第226話 みんなで夕食会

「シローお兄ちゃ〜ん!!ただいま!!」

「ジェイン、こう言う時はお邪魔しますって言うんだよ?」

「そうなの?シローお兄ちゃんのお家もジェインのただいまのお家なのに…。」

「ジェインお帰り!フェルドもどっちでも大丈夫だぞ?他のお宅に遊びに行く時に気を付ければいいから。」


 お兄ちゃんがしっかりしてて俺ちょっと寂しい…。

 続いてミスリアさんとカレントとメリエナさん……と……………呼んで無いのにギルド長が入って来た。


「あれ?ギルド長はどうしたんですか?必要な事は後でカレントさんに報告してもらいますよ?」

「シロー、そりゃないだろ?!せっかく手土産も持って来たのに!!」

「流石!!ギルド長、リアルも含めて太っ腹!!なら良いですよ〜!座って下さい!」

「お前は〜〜〜!!!」


 とりあえず手土産を頂きます!何かな〜?

 ………え?ナニコレ??茶色い豆と乾燥いんげん豆の房ごとか……?


「珍しい香りのする木の実だぞ!!木の実は煎って砕いて食うらしい。もう一つは中身を出して香りを楽しむらしいぞ?」

「……ギルド長。らしい、らしいって、食った事は無いんですか?」

「無い!!俺も貰ったんだが、食い方が分からんから持って来たんだ。」

「…………………………。」


 ちゃんと確認してから持って来いよな〜。

 まあ、最終的に俺自身でも調べるけどさ〜。


【コレカフの種:コレカフの実の種を高温多湿下で発酵させ、それを乾燥させた物。焙煎後そのまま砕いても食べられる。ポリフェノールが豊富。食用可能】


【ワニラの実:ツル性のワニラの果実。高温多湿下で発酵させ、それを乾燥させた物。中の種は甘い香りが楽しめる。食用可能】


 ??アレ??これって……まさか……カカオか?!クソっ!!焙煎しないとダメっぽいから、今日は手を出せない!!

 もう一つは!この香り!!間違い無くバニラビーンズ!!マジか……。この2つ共、どこで採れたんだ?


「ギルド長!!ありがとうございます!!とても嬉しいです!因みにどこで採れた物なんですか?」

「そうか、良かった!これはログレスのダンジョン産だな!あそこは偶に、果物以外も取れるからな!」


 ログレス!!あそこはフルーツって言うより、スイーツダンジョンなのか?!ついでに卵も採れたら言うこと無いのに!!


 おっと!お土産に浮かれて、他のみんなを待たせちゃいかんな!もう用意出来てるからすぐに出すぞ〜!


「すいません!すぐに出すんで座って下さい。悟郎さーーん!フェルドとの追い駆けっこはまた今度にしな!ご飯にするよ!!」

「ニャッ(わかった)!」

「……シ、シローさん!!今度は無いから、ゴローさんを止めてよ!!」


 フェルドが息を切らして戻って来た。悟郎さんの走りについて行けるのが凄いな〜と思って見てみたら、また、特技が生えてるじゃん?!


「いや、フェルド……。たぶん、悟郎さんとの追い駆けっこのせいで、お前に新しい特技が出てるぞ?」

「ええっ?!ほんとに?!」

「ああ。“俊足”って特技が増えてる。言葉のまま、足が早くなる特技だな。」

「やったぁ〜〜!!!ありがとう!!ゴローさん!」


 きっと、悟郎さんもフェルドが段々速くなって楽しかったんだろう。これからもっと遊べるな!!


「良かったな、フェルド!これからも悟郎さんと遊んでやってくれ!」

「ニャ(うん)!!」

「ええっ?!」


 フェルドが何か言ってたけど、ご飯の用意しなきゃいけねぇからな。さ、さ、ご飯、ご飯!!


「はい、どうぞ〜!サラダ……野菜の皿な!ハウスの新鮮野菜と豆と根菜の甘酢乗せだ。味が付いてるから、そのまま食って下さい。」

「うわ〜!いろんな色があるね!!」

「そうね。……あら。甘いのに仄かな酸味があるわ。それに、お豆が柔らかいわね。」


 子供用に酢は控えめにしたからな!どんどん行くぞ〜!


「次はマウンテンモウの乳を使ったスープです!パンと一緒に食ってみて!」

「………これがマウンテンモウの乳なのか。リーストモウとは比べ物にならない濃厚さだぞ?!」

「そうですね……。ですがボス、きっとこれを取れるのはコイツくらいですよ?間違っても他の冒険者には教えられないし、もし採れる事を知って山に行ったら、西の山で確実に事故が起こりますよ…。」

「……だよな。やっぱりそうなるよな……。こんなに美味いのに……勿体ない………。」


 いや、ワンチャンテイマー系の奴がモウと契約出来たら取れるかもよ?言わないけど。


 続いては、モウのヒレステーキと白菜モドキのクリーム煮添え。寒くなったら市場に増えて来た野菜の1つだ。

 ステーキソースはガーリック醤油バターで、レモンモドキをカットして付けておいた。くどかったら味変してくれ!


「シローさん!これ美味しい!!」

「そうか!良かったよ〜。肉は脂身の少ない部位を選んだ代わりに、濃厚ソースにしたからな!」


 フェルドはガッツりよく食うからな〜。お代わりあるから、たんと食って行けよ!


