第111話 レイニアビーの巣の中身

「おお〜!やっと来たか噂の冒険者!!お前、ギルドに来るのを忘れてただろう!!」


 ええ?!!何?その寒い呼称は?!!

 勝手に付けんじゃねーよ!


「お、おい、マントにデザートキャット以外のヤツがいるぞ?!!従魔が増えたのか?!!」

「なに?!!」


 おい!お前イカれクソマッド売却担当!いい子で寝てんだから静かにしろよ!!


「お二方とも、お静かに。俺の従魔の眠りを妨げないで下さいよ。もう一匹は、昨日従魔になったばかりなんです。西の山で会いました、ツリードロワのチビです。よろしくお願いします。」


 はい。確かに紹介しましたよ。

 正確には、悟郎さんのペットだけど、それだと話がややこしくなりそうだからな。


「……………ツリードロワ…。」

「お前はよぉぉぉーーー!!まだ、レイニアビーの件だって、片付いてないってのにぃぃぃーー!!!」


 うわ!なんだかギルド長が、突然壊れた。

 静かにしろって、言ったばっかなのに!


「じゃあ、レイニアビーから行ってみましょうか!」

「行ってみましょうかじゃねぇよ!!とんでも無い物を置いてトンズラしやがって!!しかも巣を開けてみれば、更に厄介なヤツまで居やがったしよぉ!」

「そうでしたか…。それは存じ上げず大変なご苦労をお掛けしてしまい、誠に申し訳御座いません。ところで、今回お預けしたレイニアビーの素材は全て売却致します。ご面倒をお掛けしますが、その様にお取り計らいの程、よろしくお願い致します。」


 虫はいらんねん。

 さあ、チャッチャと精算しましょうか!!


「……ボス、コイツに言っても無駄ですよ。詳細を確認させて、先に精算した方が建設的です。」

「………くそっ!たが、今回は途中では絶対に帰らせんからな!!わかったな!!」

「えぇーーー?!」

「ええー?じゃねえよ!お前が討伐した魔物だろうが!!」

「正確にはジャイアントレイニアビーは、悟郎さんが討伐したんですよ?」

「お前の従魔だろうが?!!だから、その結果もお前に帰属するんだよ!!」


 はぁ…。美味しい昼めしの代償か……。

 何を確認させようって言うんだよ。

 もし宿敵ムシ類だったら、俺のこの手が光って唸るかもしれんから、覚悟はしておけよ!


「まず、お前が置いて行ったレイニアビーの詳細だ。通常のレイニアビーの討伐数が328匹、ジャイアントレイニアビーが1匹。更に巣の中にいた幼虫が517匹、そして最後に巣の中に居た、クイーンレイニアビーが1匹。以上だ。」

「……おお!随分いましたね!」

「……あぁ。それはもう、巣のレイニアビーが全て羽化していたらと思うと、背筋が凍ったほどだ。中にいたクイーンが若い個体だった様で、産卵数が通常よりも多かったんじゃないかと見ている。」


 ちゃんと駆除しないから、数が増えんじゃねーの?

 ギルドで、もっと討伐の依頼出して仕事させろよ!


「ただ、巣の解体をした結果、一点、どうしても分からない事があった。」

「何ですか?」

「レイニアビーの蜜が全く無かった事だ。あれだけの巣で、しかも成体・幼虫の数から見て、結構な量の蜜が蓄えられ、巣と共に採れておかしく無いのに、ただの一滴も無かった。」


 ああ。そうでしょうね。俺が持ってますから。

 フルーティーなハチミツで、とても美味しく頂いております。


「……巣に蜜が無いとは……。それは可笑しな事もあったもんですね…。」

「……正直に言え。」

「何をでしょう?」

「討伐した物の所有権は、全て討伐者にある。お前が得てもなんの問題もない。ただ、蜜だけをどうやって巣から採ったのかを知りたい。今後のために。」

「…魔法ですよ。他の方では難しいかと思います。」


 巣から直接、蜜だけ抽出しましたから。ハチミツは悟郎さんもチビも食うから売りません!

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