第230話 再会とダンジョンの洗礼?

「こんにちは!お二人共、どうしてログレスに?」

「それはこっちが聞きたいよ。シローと従魔だけで来たのか?」

「はい。辺境が寒くて悟郎さん達が思う様に動けなくなったんで。そうしたら、ログレスはダンジョンが暖かいって話を聞いたんで来ました。」

「…………確かに暖かいな。階層によっては蒸し暑かったり、砂漠の様な暑さだったり色々だぞ。」


 やっぱり、その気候に沿った果物が各階に生ってるんだろうな。砂漠っぽい気候には何があるんだろう?いや〜!ダンジョン入るの楽しみになって来た!


「そうだ。ハラ……シズナエルさんは別行動ですか?果物食べまくりとか…。」

「あ、シローは知らなかったのか……。実はな、南の山の依頼が終わって街に戻ったらさ、あいつ結婚して他の街に引っ越してたんだよ。」

「はぁ?!!お二人に挨拶も無くですか?!」

「まあ……そうだな。それもあって、あいつのお袋さんには凄い謝られたりでさ…。結局、ギルド長の言った通りになったよ。ただ正直、肩の荷が降りたなってトラキオと話してて、俺たちも辺境での依頼が冬場は乏しいから、ログレスで過ごす事にしたんだ。」

「…………2人でも何の問題も無い。寧ろ、いざこざは圧倒的に減ったから快適だ。」


 そうだったのか……。クソハラキリめ。アイツ本当に自分勝手な女だな!子供の頃から世話を掛けてた2人に何の挨拶もしないなんて!

 それにトラキオさんの言い様…。見た目では分からないけど、怒ってんだろうな。


「ニャッフゥ(お腹すいた)!!」

「ああ!!!悟郎さんごめん!!ご飯すぐ注文するよ!」

「ニャウニャッ(はやく)!!」

「すみませーーん!!注文お願いします!!」

「はーい!」


 ヤバい!!街に入ってから悟郎さんを待たせっぱなしだった!やっぱり買物は後にすれば良かった…!楽しかったけど!


「一番早く出てくるお肉料理とオススメを下さい!あ、あとウチの従魔にご飯食べさせても大丈夫ですか?」

「はい!もちろん大丈夫ですよ!では、すぐお持ちしますね!」


 良かった……。悟郎さん、もうちょっとだけ待ってね。好きなだけ食べていいからね!

 チビはその横で、とても静かにマンゴスチンを咀嚼していた。空気の読めるツリードロワだこと。


「ゴロー、俺たちが話掛けたから遅くなってすまないな。」

「ニャウニャ(平気)!」

「え?悟郎さん…ロレンドさんには随分大人な対応を………たっ!…しゅみません!」


 くちびるに、黙れ!猫パンチを打たれた…。腫れそうだから回復しよ…。


「…………シローはもう泊まる宿は決めたのか?俺たちの定宿だったら、従魔と一緒に泊まれるぞ?」

「そうだったな。確かまだ空きもあったはずだ。」

「あーー…。宿はたぶん取りません。………コソッ ハウスがあるんで。」


 そこからは、俺がミスリアさん達とセダンガ商会の顛末を簡単に説明した。二人共、バトヴァルの依頼が終わってすぐにログレスに来たせいか、その辺の事を全く知らなかったからだ。


「…………ダンジョンを出たり入ったりと繰り返していたから…全然知らなかった。ジーグォンは大丈夫だろうか…。」

「??お知り合いなんですか?」

「ああ、同い年で子供の頃は良く遊んでたんだよ。ただ、親がアレだろ?あいつも気を使ってか、大人になってからは、誰とも一定の距離を置くようになったんだよ。」

「ジーグォンさんなら……今頃ファルルさんの尻に敷かれてますよ。」

「…………!!そうか。それなら良かった。教えてくれてありがとう、シロー。」


 良かった……のか?まあ、本人は大丈夫そうではあったけど…。治療を繰り返してダンジョン品の後遺症も無くなり、リハビリを頑張ってたからな。あの2人は大丈夫だろ。ジーグォンが浮気でもしない限りは!


「お待たせしました〜!お肉料理は、トリュイションの串焼きとソテーです!オススメは、シュニールのステーキです!どうぞお召し上がり下さい!」

「悟郎さんちょっとだけ待って!ああ〜………。」


 鑑定してから食って欲しかった……。もういいや。悟郎さんも危ない物は本能的に回避してくれるだろう。……でも、確認はするよ?


【トリュイション(野ブタ):ログレス南部の平原に生息する草食の魔物。肉は高タンパクで、ビタミンも豊富。この種は特に脂が甘く育つ。食用可能】


 マジか!!オーク回避したー!!ログレス南部の草原だな!覚えたぜ!


「悟郎さん、美味しい?」

「ニャッニャゥ(うんっ美味しい)!」


 良かったよ〜!本当に良かった!!お代わりしてね!さあ、俺のオススメも初めての名前だな。いったい何だろう…?


【シュニール(イモムシ):ログレスのダンジョンに生息する魔物。調理の手間はかかるが、高タンパクでクリーミーな味。変態後は、鱗粉に毒を有する様になる為、食用不可。食用可能(幼虫に限る)】


「ぎっ!!!!!!!!!!」

「あ〜〜〜…。シロー、良かったら俺等で食うぞ?」

「お、お、お願いします………。平気なんですか?」

「…………寧ろ、食い慣れてる。」

「マジですか………。」


 クソっ!さっきまで、超楽しかったのに!!!何でだよ?!ギルドの本には書いて無かった!こんな身近に虫食あるなんて!!!ふざけんなクソが!!!

 俺、よく叫ぶの留まったよ……。それに食堂では、オススメの注文が引っ切り無しに入ってるし!


「ニャオニァッ(もうちょっと)!!」

「あ、はい。お代わりね。すみませ〜ん。お肉料理もう2つ下さい!」

「はーい!ありがとうございまーす!」


 俺は……もういいや。何だか胃部から、こう迫り上がって来る様な不快感がね……。

 2人には、俺が食べれなかったアレを食って貰って、本当に申し訳ない…。会った時は既に食後っぽかったのに…。ワイルドだね〜……。俺は無理だー!

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