「お次は、カワウスベニのムニエル、マッシュポテト添え。皮もパリパリで美味いから。もし、試してダメなら残して下さい。」

「カワウスベニだと?!態々捕りに行ったのか?!」

「いや、辺境に来る前に通った川で、たくさん捕っておいた物ですよ。流石に在庫はだいぶ減りましたけど。」


 クンコウギョは、悟郎さんが一番好きな魚の燻製だからとっくに無いし。

 他の魚は型が良かったから、辛うじて残ってた。


「わぁ……。私、乾燥していない、こんなにふっくらしたお魚初めてです!とても美味しい!!」

「添えてあるヤツにもモウの乳を使ってるのか?」

「そうですよ〜。全部お代わりの用意もあるんで、もっと食べたい料理があったら言って下さい。」


 俺がそう言ったら、真っ先にフェルドがスープとステーキとマッシュポテトのお代わりを、ギルド長がカワウスベニのムニエルとスープ、カレントはステーキを追加で食った。

 女性陣は、流石にお腹がいっぱいとの事だったんで、先にデザートを出しておくか。


 林檎の柔らか煮に香り付けのシナモンを入れ、生クリームと一緒にクレープ生地で包んだデザートとススアオンのシャーベット!生クリームは追加で皿に別盛りした。


「はい!女性達には先に別腹デザートどうぞ!」

「シローお兄ちゃん!!これなに?」

「食後の甘い物がだよ!白いフワフワと一緒に食べてみな!」

「はーーーい!!」


 ジェインが、ホイップした生クリームと一緒にクレープを一口頬張る。

 瞬間、目を見開き俺を見て、ウンウン頷いた。

 乳製品皆友達!チーズ大好きなジェインならクリームもハマると思ってた!


「シローおにいしゃん!おいひい!よ!!」

「良かったね〜。感想はいいから先に食べな!」

「………(コクコク!)」


 そして、子供の場合は、クリームが口の周りとほっぺたに付くのはマストなんだな。


「シローさん、どれもとても美味しかったです!ごちそうさまです!」

「本当に…。それにフェルドがたくさんお代わりまでしてしまって。ありがとうございます。」

「大丈夫ですよ!最初からその予定で作ってましたから。……悟郎さんのお代わりに比べたら、可愛いもんです。」


 悟郎さんは、ステーキONマッシュポテトがツボったらしく、もう4回お代わりしてるからね。

 チビは、林檎づくしが希望だったんで、生の林檎、焼きリンゴ、コンポートと揃えて渡したら、今は食い過ぎてヘソ天しながら、キュゥキュゥ呻いている。


「……それでシロー。どうやってマウンテンモウから搾乳したんだ?」

「全ては悟郎さんの働きです。」

「は?!」

「最初は、オスのマウンテンモウに襲われてるメスとその子供を助けたんです。で、メスが怪我をしていたんで回復したら、その間に悟郎さんが話を付けてくれました。だから、俺はただ搾乳しただけなんです。」


 俺が事の次第を伝えると、ギルド長とカレントは呆然とした。

 俺が力ずくで、搾乳したとでも思ってたんだろ?んな事するかボケ!


「それじゃ、他の冒険者では無理だな……。」

「はい、残念です……。美味いのに……。」


 俺が会えていないだけかもしれないけど、メスの個体数が少ない気がすんだよな〜。だからどの道、他の冒険者には難しかったかもしれない。メスを探す事から始めなきなんねぇからな。


「シロー、マウンテンモウの乳を卸す気はないよな?」

「そうですね、今の所ありません。俺だって次も上手く取れるか分からないし、悟郎さんも気に入ってるんで。」


 悟郎さんは、ステーキからやっとデザートに移行して、焼きリンゴのホイップクリーム添えを食っていた。ん?クリーム追加?了解です!


「ゴローは良く食うしな〜…。」

「はい。悟郎さんはとても良く食べるし、それに良く働きますからね!」

「……キュ。」

「はいはい。チビも果物を良く見つけてるぞ〜。」


 ギルド長からカカオ豆とバニラビーンズを貰って、後は卵があればプリンもアイスクリームも作れるのにな…。


 実は、ホロトリの卵を見つけた事が一度だけあった。

 全部で3個。

 ただ、羽化間近だった様で、キッチンでボウルに割り入れ様としたら、中から薄茶色のチビホロトリが出て来てしまった。

 慌てて森に還そうと思ったけど、殻から出た時に俺を見てしまい、刷り込み完了。


 現在、畑で3羽育てている…………。

 調べたら、オス1匹、メス2匹だったんで、将来卵を産んで供給してくれるかもしれないと、淡い期待を抱いてます。

 まあ、まだピヨピヨのヒヨコ達だから、当分先の話だな。


「そうだ、ギルド長。今度ログレスに行こうと思ってるんですが、特に手続きとかいりませんよね?」

「そうなのか?こっちでの手続きはいらないが、ダンジョンに入るなら、事前にログレスのギルドには必ず立ち寄れよ?入場許可を貰ってからでないと入れないからな。」

「分かりました〜!」

「……あそこにはシローもゴローもあとチビも、全員が好きそうな物が沢山あるぞ!ただ、肉類は全くと言っていいほど無いから、行く期間によっては予備を持って行った方が懸命だな。でないと、ずーっと果物か乾燥肉のみになるぞ!」


 うわっ!しょっぱ物が無いとか辛い!肉は各種あるから大丈夫だけど、街で冬野菜を買い足そう。

 今回初めて食べた、白菜モドキが超美味かったんだよな〜!豚バラがあれば、あのミルフィーユ鍋を作りたかった!


 ログレスに行くルートは既に把握してるし、衛兵さん達から貰った地図にあるお勧めスポットにも立ち寄りたい!

 何となく、トラジェフ食いしん坊ば○ざいの気配を感じるが、美味いものに罪は無い。


 準備が出来たら、久しぶりの旅だ。


 そして、お土産の事を考えてるあたり、やっぱり俺は辺境に戻って来る気がちゃんとある。

 いつの間にか、ここがホームタウンになってたんだな。

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