第228話 スーレン村の甘焼き

 いくつかの村を過ぎ、やって来ましたスーレン村!

 だいぶログレス寄りの村だったから、時刻は13時と、昼を過ぎてしまった!早速『甘焼き』なる物を食うぞ!


 俺予想だと今川焼きなんだが……。何が出るか楽しみだな!

 小さな村の通路を歩き、『甘焼き』を作っている場所を村人に聞いて向かった。


 ……あ、何か香ばしい匂いがする!悟郎さんも匂いを嗅ぎつけて、寒いのにフードから顔を出して来た。


「いらっしゃい!この寒いのに何処から来たんだ?」

「辺境のラクシェルからです。今はログレスに向かってる途中なんですよ。この村の『甘焼き』は絶対に食べろって言われた(地図に書いてあった)ので、立ち寄りました!」


 目の前には、鉄板の上に小さな丸い形の生地が沢山焼かれている。これは……どちらかと言えばどら焼の生地に見えるぞ!


「おお!辺境までそんな話が回ってるなんて、嬉しいよ!『甘焼き』は、今ここで焼いている生地に好きな具を挟んで食べる菓子なんだ!中身はこの村の名前にもなってる『スーレン』って甘い芋に、木の実や干した果実を入れたものだよ!」

「は〜〜美味そうですね!芋の黄色が鮮やかだ!それじゃあ、木の実と果実を2個づつください!」

「まいど!600ゼルだよ!すぐ食うかい?」

「食います!!」


 おじさんは、手のひらサイズの生地に芋餡を置いて、クルッと丸めるとトレーの上に置いて渡してくれた。


 これ!絶対美味いヤツ!!焼き立てアツアツを2つに割って良く冷ましたら悟郎さんに1つ。チビは……レーズン一房食って爆睡してるからいらねぇな。


 俺も頂きまーーす!!…………うまっ!!生地は軽く素朴な味だけど、スーレン芋がめっちゃ美味い!!

 蜜芋の様な濃厚な甘さと粘りがあって、これは焼き芋でも十分美味いだろうな……焼き芋したいな……。


 ジェインやメリエナさんにもお土産に狩って……じゃなくて買って帰ろう!


「すみません!とても美味しかったんで、お土産にしたいんですが、いくつ用意出来ますか?」

「ありがとよ!生地はすぐに焼けるから、時間を貰えるなら50個づつは用意出来るよ!」

「じゃあ、お願いします!あと、この芋自体は売ってませんか?」

「芋もかい?この村は芋だけは豊富だから、一緒に売れるよ。……だけどそんなに沢山持てるのか?」


 収納魔法で持って帰る事を伝えると、店主は笑顔で生地を焼き始めた。

 木の実入り、ドライフルーツ入り、芋オンリーの3種の甘焼きのゼルを支払い、容れ物を出して待つこと約20分。


 悟郎さんには芋の粘度が少し高過ぎた様で、今は口直しの燻製をムシャってる。


「お待たせ!!これで全部だよ!」

「はい、確かに!ありがとうございます!!」

「いや〜、こっちこそありがとうだよ。こんなに買って貰えたら、今日は店仕舞いにして、明日は肉を買いに行けるよ。あ、芋は俺んちにあるんだ。一緒に来てもらえるか?」

「はい!大丈夫ですよ。」


 ??肉を買いにどこに行くんだ?芋ばっかりって言ってたから……まさかログレス迄行くとか?


 屋台は常設の様で、周りを囲って鍵を掛けたら、屋台から店主さんの家へと向かった。

 寒さもあって、村の中の人出は疎らだ。話を聞くと、やっぱり立ち寄りの商人や冒険者相手の商売だから、受け上げが0の時も多いそうで、そうなったら売れ残りは、自分で消費するしか無くなると、嘆いていた。


「だから、買って貰って悪いんだけど、俺はもう食いたく無いんだよ。飽きちゃってさ…。」

「干芋は作ってないんですか?干芋なら、立ち寄りの商人も他の街や村で売ることが出来るし、芋本体より軽いから、購入してくれると思いますけど…。」

「干芋は……旨味が抜けてるから俺たちの保存食にはなるけど、商人には買って貰えないよ…。」


 え?干芋の旨味が抜けるって、どうやって作ってるんだよ…。店主さんにその作り方を教えてもらうと、湯がいた芋を切って乾くまで外に出して置くと言う方法。


 せっかくの美味い芋を勿体ない!!焼くか煮る以外も覚えてもらおう!そして、美味い干芋を出荷してくれよ!


「芋本体は、これだよ。どのくらいいる?」

「芋は30本もらえますか?それと、良かったら俺が持ってる肉と交換しませんか?」

「え?!いいのか!!助かるよ〜!それならもっと芋を取ってくれよ!」


 何の肉をが良いのか聞くと、言い難そうにホロトリがあればと、言って来た。

 メッチャあります!そこで、何でホロトリがいいのかを聞いたら、一度食べて忘れられなくなったと。この村はログレスに近いから中々手に入らないし、値段も高いらしい。


「ええ!!!ホ、ホロトリ丸ごと……嘘だろ……本当に良いのか?!」

「はい。大丈夫ですけど、あまり騒がない方が良いんじゃ……。」

「!!!!ごめん!つい…。」


 興奮し過ぎの店主さんを宥め、ホロトリを渡す。正直、腐らないけど、腐る程あるんだよ。

 だけど、俺は商人じゃないからな。ここだけって事で頼んます!


「うわ〜………。嬉しい!物凄く!大事に食べる…食べるよ……。」

「まあ、調理の際の匂いは気を付けた方が良いですよ。それでは、辺境に戻る時にまた立ち寄らせてもらいます。その時に干芋出来ていたら買いますから!」

「分かった!!さっき教えてもらった作り方で、早速実践してみるよ!ほんとーーに色々ありがとう!!」


 美味い干芋を期待してるぞ!!

 さあ、思った以上に滞在して鹵たから、早く行かないと!

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