第151話 迂闊なお願い
「さて、先ずは確認をさせてもらいたい。アンタが討伐したダギアルバードは全部で何体で、その内バトヴァルに冒されていた個体の数はいくつだい?」
「討伐数は全部で143羽。バトヴァルに冒されてたのも143羽。その内の1羽は、先にギルドへ提出したので、現在は142羽保管してますよ〜。」
早く手放したいな〜。やっていいなら、俺命名“ギルド投げ(全出し)”したいわ〜。
ふふふ〜。あれ、結構好きなんだよな〜。
一度に全部出すと、こんなに獲ったんだどーーーって感じを味わえて。
「……そうかい。全部かい。それと、討伐した跡はどんな状況かね。浄化が必要かもしれないからね。」
「あー……浄化は不要です。俺がもうしました。」
「………アンタが浄化をした?……なんでだい?」
「ダギアルの木に万が一でも、悪影響があったらいけないと思いまして…。」
来年は、また真っ赤な実をたわわに実らせて俺を出迎えて欲しい!
その為には、今から南の山に行く度に、回復魔法をしっかり掛けないとな!
そして、クソ鳥に負けないように
「……ダギアルの木の為だって言うのかい?」
「もし、血みどろのまま地面を放置して、来年実らなかったらどうすんですか?!!」
湯○婆は、当たり前の事をなんで聞いてくんだ?
南の山に生えているのがあの一本だけではないと思うけど、レイニアと同じ様にダギアルの実を主食としている敵がいる以上、油断は出来ない!
であれば、例え多く生えている中の一本であろうと無駄に出来る訳がない!
「…すみません、ランディエーヌさん。シローは基本こう言うヤツなんです。自分の好きな食い物にはとても忠実なんで………。」
「意味が分らんね…。」
ふん!!もしこう言った話しをするなら、今後、俺は
無理解な湯○婆とゴリラに言っても、詮無いだけだ!
早く土地借りて、畑を良く見せて貰いたいなぁ〜!
「……とにかく、現地の浄化が要らない事は分かったよ。あと、引き続きこちらでもダギアルバードをもっと良く調べたいから、後で5羽ほど出して貰えるかい?」
「分かりました〜。」
「アンタが持ってる全てのダギアルバードは、後で色を付けてきっちり買取精算をするからね。」
「そうですか。分かりました。」
色付きのゼルか………。山吹色のお菓子を頂くシチュエーションで貰いたいな……。袋じゃなくて、箱に入れて下さいって言ってみようかな?
あとは何か欲しいもの無いか、悟郎さんの希望を聞いてみよう!
「今回の調査協力については、アンタの望む報酬を出すと御領主様から言われているよ。何が良いか考えておきなね。」
「ゼル以外でも良いんですか?」
「ヒヒヒッ!土地でも身分でも何でも言ってみな。無理な希望でない限りお受け頂けるよ。」
土地と身分は絶対にノーサンキューです。
「これからの方針を説明するね。薬師組合では、引き続きバトヴァルの解毒方法の解明及び解毒薬の生成に注力するよ。冒険者ギルドは、狩猟組合と協力して、南の山でダギアルバードの討伐。それと、死んでいるダギアルバードを発見した場合の回収。また場所を問わず肉食の魔物で、通常と異なる異常行動をしている個体の討伐。討伐した個体は全て薬師組合で毒の有無を調査するよ。些細な変化でも構わない。気付いた事は共有して、皆で精査したいから必ず報告すること。」
「冒険者ギルドでは、別働隊を編成してダギアルバードが営巣している岩山地帯への調査に向かわせる。シローは先にそっちへ行ってもらうので、ギルドに戻ってから他のメンバーと顔合わせをするからな。」
えぇー?!誰かと一緒に行くのか?!
資料に書いてあった、最速の山男が来るのかな?
