の採取をドンドンする。
1日で実が復活するとか、最高なんですけどー!
それにマンゴーは、色味的にジェインも好きそうだし沢山採ろー。
「よしこっちは完了だな。悟郎さん、チビと合流するよ!」
「ニャッ(わかった)!」
ん?木から落とすのと落ちた実を集めるので、分業してるのか?
「ロレンドさん、トラキオさん、こっちは終わりました。…何かチビが張り切ってますけど、大丈夫でしたか?」
「ああ!シロー!良かった。チビが凄くてさ。俺達じゃ止められ無かったんだ。」
「あああ……。あんなにバラバラと落として…。」
「…………拾える分は集めたんだが、途中で枝に引っ掛かったりと色々あってな。先に集めた分は収納を任せて良いか?」
「もちろんです!チビがすいません!」
アイツは〜〜!!ただ実の付いた枝を落として回ってるだけだぞ?!それを2人に拾わせて〜!
「シャーッ(こら)!!」
「!!……キュキュゥ!!!」
悟郎さんの一喝でチビが素早く戻って来た。
まあ、まとめて収納出来るからいいんだけどさ…。
次からは、ちゃんと協力して採れる様になって貰わないと、いつか困る可能性もあるからな。
「悟郎さん、俺がマカダミアの実を集めて来るから、チビに教育的指導をよろしくお願いね。」
「ニャッ(わかった)!」
「キュッ!キュゥ〜〜キュゥ〜〜!!!!」
チビが落とした実と、取り残しを採取・収納して皆の元へ戻ると、チビを咥えた悟郎さんが待っていた。
どうやら厳しい指導を受けた模様。
「お待たせしました!チビが落とした分も含めて取って来たんでご安心を!」
「結局シローにやらせて悪かった。…チビは、今度採取する時は、落とす場所も確認しながらやれば大丈夫だと思うぞ!」
「…キュゥ〜〜!!」
「はい、悟郎さん乗って!チビももう放して良いから。」
「ニャッ(わかった)!…ニャンニャッ(すずしい)!」
悟郎さんは肩に乗ってクールダウン。チビはオレの頭に乗って伏せている。
「悟郎さんお疲れ様。久しぶりのクンコウギョの燻製だよ!ほらチビも!林檎齧って水分補給しておけ!」
「ニャッニャゥ(やったー)!」
「キュッ!」
そして俺達は、ハウスを出る前に作っておいた、キウイ、
「ロレンドさん、トラキオさん、チビが勝手してすみません。これ果実の冷たい飲み物です。昨日のみたいに凍ってはいないので、飲んでみて下さい。」
「…………ありがとう。新人の冒険者と一緒に回ってると思えば、良くある事だ。それじゃあ頂く。」
「シローも気にすんな!余程、こっちの方が楽をさせてもらってるんだから!」
そうかも知れないけどさ〜。既に昨日以上の汗をかいている2人を見ると、チビがいい感じに振り回したのが容易に分かった。
チビは悟郎さんの家来だけど、対人については俺からもっと注意しなきゃな。
そこから、好みが別れるもう1種の果物を目指して進んで行くと、腐敗臭の様な強烈な臭いが漂って来た。
「!!これはまさか?!」
「ニャウ(無理)!!」
「ギュゥ!!!」
「あ〜……やっぱりシロー達も好かんか。」
「…………俺もこれはダメだ。好きなヤツの気がしれない。」
紛うこと無き、完熟ドリアンの臭いですよね?しかも、以前スーパーで見掛けてかいだ臭いの数倍は臭いぞ?!
これはガチで腐ってるアンモニア臭!!しかも放置時間が経ち過ぎた、生ゴミみたいだ!!
「案内してもらったのにすみません…。これは無理です。食物の臭いじゃない!」
「だよな〜。良かったよ。シローが気に入ったら、あの家も臭くなるだろうな…って心配だったんだ。」
「…………次に行こう。次は市場にも置いてあった黄色い剣みたいな長い果実だ。」
きっとバナナだ!!早くそっちに行きましょう!!
その場を急いで移動し、途中で見つけたマカダミアを追加で採取しながら向かった。
魔物が途切れて静かになったな…。そうだ!今まで聞く機会が無かったアレを聞いてみよう!
