第88 話 戦友との再会 お茶は嗜好品です

 俺の視線は、店内のある場所で釘付けとなった。


 決して均等ではない。長さも太さもバラバラだ。

 ただ、俺が米が買えない時に大変世話になった物。


 うどん。お前、うどんだよな?!


 汁を吸った君は、薄味でも満足させ、夏場は冷やし、冬場は温め、俺をどんなに助けた事か…。

 キクイモ振りの戦友ともとの再開に、思わず目頭が熱くなる。


 思い出すなぁ……。塩が切れた時、うどんの塩味だけで食ったあの味を。


「こちらも購入されますか?乾燥したエルースです。」

「エルース…。原料は、パンと同じですか?」

「そうです。日持ちするし軽いので、旅の必需品ですね。」


 “日持ちする!”その言葉はメッチャときめきワードだよ!

 だが、例え収納すれば劣化しないとしても、爆買いはダメだ。


 俺の高性能倹約センサーが既に米を買ってる以上、余剰となる支出を許す事は無い。


 悟郎さんのセンサーも厳しいが、やむを得ず俺が取得してしまったこのスキルは更に厳しい。

 事実、お茶っ葉を買おうとした時にセンサーが反応してしまった。


 お金があるなら買えばいいじゃん!

 屋台で食いまくってるじゃん!

 消費が更なる供給になって経済を回すんだよ!


 まあ、脳内で色々といい訳を考えた。

 でもダメだった……。俺の高性能倹約センサー、ホント嗜好品には容赦ない。


 屋台の肉やパンは大丈夫なんだ。腹を満たして活力になるから。

 寧ろ、飢餓感を思い出さない様にしっかり食ってるとも言える。


 だが、俺はお茶っ葉が買えなかった……。

 ちなみにカップも買えなかった…。


 茶葉の値段を見て俺の頭に浮かんだのは、“葉っぱに金を出すのか?ワレ?!”と、“葉っぱなら森に沢山あるよ!”の言葉であった。


 なまじっか、便利で優秀なペットボトルを持っているばかりに、他の飲料水を必要としてないのもセンサーの反応に拍車を掛けたようだ。


 だからと言って、ペットボトルの中身を水以外にするかと問われれば、答えは否である。


 洞窟に居た時は他の食料が皆無だったので、ペットボトルに入ってた、限界まで希釈されたスポドリを飲み切った事を後悔した。


 だが、今は違う。


 寧ろ水があった方が、調理等でも色々と助かる。

 何となく、魔法で出した水は出処不明で調理に使う気が起きないし、幻想かもしれないが、洞窟で汲んだ○○の天然水的な水の方が気分的にいいんだよ。


 なので俺ってば、店長さんを侍らせてんのに、油・米・うどんしか買ってないの……。

 色々見せて貰いますとか、カッコつけて言ったのにダッサ……。


 もう、帰ろうかな……。


 俺、金があっても浪費出来ないカラダになってたんだ……。


 あ、悟郎さん!悟郎さん何か欲しい物ある?

 きっと、悟郎さん絡みなら倹約センサー反応しないと思うんだ!


 え?串焼き?あとジャムパン?

 そっか………………じゃあ、買いに行こうね!


「店主さん、今日はありがとうございました。悟郎さんが屋台に行きたいと言ってますんで、買い物は以上で精算をお願いします。また、寄らせて貰いますんで、その時は宜しくお願いします。」

「分かりました。では、またの起こしをお待ちしておりますね。」


 一応、欲しかった物が買えて良かった。

 これで、主食がパン・ご飯・うどんと3種揃ったし。俺的、三種の神器……。


 後は………自然の恵みを探しに行こう。お茶なんか飲まなくても死なないし。


 ……………………でも、前に狩人の奥さんと山で会った時、こんな時はお茶とか出すもんだよな、って思ったんだよ。

 だから、不測の事態に備えて何かしらご提供出来る物は欲しいな。


 お茶の原料と言えば……ハト麦、玄米、月見草…それと、ドクダミ、ハブ茶、プーアル。

 やべぇ。某お茶の原料しか出て来ねぇ。


 でも、緑茶、紅茶類は製造方法が異なるだけで、原料となる茶葉は一緒のはずだし。椿科の葉っぱの若葉だったかな?

 あ!確かゴボウ茶とかもあったな!これなら作れるじゃん!


 あれ?それを言ったら健康茶っぽいやつなら、かなり行けんじゃね?

 びわの葉、クマ笹、杜仲茶、アロエ、明日葉も!

 あとハーブ系だって、あれば料理にもお茶にも出来るじやん!


 やっぱり、森へ行けは正解だな!

 よし。俺のお茶問題はこれにて一件落着だ!

 早速、次の狩りに行く時、一緒に探そう!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る