第87話 お買い物 油と米をください

 俺と悟郎さんは、店主さんの店に買い物に来ていた。俺が必要としているのは、とりあえず油と米だ。


 他にも何かあれば、購入したい。

 クソベアを討伐した報酬を得て、ちょっとリッチな俺だからな!


 それから、買物する時の俺はひっつき系の定員が嫌いだ。落着いて商品を見れないし、聞きたい事は必要な時に自分で尋ねる。


 ………だからね、俺から離れてよ。店主さん。

 欲しいのはアンタじゃないし、今は聞きたい事も無いから。店員に任せて奥に引っ込んでろよ!


「今日は、何をお求めでこちらへお起こしに?」

「色々、見せて頂いてから決めます。暫らく店内を見て回るのでお気にならさず。お客の入りが良くてお忙しいでしょう?」


 実際店内は、以前来た時よりも客入りが良かった。

 繁盛してウハウハなら、自分の部屋で金でも数えてろよ!


「いやー。実は商売敵の商店が色々やらかしたらしくてですね、そのお陰と言いますか、客足がこちらへ向いて来ましたよ。」

「それは商機ですね。ではこんな所で油を売ってないで、店主さんの仕事をされるのが良いですよ。」

「貴方ならその油もご購入頂けると思いまして!」


 この野郎…。上手い事言いやがって…。

 ジト目で店主さんを見るが、ニコニコ笑って堪えやしない。


 悟郎さんの可愛いさで、既に目立っていると言うのに店主のあんたまでくっついて来たら、悪目立ちが過ぎるわ!


「多分、私がいた方が落着いて買い物が出来ますよ。この前のセダンガ商店夫人と貴方のやり取りを見ていた人は多いですからね!実際、貴方に声を掛けようと、チラチラ見ている人がいますから。」

「…………。」


 えぇぇぇーー?!俺のせいだったの?!まさかの自爆?!

 でも、それで俺に声を掛ける理由がわからんし!

 クソババアの討伐、ありがとう!とかですかね?!


「……失礼ですが、貴方は貴族の血筋をお持ちの方でしょうか?」

「……紛うことなき、純然たる庶民です。遠い昔から混じりっけなし、板に付いた平民ですよ。」

「その語り口が、ただの庶民に感じさせないんですよね〜。」

「これは処世術ですよ。店主さんもそうでしょう?渡る世間には人の姿をした、鬼がたくさん潜んでますからね。」

「オニ?」

「あぁ…。俺の村に語り継がれている、人の姿をした魔物の事です。笑いながら、言葉で人を傷つけ、搾取し、不幸へ落す。それを見て喜ぶ魔物をそう呼んでいたんですよ。人をどうにかしようと思ったら、効果を望めるのは、何も物理的な攻撃だけではありませんからね。………ここにもいるでしょう?」


 俺がそう言うと、店主さんがジッと俺を見る。

 異世界にも居るだろ?

 俺は渡○が、世界に留まらず、異世界をもまたぐ最強の共通認識だと思ってるならな!


「そうですね……。分かりました。つまらない詮索はもう止めます。」


 本当に分かったのか?


 なんか、微妙な含みを感じるけど、うるさくしないなら放置かな。


「今日は、油のご用意は致しますか?」

「……はい。あるなら、先日頂いた倍の量をお願いします。あと、一緒に見せて頂いた穀類もお願いします。量はあの時の袋を1つで大丈夫です。」


 異世界の米は、まだ味が分かんねーからな。

 大量に買って、不味い米だった時のダメージを考えると、まずは袋1つ目測で約10kgを買って味を見よう。


 美味い米だと良いな!そうすれば、俺の食生活がだいぶ理想的な状態になれんぞ!









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