第108話 食後の情報収集

「はぁぁ〜〜〜!!美味しかったぁ〜!!お腹いっぱいで幸せ〜〜!!」

「本当だな!いつ来ても美味いけど、今日は豪華でより美味かった!魚まで出て来て驚いたわ!」

「……親父が滅多に作らない、特別メニューがいくつも出たから…。俺も初めて食ったのがあった。」


 うん。お三方の食いっぷりは凄かったよ。

 お陰で、俺も遠慮なくしっかり食えたからな。


 それに見ろよ。この悟郎さんの腹を。


 今日は、もう肩に乗るの無理っつて早々にマントのフードに入ってんだからな。

 しかも、いつもより後ろにマントが引っ張られて、首を圧迫されてるしよ。


「あぁっ〜〜!!可愛いい従魔達がフードに潜っちゃった!撫でさせて欲しかったのに〜!!」

「今日は、腹いっぱいだからもう寝るそうです。」

「あ!それも聞きたかったのよ!あなた、従魔と会話出来るの?」

「はい…。普通は出来ないもんですか?」


 出来ないの?

 そもそもテイマー系の人を見掛けないから、全然分かんないんだよな。


「それについては、俺達も余り詳しくはないんだ。従魔を従えてる冒険者自体が少なくてな…。この通り、俺達には従魔がいないしよ。」

「そうでしたか。」


 デカ盾兄ちゃんが、済まなそうに答える。

 やっぱり、テイマー自体が少ないんだな。


「……俺、デザートキャット初めて見た。可愛い。」

「それを言ったら、ツリードロワもでしょう?西の山の緑地帯にいるって話しは聞いた事があるけど、本物を見るのは初めてよ!こんなに可愛いなんて知らなかったわ〜!」


 ふ〜ん。この街からの距離感でも初見か…。

 まあ、チビは小さいが過ぎるからな。

 あの広い西の山で、コイツを探して来いって言われても絶対に嫌だわ。丁重にお断りするだろう。


「その辺は、ギルド長かカレントさんの方が知ってるかもしれないな。」

「そうね……。美味しいお店ならいくらでも教えて上げられるのに。」

「……シズナエル…。そうじゃない。」


 剣兄さんの静かな突っ込みに俺も一票だ。

 それに、ここより美味い店とかあんの?

 流石に店内では、そんな事聞けないけどさ。


あながち、違っても無いです。俺も自炊をするんで、知らない食材や調味料には、興味がありますから。」

「うそっ!!あなた料理出来るの?!美味しく作れるの?!」

「はい……?」

「ははっ!悪いな。シズナエルは食う専門だからか、料理が驚く程にダメでな…。…ホントにダメでよ…。アイツの理想が、うまい飯を自分で作って好きなだけ食う事なんだ。それなのにホントに……ダメでな…。そんな訳で、料理出来るってだけで君が羨ましいんだよ。」


 この姉さん、本当に残念…。

 あんなにダメを連呼されるなんて、きっとこの兄さん達はその料理の犠牲になった事が……。

 あ、二人して遠い目をしているよ。


「…そうでしたか。俺も料理をする関係で、欲しい香辛料があるんです。なのでそう言った物を取り扱っている街の情報があれば助かります。」

「………なら、南のランティエンスにあるかも……。あの街の料理、とても色んな匂いがしてしかもみんな辛かった…。でも遠い………。」

「…ランティエンス…。」

「俺達も行った事があるが、順調に進んで10日は掛かるだろうな…。」

「途中にあるダンジョンにきっと引っ掛かるわよ!実入りも良かったし、何より楽しかったわ!」

「えぇ!?ダンジョン?!!」


 ダンジョン!俺のトラウマを誘うキーワードだぞ!!それを楽しいとか、この姉さんマジで意味わかんない!


「ああ!そう言えば通るな!さっき話したランティエンスに行く途中、丁度中間辺りにログレスと言う街があってな。その街が、近くにあるダンジョンの拠点となっているんだ。攻略目的や単に稼ぐ為に、色んな冒険者が集まってる街なんだよ。」

「……従魔も見た。可愛くないやつだけど…。」

「チビちゃんもいるしそう言う意味でも、あそこのダンジョンは潜る価値があるんじゃない?」


 はい??

 ダンジョンなんて、俺にしてみれば不条理な害悪スポットに他ならないんですが?


 それにチビがいると潜る価値が上がるとか、その理由が全く持って意味不です!

 俺が無言で???を飛ばしていたら、ハラキリ姉さんが話しを続けた。


「いい?そのダンジョンはね、フルーツダンジョンなの。ダンジョン内の木には、見たこと無い様なフルーツが沢山生っていて、木の実も豊富で、薬草や野菜も採れるし、とにかく採取に向いてるダンジョンなの!しかも、街ではダンジョンで採れた物を加工して、美味しいジャムやお菓子が沢山!!私、年取ったら絶対にあの街に移住するわっ!!!」


 最後のシャウトは、ハラキリ姉さんの老後の計画ですよね?俺、聞いてませんから。


 しかも、不用意な美味しいジャム発言により俺のフードに入っていた、眠れる獅子を起こしましたね!!


「ニャフゥ(行くよ)!」

「行かないよ!何言ってるの悟郎さん!」

「ニャウニャ(平気)!」

「平気じゃないよ!!ダンジョンなんて……い、行かないよ?………そんなに見てもダメ、俺は行かな……い……から。」


 頷いてはダメだ!頑張れ!!俺の折れない心よ!!

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