第112話 クイーンのローヤルゼリー

「くそ!やっぱり魔法か!」

「はい、すいません。」

「……念の為に聞くが、レイニアビーの蜜を売る気…「ありません!」…………わかったよ!」


 今度、いつ採る事が出来るかも分かんない物を売れるかよ。

 気安く売って無くなったら、俺が悟郎さんに責められるだろ!


「クイーンがいるとは思ってなかったんですが、巣の中に蜜とは違う、薄い黄色の脂みたいのは無かったですか?あったら見せて下さい。」

「クイーンの蜜の事か?ちょっと待ってろ。」


俺がそう言うと、ギルド長が目配せして、アイツイカれクソマッド売却担当に瓶に入った、クイーンのローヤルゼリーを持って来させた。


【クイーンレイニアビーのローヤルゼリー:レイニアビーが女王の為に、集めた花粉と蜜を体内で合成し、分泌された物。酸味が強く、そのままの摂取には向かない。必須アミノ酸や各種ミネラル等、豊富な栄養素を含んでいる。健康維持、老化抑制効果等の効果が認められている。食用可能(人族の場合 5歳以上〜)】


 やっぱり同じ様な成分っぽいな。

 例え栄養が豊富だったとしても、コレはいらない。

 味もそうだが、ヤツ等が育つ為にどっぷり全身浸かっていた物なんて……!

 もしかしたら、味に違いがあるかもと思ったけど、同じであれば確認のみでOKです。


「………ありがとうございます。こちらも売却で大丈夫です。」

「……そうか、良かったよ。女王の蜜は、効能がいいんで、薬師組合から是非とも売ってほしいと言われてたんでな。」


そうでしょうね。是非とも、お役立て下さい。

そうなると、やっぱりハチミツ以外は売却が決定だ。


「では、全て売却でご精算よろしくお願い致します。」

「本当にいいんだな?レイニアビーの巣は、余す事なく使えるし、幼虫もクイーンも、素材として色々使い道が多いが?」

「参考までに聞きたいんですが、どういった物に使われるんでしょう?」

「主にポーションだな。で、今回みたいに数が多い場合は、一部珍味として加工される。巣は、生活用品に加工される。」


 はい!!!今の発言でお分かりだと思いますが、皆様には、異世界ポーションの危険性を、更に良くご理解頂けたかと思います。


 ホントに何を混ぜてくれちゃってんだよ!

 しかも、珍味とか恐ろしい事を言いやがって!!


「ねぇ、ホントにいいの?女王の蜜とか幼虫とか、自分で持っていても使い道があって、とても良いものよ?」

「シズナエル!せっかくコイツが売却するって言ってんだから、余計な口を挟むなよ!」


 ギルド長が、俺の『やっぱり、売るの止めます。』発言を警戒してる。

 ハラキリは女王の蜜にある、老化抑制効果でも期待して言ってんのか?


「……例えばの話しですが、とても効果のある蜘蛛の分泌液が手に入ったとして、貴方は使いますか?」

「使う訳ないでしょう?!!あと、ヤツ等の名前は口にしないでって、さっきも言ったじゃない!!」


 ……俺、ちょっと分からなくなって来たんだが、コイツって、気遣いが出来ないんじゃなくて、実は物凄いバカなんだろうか?


「ギルド長、全部売却で気持ちは変わりませんから、ご安心下さい。」

「おお!すまんな!デカ過ぎたせいで臨時の解体要員を募ったからか、ギルドに素材が有る事が既にバレていてな。色んな所から売って欲しいと、希望が殺到してたんだよ。…………それなのによぉ、ぶん投げた誰かさんが、中々ギルドに顔を出さないでもんだから、売るに売れなくて困ってたんだよ!!」

「………それは重ね重ねご迷惑をお掛けして、大変申し訳ありませんでした。俺はこれで帰りますので、すぐ、ご希望の皆様にご売却なさって下さい。」


 じゃあ、俺はもう帰りまーす。

 さっきから、マントで首が締められて、そろそろきついんだ。


「いやいやいや、待て待て。スルッと帰ろうとするんじゃねえよ!こっちの話はまだ終わってない!今日は途中で逃さないって最初に言っただろうが!」

「えぇーー?!まだ、何かあるんですか?ちなみに、俺の用はもうないですよ?」

「こっちにはあるんだよ!」


 えぇー?何があるんだよ。

 あまり長くならない様に、お願い致します!

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