第107話 プロの味を堪能

 何も頼んでいないのに、俺達がテーブルに付くなり次々と運ばれてくる料理の数々。


 サラダ、麺料理、ツマミ、肉料理、この山間部の辺境では、売っているのさえ見た事がない魚を使った料理まであった。


 チェッ!やっぱりプロには敵わねぇよな…。

 俺だって、バイト先で少しずつ教えて貰ってる最中だったのに………。


 …………頼んだら、修行させてくれたりしねぇかな?

 でも、この店じゃあ俺は恩人扱いだぁ何だで、嫌でも断わり難いかも……………あーやっぱナシ!ナシ!

 この辺境にずっと居る訳でもないのに頼めねぇわ。


「どうかしたか?」


 俺が変な顔でもしていたか、デカ盾兄ちゃんが声を掛けてきた。


「いえ…いきなり凄い料理が沢山出て来て、圧倒されてました。みんなとても美味しそうです!」


 実際、悟郎さんが滅茶苦茶ソワソワしてるからね。

 悟郎さんがここの料理が気に入って、俺が作ったヤツを食ってくれなくなったらどうしよ…。


 やっぱ修行か?!修行しろって事なのか?!!


「美味しそうじゃなくて、美味しいの!!早く食べましょうよ!食べる為に、私達もお腹減らして来たからね〜!」

「そうだよ〜!!さあ、遠慮せずにドンドン食べておくれ!まだまだ、ウチの旦那が作ってるからね!」


 人一倍食い意地が張った発言の、ハラキリ姉さん。

 腹が一番出てたから、ウルフに腹を攻撃されたんじゃねーよな?


 しかも、まだ来んのかよ!もうテーブルに乗んないじゃん!


 ……そう言えば、食うのも修行だぞってバイト先の巨漢料理長が言ってたな。

 ……ここでグズグズ考えてもしょうがねぇ!

 もう、開き直って食いまくるか!!


「じゃあ、遠慮なく頂きます。悟郎さん、どれ食べたい?」

「ニャッニャン(アレがいい)!」


 悟郎さんに聞いて料理を取り分け、俺も同じ物を皿に盛る。

 チビは食えるもんがねぇから、サクランボでも食ってなさい。


「じゃあ、俺達の命の恩人に感謝を込めて、乾杯!」

「「乾杯!!」」

「か、んぱ〜…い。」


 ……俺、こう言うのお初なんっすよ………。

 ノリとか、良く分かんない。


「ねぇねぇ!私達で出来るアドバイスならするから、何でも聞いて!聞きたい事があったんでしょう?」

「あー、はい。ありがとうございます。」

「おい、シズナエル。まだ食ってもいないんだから、ボチボチで良いだろ?先ずは、美味い飯を食ってもらって、落着いてからにしろよ。」


 デカ盾兄ちゃんナイス!

 そうだよ!先ずは食わせろ!


 最初に悟郎さんが選んだのは、肉の鍋みたいなやつで、大振りの角切り肉と水菜が一緒に入った物だ。


 スープは白湯風に白濁しており、肉はモウかな?

 フォークで肉を刺すと、ホロッと崩れる柔らかさ。

 それなのに鍋の中では煮崩れをしてない…。


 掬って口に含むと、スープの味をしっかり吸った肉の繊維がさらに解けた。

 肉に臭みも無いし、スープもしっかり味が付いてるのにくどくない。はぁ〜ナニコレ滅茶苦茶美味い。


「悟郎さん、美味しいね!」

「ニャ(うん)!」

「次は何食べる?」

「ニャッゥニャォ(お肉全部)!」

「分かった。じゃあ順番な。」


 ここはお外だからね。あんまり、はっちゃける訳にもいかないよ。

 ハイハイ、チビにはベリーな。


 そして3人組も、結構な勢いで料理を食ってた。

 ハラキリ姉さんは、見た目良いけどそれ以上に残念要素がありますな。

 もうがっつき過ぎて、犬食いに見えるぞ。


 次に悟郎さんには、肉多めの野菜炒めを渡す。

 少しトロみがついている様で、肉と野菜がしっかり交わり、中華丼の様に米に合いそうな炒め物だ。


 俺はサラダを頂こう。

 こんなに多種の葉物野菜…なかなか食えないぞ。


 しかも、中には、見た事ない野菜も混じってるし。

 フレンチドレッシング風の味もとても美味しい…。


 やっぱ、プロだよなぁ〜〜。


 あんなラ○ウみたいな風体で、こんなに繊細で美味い料理を作るんだから。

 俺も出来れば、レシピ本の知識じゃなく異世界のでいいから、味を知って色々作れる様になりたいな…。

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