第190話 新しい受付嬢
冒険者ギルドに来ている。
受付カウンターには、ゴリラが勘違いして採用した、新人なのにベテランの風貌を持ったマダムが2人増えていた。
……いや、2人共に独身だと聞いてるからマダムでは無いんだろうけど、どうにも見た目がマダム呼びに相応しい雰囲気、それと決して口にはしないが、全体的に、こう…ポテッとふくよかなんだよ。
例えて言うなら、子供も手が離れ時間に余裕が出来たんで、パートに復帰した主婦のオーラ?と皮下脂肪を纏っている。
まあ、ゴリラの選抜したメンバーだから、俺は詳しく知らないし、今後も必要が無いので関わらないだろう。
……って事で、今まで通り受付はスルー決定。
「おう。シローおはよう。」
「おはようございます。丁度良かった!カレントさんにお話があるんですよ。」
俺がそう言った途端に固まるカレント。
また、何か心当たりでもあるのかよ?
「………何だよ、話って。」
「フェルドとジェインの事なんですけど、会ったら最初に声を掛けてあげて下さいね。」
「?声なら掛けてるぞ?」
「最初に!です!!何でも良いからカレントさんが来た事が分かる様に、姿を見かけたらすぐに声を掛けて、様子を見守るのはそれからにして下さい!」
ちょっと納得が行かないって顔をするなよ!
見た目だけなら、お前が辺境で一番マッドサイエンティストなんだからな!
「……俺が何かやっちまったか?」
「何かって言うか、気付いたら後ろにいてビックリした事があるって、フェルドが言ってましたよ。見知らぬ子供なら別ですが、家にいる子供なんだから、下手でも話してやって下さいよ。」
「………下手って。」
「カレントさん、そこまで子供と上手く話せてないでしょう?それと、子供の口は軽いですからね。喋る事は他で話されても良い事だけにして下さいね。」
俺の言葉でハッと息を飲み、自分が何を喋ったか記憶を辿っている様だ。そんな考える程あるのかよ?
「……な、何か聞いたのか?」
「ジェインからは、カレントさんが、メリエナさんも昔はちっちゃかったんだぞ〜っ、俺の後をいつも歩いて来て可愛かったんだぞ〜って、言ってた話を聞きましたよ〜。」
そう言うと、やおら頭を抱えて下を向いた。
他にもネタは仕入れてあるが、この位にしておいてやろう。
「俺は聞かなかった事にしますから、今後はご注意下さい。あと、2人への声掛けよろしく!」
「……すまない。分かったよ。」
「メリエナさんの耳に入ってないといいですねー!」
「!!!!!」
入ってると思うけどな!
まあ、黙ってるって事はまだセーフかもしれないし。俺も気を付けよっと。
それに今日は、ロレンドさんとトラキオさんもギルド長に呼ばれて来てるはずだ。……何だろね?
「シロー!来たか!新しい受付の人にはもう会ったか?」
「……話してはいませんが、見ましたよ。ギルド長のお嫁さん候補ですよね?」
「はぁ?ち、違うぞ!!俺の勘違いで雇った人達だが、そんな気持ちで雇った訳じゃないからな!」
「そうなんですか?お似合いな気がしましたけど。」
特に右手にいた人。肝っ玉母さん風で、ゴリラのボケもカバーしてくれそう。
ロレンドさん達も新しく入った受付の人を見ていたのか、温かい眼差しでギルド長を見ていた。
「ギルド長、それより今日はどんな用件で呼ばれたんですか?」
「ああ、南の山のバトヴァル伐採作業のこれからについてなんだ。皆の協力あって、根はまだ残っているが、地上に出ている木の方は、ほぼ伐採が完了したと判断された。ヒュージェ達を含む残りのギルド員も、まもなく山から降りてくる予定だ。今後はシローに持って行って貰った小屋を起点に監視と調査、根の処理を少しずつしていく事に決まった。今までの協力、本当に感謝する!ありがとう!」
やったー!これで、また自由に動けるな!
南の山も解禁になるのか?俺の果樹園(仮)に行かなきゃいけないんだが…。
「ギルド長、南の山も解禁ですか?それと、もう一回山に登る許可を下さい!まだご褒美フルーツ採ってないんです!」
「おお、いいぞ!入山許可票を渡すから、必ず携帯して行くんだぞ?あと、南の山は低層地帯のみ解禁になった。まあ、もともと山へ登るのには許可が必要だったんだが、今後は入山管理がより厳しくなる予定だ。それと、薬師組合から薬草納品の代金をこっちに回してもらってあるんだ。帰りに忘れず受付で受領して行けよ!」
「はーい!ありがとうございまーす!」
「ああ最後に、今回の皆の協力報酬の支払いは、山から全員引き上げてからするからな!改めて声を掛けるから、もう少し待ってくれ。」
「「「分かりました。」」」
そう言えば、好きな報酬を考えておけって言われてたな…。
美味い米とか、魚介類とかも行けるのか?
他にも何種か考えておかないとな…。
「それと、ロレンド、トラキオ。シズナエルの件はこっちにも報告が上がって来てる。一緒に組んでるお前達の問題だが、最近アイツがこういった問題を起こす事が多い。正直、2人の事だけを考えるなら改善が望めない場合は、ギルド側はもう一緒に組まない方が良いと思ってる。」
「…はい。その事は、山でも2人で話をしました。シズナエルはここ最近特に……その…………嫁に行きたいらしくて、冒険者活動と言うよりは旦那探しに熱が入ってました。」
「…………この前、ちょっと続いた男に振られてから、余計に酷くなったな。」
うわぁ……。ハラキリ最悪。
こんな面倒見が良い幼馴染に迷惑掛けて、その原因が旦那探しかよ。
「それはまた……。やるなとも言いづらいが、お前達の事を全く考えていない自分勝手な行動だし、嫁ぎ先が見つかったら、冒険者はさっさと辞めるだろう。どちらにしても、お前達に迷惑が掛かる事も考えられないヤツなら、お前達も割り切った判断をした方が良いと思うぞ?」
「はい。そのつもりです。」
「…………流石にな。子供の頃からの付き合いですが、お互いにもう子供では無いので、これ以上俺達が面倒を見る事は出来ません。」
きっと、ハラキリは面倒を掛けてる自覚も迷惑を掛けてる自覚も無いんだろう。
今まで許されていたんだから、今度も大丈夫としか思ってなさそうだ。
そんなに焦って婚活しても、逆に逃げられそうな予感しかしないけど…。
あ!!でも、山でアイツの飯を食った勇者なら、ワンチャンあるかもな!
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