第110話 感謝と忠告

「今日はごちそう様でした!どれも、とても美味しかったです!!」

「満足してくれたなら良かったよ!また、いつでも来て頂戴ね!!」

「ああ!本当に遠慮なく来てくれ!勿論、従魔と一緒で大丈夫だからな!」


 来たいのは山々なんですが、奢ってもらったから、値段が分からない…。

 来店して、一品しか頼めない様なお値段だったり、しないよね?ね?!


 さて、そろそろお暇しようかと思ったその去り際、ふと、おやっさんが俺を見て眞面目な表情になった。


「…………こんなデカい図体しててもよ、トラキオは俺達の大事な一人息子でな。治療院から呼ばれた時、大慌てで二人ですぐ駆け付けたんだ…。そこで治療士に聞いたら、街につく前に適切な治療魔法を掛けたお陰で、なんとか助かったんだと聞いた。シズナエルにしてもそうだ。ドエルのヤツがお前に声を掛けたのは偶然かもしれないが、魔法を使って治してくれたのはどんな思いがあったとしても、お前の意思に寄るものだと思ってる。……治療士の中には費用を釣り上げる為に、治療を渋ったりするヤツもいるんだ。それなのにお前はドエルからの礼も受け取らず、コイツ等に請求するでもなかった。」


 おやっさん!それ、審議の程は調べ様が無いんだけど、俺が原因だったかもしれないとそう思ったからなの!

 だから気にしないで!俺が気にするから!


「物や金だとお前は受け取らないだろうって、ドエルから聞いてな。こんなもんじゃコイツ等を助けて貰った礼には程遠いんだが、俺達で出来る精一杯の感謝の印だ。今日は来てくれて、本当にありがとう!」

「シロー。あたしからも礼を言わせておくれ。見ず知らずのこの子達を助けてくれて本当にありがとう。でも、次からは必ず対価を受け取るんだよ!例えそれがお前さんの善意だったとしても、自分を安く見せる事に繋がるからね!悪いヤツや身勝手なヤツ等から、良いように使われない為にも、必要な事だから覚えておくんだよ!」


 …………そうか。対価か。

 魔法って目に見えないけど、使った結果はしっかり出るし残るもんな。

 消費した魔力にしても、俺的には時間が経てば勝手に戻るもんだから、別に良いやと思っていたけど…。


「分かりました。次がある様なら治療院で定められた費用を請求します。まあ、治療魔法が使えても、俺は治療士では無いから、そうそう起こらないとは思いますがね。」

「人の噂は受取り手の都合で、いくらでも変わってしまうよ。シローが“タダで治療をしてくれる”って、思い込んだヤツがいないとも限らないならね!気を付けるんだよ!」

「はい。」


 おかみさんの忠告は、スッと俺に入って来るな…。

 きっとこの家族は、互いを思い合った優しい関係なんだろう。

 俺が何も受け取らなかったばかりに、色々と気を使わせてしまったな…。


「よし!じゃあ、次はギルドに行くか!」


 ???ギルドになんか用でもあんのか…?


「忘れてるかもしれないから、今日の食事が終わったら必ず連れて来てくれって、ギルド長に頼まれていたんだよ。」


 ああ!!今思い出しました!!

 そう言えば、蜂の巣とか色々ぶん投げてたわ…。


「……………あんなに大きな巣、初めて見た。中に驚きのヤツも入ってて、更に驚いた。」

「あ、詳しくは大丈夫です。はい。」

「…………いや、幼虫じゃないのが入ってたんだ。それについては、ギルドで詳しく聞かされると思う。」

「……もう、帰りたい…………………。」

「何言ってるのよ!あれだけの大物仕留めておいて、そのまま詳しい話もせずに行方を晦ますなんて、どうかしてるわ!御領主様にお褒め頂ける働きなのに!」


 うるせぇ、ハラキリ!

 なんで、一々褒めて頂かなきゃならねぇんだよ!

 テメェは犬か?その御領主様とやらに、グッガールってされたいのか?


「…………シズナエル、お前は御領主を推し過ぎ。」

「良いじゃない!素敵な方なんだから!」


 おい、ハラキリ!

 今、お前に対する俺の好感度メーターが0からマイナスに振り切れたぞ。もう黙れ!

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