「アンタは別働隊に同行して、その場で可能な限り鑑定をして欲しいのさ。あそこは低木地帯と違って日帰りで戻れる場所じゃないからね。薬師組合から、魔力回復薬を支給するからしっかり頼んだよ。」
「……魔力回復薬は、原材料に何を使われていますか?虫系は入ってますか?」
「…………何でそんな事を聞くんだい?」
「内容物によっては、使いたくないからです。」
「ヒヒヒッ!なんだい。虫嫌いなのかい?だったら安心しな。魔力回復薬には入ってないよ。一緒に支給する予定の体力回復薬には使ってるけどねぇ。」
だからぁ!!何で虫を入れるんだよぉ!!
もういいよ!俺は自前の濃縮飴でも食うから!!
「同行する冒険者は、山登りに慣れてるし、見た目と違って体力あるヤツ等ばっかりだぞ?お前はヒョロっとしてるから、一緒に行くからには嫌でも体力回復薬を飲めよ?」
「ありがとうございます。ですがご心配には及びません。」
「ヒヒヒッ!まあ好きにしな。きっと、その時が来たら頼らざるを得なくなるだろうよ。」
俺にそのX-Dayは来ない!!
だが、それより1つ心配な件が…。
「ギルド長、岩山地帯って気温は低いですか?」
「ん?ああ。こっちより寒いぞ?専用の装備もしっかり用意するから安心しろ。」
「それじゃないだろ?アンタが気にしてるのは。今回は、その従魔は街に置いて行きな。岩山地帯は、デザートキャットとツリードロワには寒過ぎるだろうよ。」
くっ!やはりか…。
しかし、ゴリラと湯○婆では、知能の違いがはっきり出るな。
きっと異世界でも、まだ人類に到るまでの進化の途中なんだ。あと400万年くらいはきっと時間が掛かるんだから、しょうがないじゃないか…。
「ありがとうございます。分かりました。」
「いいんだよ。無理を言ってるのはコッチだって自覚はあるからねぇ。だけどね、それを通してでもあの毒物は何とかしたいんだよ……。」
「…分かりました。あと、もう1つお願いがあります。」
「なんだい?」
「ダギアルバードから取り出した、バトヴァルを見せて下さい。」
「……いいよ。ただ、ここへ持って来る事は出来ないから、アンタに保管場所まで来てもらうよ?」
「いいですよ。行きます。」
「ヒヒヒッ!覚悟を決めて来なよ?」
??何の覚悟がいるって言うんだ?
バトヴァルの毒が超衝撃的なんだろうか…?
ギルド長には先に帰ってもらい、俺は後で合流することに。
打ち合わせをしていた部屋の隅では、
アイツも何か無理な頼みごとでも言われているんだろうか?
俺は、湯○婆の先導で部屋を出て、バトヴァルの毒を見せてもらいに行く。
そして、覚悟の意味をすぐに理解した。
さっき迄の科捜研気分があっという間に霧散したからだ。
しまった!!まだ、破滅へのカウントダウンが継続されていたのか!!
しかも臭いが更にエグい!!今すぐ防護服を寄越せ!!
これ、黄色と黒の例の警告板で、立ち入り規制されるべき場所だろ?!!絶対、バイオ的な何かがハザード状態だよ!!
くそぉ!!色々言いたいけど、口を開くのも何か入って来そうで嫌だ!
あぁ!!悟郎さんっ!!!俺を置いて戻らないで!!
もう、悟郎さんの横腹に顔を埋めて何とかならないかとか思わないからっ!!
うゎぁぁ!!しかも何か聞こえて来た!!
ギャギャ、ギチギチ、チューチュー、ガサガサと、単体でも耳が汚染される音が、た、た、たくさん?!
アンタ、全然イカれてもマッドでも無かった!!
俺が
この先にガチでマジモンのヤツが絶対にいるよ!!
ダメだ!!この部屋に入る前に魔法で囲おう!
パニクってねぇで、もっと早く使えば良かった!!
俺のバカッ!!
「………ヒヒヒッ!!だからアタシが言ったじゃないか。覚悟を決めなよって。虫嫌いのアンタには身の毛もよだつもんが、この扉の先にタップリあるよぉ。ああ!こんな時なのに楽しいねぇ〜!」
お、俺で楽しむってコレだったのか?!
クソ湯○婆の悪趣味!!!
坊に嫌われてしまえぇぇぇ!!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます