第61話 無駄な確認とパン

「得物は木刀でいいのか?」

「はあ…。碌な訓練も師もいない、無頼な剣ですが。あとは、武器が無かった時の名残で投擲を得意としております。」

「……急に言葉使いを丁寧にしてどうした?」

「緊張からでしょう。お気になさらず。(でないと、罵詈雑言しか出て来ねえんだよ!クソが!)」


 俺のヘソは北東に向いたままだ。不吉だね。とにかくさっさと早く終わらせたい。


「悟郎さん。これからちょっと訓練みたいのやるけど、どうする?そこの椅子で待っててくれる?」

「ニャアニャ(見てるよ)!」


 悟郎さんのエールが俺に届いたよ!更に、長距離マラソンのゴール付近で使われる名曲が俺の脳内にも流れて来た。負けないぜぇ〜!


「さあ。剣でも投擲でも、好きに始めていいぞ。」

「……分かりました。(舐めてんじゃねぇぞクソ野郎!)」


 そっちがその気なら、まずは投擲しましょうかね。木刀なら折ってもいいだろ?


「では、ボア討伐の実演でも致しましょうか…。」


 そう言って、一投目を木刀目掛けて投げ粉砕し、その隙に足を払い、手にした木刀をイケオジの首に宛てがう。悟郎さんの目潰しコンボも良かったら決めますが?


「こんな感じでしょうかねぇ?実際は、最初の投擲をボアの鼻面に、その隙に悟郎さんの目潰し、次に足を切り捨て、更にもう片方の目を潰し、最後に首を落としまして討伐しましたが?」

「………………わ、分かった!」

「あぁ!ボアの首!出すの忘れてました!鼻と目が潰れてますが、いいですよね?はい!どうぞ!!」

「「「………………………。」」」


 いい歳の野郎共が3人雁首揃えてるってのにダンマリかよ。マジ使えねぇな!


「悟郎さん、お待たせ〜!」

「ニャ(うん)!」

「屋台の続き回ろうか!」

「ニャッ(わかった)!」


 これ以上、付き合う義理はねぇよな。キッチン用品か食器買って金貨くずそう。

 悟郎さんを肩に乗せ、俺達はギルドを後にした。


「悟郎さん、待たせてごめんね。少し買い物してお金くずしたらまた屋台行こう!」

「ニャ(うん)!」


 なんか、腹立ったせいか俺も腹が減って来たし、再チャージと行きますか!スープ等を作る深目の鍋を大中小と買い足し、燻製用の金網を見つけたので一緒にそれも買った。


「さあ、悟郎さん!美味し物探索お願いします!」

「ニャッ(わかった)!」


 さっき、トマ煮を鍋買いさせてもらったおばあさんの屋台は今日はもう店仕舞いした後で誰もいなかった。

 では、その続きから参りましょうかね!悟郎先生、よろしくお願いします!!


「ニャゥニャッ(美味しそうな匂い)!」

「はい!あそこですね!」


 着いた先には、調理済の肉が数種、大きさを揃えてカットされた野菜類、そしてパン!!これは異世界サブ○ェイと見た!


「いらっしゃい!好きな具を選んで食べれるサンドだよ!どうだい?」

「下さい!何でも選んで良いですか?」

「どうぞ!選んだ具によって金額も変わるから、予算を言って貰えば好みで調整するよ!」

「悟郎さん、どうする?全部乗せもできるよ!」

「ニャッゥニャォ(お肉全部)!」

「分かったよ。少しだけ野菜入れるな!」

「ニャ(うん)!」


 お店のお兄さんに希望を伝え、モリモリサンドを2個作ってもらう。〆て750ゼル。

 悟郎さんは肉モリモリ。俺は鳥の照り焼きっぽいのと野菜モリモリ。いただきます!!


「やっぱり、悟郎さんセレクトに間違いないね!肉も野菜もパンも美味い!」

「ニャッニャゥ(うんっ美味しい)!」


 結構なボリュームだったけど、しっかり完食して大満足だ!しかも、お兄さんの実家で作ってるパン屋さんの場所も教えてもらえる幸運付き!

 悟郎さんと話して、先にパン屋さんへ向かい、パンをゲットする事にした。


 そのパン屋には、教えて貰えなかったらきっと辿り着けなかっただろう店だった。

 なんせ、外観は普通の民家!表札か?って位のちっちゃーい看板があるだけ!辛うじてパンを焼くいい匂いをさせてるから、もしかしたら、悟郎さんのセンサーには掛かったかもしれないけどな。


「これは知らなきゃ絶対無理だわ。知ってても他所様のお宅訪問みたいで敷居が高いつーの!」

「ニャフ(行く)?」

「行くよ!パンは欲しいからね!」


 突撃!民家のパン屋さん!甘いパンもあるといいな!


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