「あの、聞きたい事があるんですが、いいですか?」
「何だ?俺達で分かる事なら答えるぞ?」
「……以前、修業でぶち込まれたダンジョンで悟郎さんと会ったんです。そこは砂漠で、蛇の魔物が多かったんですけど、俺が倒すと魔石ばかりで、悟郎さんが倒すと肉が出たんですよ。それで俺はダンジョンってそう言うもんだと、思ってたんです。そうしたら、ここのダンジョンでは違っていたから何で偏ってたのかが気になって……。」
ログレスのダンジョンでは、どっちのドロップも出現している。俺も悟郎さんもチビも。
あの砂漠と何が違ってたんだろうか…。理由が分かれば知りたかった。
「ああ、それか。ダンジョン以外では、
「はい。」
「ダンジョンって環境が特殊で、果実の復活から魔物の再発生まで、大体決まりがある。魔物を倒した後のドロップ品も同じだ。出現率が一番高いのが魔石だ。次に出るのはその魔物の一部。肉だったり素材だったり様々だ。それに複数出る場合ももちろんある。」
そうだったな…クソいらねぇのも出たし…。街に戻ったらアレは速攻売ろう!
「それで、何で偏りが発生するかと言うと、倒した本人がその魔物の何を必要としてるか否かが絡んでいるって、言われてるんだ。」
「え?!じゃあ、肉が欲しいって思って倒したら、肉かドロップされる可能性が高まるんですか?!」
「そうらしいぞ?その時、ゴローは“肉が食いたい”って思ってて、シローは“あの魔物の肉は要らない”と、思って無かったか?」
「……あ。確かに!俺、蛇肉はちょっとキモいから無理って感じてたんですけど、悟郎さんにとってはご馳走で、出るととても喜んでました……。」
その前の洞窟の時、腹減りが落ち着いてからは、蟻蜜のドロップが減った。どっちでもいいと俺が思ってたからだったのか?
「もちろん、全部が望み通りには行かないが、影響は馬鹿に出来ないって話だ。」
「……俺、このダンジョンで猿の手が出た後で、こんなもんいるか!!ってそれは強く強く思ってました。確かに以降のドロップは魔石ばかりだ…。」
「はは!猿の手はそう思うよな。だから、何も考えず物欲が平静な状態だと、どちらも出て来る可能性有りって事だ。」
今は、飢えてもいないし、物凄く欲している物も無い。だから、両方がドロップ品として出ていたのか。
「良く分かりました!ずっと気にはなってたんですが、聞く機会が無くてモヤってたのがスッキリしました!」
「そうか、それは良かった。たぶん、俺達も無意識に“重いからドロップは魔石が良い”って思ってるんだろう。だからか、他の物が出るのは極稀だな。」
「…………確かに。」
ダンジョンって、本当良く分からん場所だよな。
季節も関係無いし、階層で気候も違う。
でもお陰で手に入る物もたくさんある。悟郎さんにも出会えたしな!
「キュキュキュキュキュ!!!」
「流石チビだ。もう気付いたんだな。」
「あ!微かに黄色いのが前方に見えて来ました!」
バナナ!!バナーナ!!俺は好きだけど、実はチビはバナナがあまり好きじゃない。
市場で買って試しに渡したら、一口食べて、バナナを持っていた手をスッと下ろした。
初めてのその動作がちょっと面白かったんだよ。
虛無った顔で、モグモグするのを止めて、バナナをテーブルの上に静かに置いた。
お残しは俺に怒られるとでも思ったのか、チラチラと俺の様子を伺い、何とかフェードアウトしようと頑張っていた。
確かに残すのは好ましく無いが、合わない物を無理に食ってもしょうがない。
ただ、食い掛けだったからとりあえず乾燥させて、バナナチップにしてみたら、バナナのネットリ感が和らいだお陰か、今度はガツガツとしっかり完食した。
「凄い!バナナ農園みたいだ!沢山生ってる〜〜!」
「だろ?俺等はいいから好きなだけ採ってくれ!」
あんなにたくさん実が付いた房を支えて、よく折れないもんだな〜。
じゃあ、お言葉に甘えて頂きまーす!
バナナの採取は、木一本に付き一回で済むから楽ちん!
こうしてバナナの採取も無事に終え、次は3層目だ。このダンジョンは2フロアごとに気候が変わるそんなんで、次はここより悟郎さん達が動ける環境希望!
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