第189話 お手伝いのお願い

「シローお兄ちゃん!これ、ジェインが一人で作ったの!凄いでしょ〜!!」

「そうだね〜!ジェインもいろんな物が作れる様になって凄いよ!それにジェインが編み易い様に、フェルドが細く竹を割いてくれたんだな!フェルドも器用に、しかも均一に割ける様になったな!」

「俺は編むよりこっちの方が上手く出来るんだ!あと、シローさんに貰ったノコギリも、竹の長さを揃えて切るのに丁度いいんだ!」

「………………………………………………………。」


 3人でお茶を飲みながら、作った物を見たりして話していた。

 ミスリアさんは会話が聞こえて無い様で、ずーーーっと編み続けている。職人あるあるの集中力ですかね?


 竹の他に、畑に繁茂してきた、葛の蔦を乾燥させて、ワイルドなカゴを編んでもらった。

 ただ、ミスリアさん的には物足りなかった様で、直ぐにまた竹編みに戻ってしまった。


 う〜ん。これは、万一、竹の供給が無くなった場合の非常手段だったんだが、太過ぎてアレンジ効かないからつまらなかったか…。


 蔦なら、東の山に入る前の道端にもあんだよな〜。


 あと、ジェインも母親の真似をして上手く編んでいるとは思う。

 ただ、まだ手も小さいく、力も弱いから無理をしていた様で、指先を切ったりしていた。


 それを見て直ぐ様、回復をガッツリ掛けた。


 ついでに、2人の為に頑張ってるフェルドの手にも掛けておいた。


 これはダメだ。悟郎さんの手が切れてた時にも思ったが、即治療が必要となる、俺的に放置出来無いダメな案件です。


 多分、フェルドもそれを見て、頑張って竹を更に細く加工してるんだとは思う。


 兄貴いいぞ!もっと頑張れ!


 だけど、お手伝い星人から、お仕事は取れないんで、早急に代わりになる物を探さねばな…。


 そこで雑貨屋と服屋を回って、良い物を見つけた。


 継ぎ当てにも使えない程の様々な端布はぎれを沢山集めて来た。

 新たなお手伝いを発注して、こっちをやってもらおう!


「ジェイン、お手伝いして貰いたい事があるんだけど大丈夫か?」

「うん!お手伝いする!大丈夫!」

「あ、その前にジェイン、お手伝いしてくれるのは嬉しいんだけど、1つ約束をしてくれ。これはフェルドも一緒に聞いておいて。」

「分かった!」

「ジェインもフェルドも、自分でちゃんと出来るか確認してからじゃないと、どんな話でも“やる”って、受けちゃダメだよ。」

「何で〜?」

「もし俺が意地悪して、ジェインが出来無い事を頼んだらどうするの?」


 そう例え話を交えながら話して行くと、途端にジェインの眉がハの字にヘタり、悲しげな眼差しで俺を見返して来た。


「…シローお兄ちゃん、ジェインにいじわるするの?」

「しないよ!俺は絶対にしないからね!!でもね、中にはいじわるな人もいるから気を付けようね!ってお話をしてるんだよ?分かった?」

「うん、分かった。………シローお兄ちゃんもいじわるされた事があるの?」

「あるよ〜。いっぱいあるよ〜!」


 いじわるって言葉が可愛く感じるレベルのヤツもあったしね〜。ジェインには絶対言わないけどね〜。


「もし、いじわるされたらどうしたらいいの?」

「いじわるじゃなくても、お母さんかお兄ちゃんにお話をしような。ジェインが嫌だなって感じたり、どうしてこんな事されるのか分からなかったら、一人で考えないで、必ずお話するんだぞ?」

「分かった!シローお兄ちゃんに言ってもいいの?」

「もちろんだ!メリエナさんでもカレントおじちゃんでも、近くにいる仲良くお話で出来る人に話すんだぞ?でも、ジェインが大人になるまでは、お母さんにも話そうな!」


 頼りないけどな〜。寧ろ、母ちゃん用に相談要員が欲しいよな…。

 それに、集中するのは良い事だけど、この人、他が蔑ろになるんだよ…。

 2人には、是非とも反面教師として学んで欲しい。


「…あの、シローさん。俺の話も聞いてくれる?」

「もちろん!良いぞ!あ、でも俺が居ない時はあんまり待ち過ぎるなよ?カレントおじちゃんには聞き難いか?」

「カレントさんは…あんまり喋らないから…。偶に畑で水撒きしたり、ご飯用の野菜を採ってる時に、後ろで見られてて何か用事かな?って聞いても“頑張れよ”って言うだけで、良く分かんないんだ…。」


 アホーー!!!カレントのアホーーー!!!


 見守り下手にも程があんだろが!

 しかも、テメェに黙って後ろに立たれたら、単なるホラーだろうが!!


「ジェインもあんまりお喋りしないけど、会うと頭ポンポンしてくれるの!それで、メリエナお姉ちゃんのお話をしてくるの!」

「やだ!何それ怖い!!何をアイツは話してんだよ!!」

「?メリエナお姉ちゃんも、昔はジェインみたいに、ちっちゃかったんだぞって言ってた!」


 メリエナさんに相手にされないからってアイツは…。もう少しなんとか出来んのか!!


「良〜く分かったよ。カレントおじちゃんには俺からお話しておくな!あ!それでジェインに頼みたいお手伝いはコレなんだ。今、詳しく説明するな!」

「はーい!」

「この中に色々な布が入ってま〜す。」


 集めた端布はぎれをテーブルに出して広げる。


 異世界の布地は、色柄に乏しいけど、これだけ数を集めれば、それなりに見えなくもない。

 そして、ジェインが望むなら秘蔵のターメリックで、色を……付けるよ!!


「わ〜〜!布がいっぱいだよ!お兄ちゃん!」

「細かい布ばっかり……。シローさん、これで何をするんですか?」

「今、ジェインがやってる事と違うから、難しかったら無理しないでな。」


 試しに同じ位の太さの端布はぎれを結んで長い紐状にする。


 それを、作っておいたかぎ針で編んで行く。


 何故、出来るかと聞かれれば、自分のセーターを繕った事があるからだよ!


 最初から一着編みあげた事は無くても、最低限の知識はあるんで、丸いコースターもどきなら直ぐに作れる。本当に日本の百均は何でもあって助かったよな〜。


「わあ〜!シローお兄ちゃん凄い!」

「本当だ!俺、こんなボロ布をどうするのか、全然分かんなかったよ!」


 フェルドは端布はぎれを見た時、滅茶苦茶疑わしい目をしてたもんな…。

 たが、これも俺が知ってる最低限だから、どう発展させるかはジェインにお任せだ。


 こう言った手作業が嫌いでなければ続くだろうし、ハマればミスリアさんの様にアレンジし出すだろう。


 それにジェインはまだ5歳だ。


 もしかしたら、父ちゃんみたいな狩人になるかもしれないし、先は誰にも分んねぇからな。


 フェルドは………苦労性の気配がすんだよ。


 今も2人を優先して、自分の事は後回しにしてるからな〜。


 それに、ガタイが良くなりそうで、直ぐに追い抜かされんじゃないかと思ってる。

 畑の一区画を区切って、好きにして良いぞと言ったら、速攻、芋と豆だらけの畑に仕上がっていた。


 何でこのチョイスなのかを聞いたら“好きだし、腹に貯まるから”と、育ち盛りの元気な返事が返って来た。


 あと、フェルドだけには、何かやりたい事が無いのかを聞いた。

 遠慮ボーイは、2人の面倒を見るばかりで、何がしたいのかまるで分からなかったから。


 そうしたら、“狩人になりたい”って、はっきりと言ってくれた。


 父ちゃんからは、矢じりの作り方、糸の結び方等の狩りに行く前にやらなきゃいけない事は教わっていたそうだ。


 10歳になったら一緒に森に行って、実地を教わる約束だった。


 それは叶わなくなってしまったが、狩人組合に父ちゃんの仲間がいるだろうから、試しにちょっと声を掛けてみるか。


 狩りか………。弓矢でバシッと獲物を狩るのもカッコいいよな〜。俺も一緒に教わろうかな〜。


 ロレンドさんが弓を使ってるのを見た時、前田○次も剛弓を引いてたよな〜って(漫画で)思い出して、ミーハーヤル気スイッチが入ってんだよ。


よし…ゴリラにバレると五月蝿そうだから、今度こっそり狩人組合に行ってみよう。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る