第41話 フォレストラビットの売却と街ブラ

「おう、待たせたな。査定が終わったぞ!」


 そう、ヨランのオヤジさんから声を掛けられた。


「ありがとうございました。問題無かったですか?」

「あぁ。血抜きもしっかりやってあったし、固体のサイズも良かった。何より、高値で売れる毛皮の状態が一番良かった。血抜き用の切り傷以外なかったが、どうやって倒したんだ?」

「あぁ、これですよ。」


 俺は投げ慣れた石を一つ手に出しだ。


「投擲で狩ったのか?!」

「そうですよ。武器なんかろくに持って無かったんで。あとはこの子と一緒に。」


 俺は、肩に乗った悟郎さんを示した。なんてったって、俺の戦友ともだからな!


「デザートキャットか……砂地ならともかく、森の狩りで戦力にはならんだろう?」

「なりますよ!やだな〜!凄くなります!そこんとこお間違え無いようヨロシクです!」

「……お、おう。分かったよ。急にその変な調子はどうした?」


 悟郎さんの不当な評価につい怒りを覚え、テンションを誤ってしまった…。悟郎さんに頭をポフポフされクールダウンする。


 事実、悟郎さんは始めは慣れない木の多さに戸惑っていたが、直ぐに順応し、木登りして高所からの攻撃等でその手数を増やし、一緒にうさぎ狩りをしていたんだからな!


 戦果は、俺4羽、悟郎さん3羽と接戦だった!


「ニャォウ(気にし過ぎ)。」

「ここは、知らしめる何処かと…。」

「ニャーァ(いらない)。」


 悟郎さんにそう言われては、これ以上グダグダ言えんな。しょうがない…悟郎さんの伝説はまだ始まったばかりだから、一般の皆様にはまだ伝わっていないか…。いずれ語り継がれる様に成るだろうがな〜。


「すいません!偶にこうなるんですよ、俺!さ、精算を!」

「…変なヤツだなー。今回は、さっき言った通り状態が良かったから、1匹600ゼルで精算させてもらう。合計3000ゼルだ。良ければここにサインをしてくれ。」

「いや、こちらの事情を知らないのに、いきなり驚かせてすんません!実は、俺がまだ未熟で従魔の働きが無ければここに来る事も難しかったんっすよー。そのラビットも半分はこの悟郎が倒したんで、よろしくです(間違えんじゃねーぞゴルァ!)!」

「そうか…分かった。侮る様な言い方をして悪かったなゴロー。」

「ニャッ(おう)。」


 …むぅ。大人な悟郎さんに、また助けられてしまった。俺も悟郎さんに習って対処しないとな…。報酬を受け取り、最初の受付カウンターへ戻って行く。


「あ、シローさん。買い取りは済みましたか?」

「はい。大丈夫です。」

「では、こちらがシローさんの身分証明書となります。失くさない様に注意して下さい。再発行には20ゼルが掛かります。今回は、初回登録料として300ゼル頂きます。」

「はい。」

「…確かに!300ゼル頂きました。続いては会員の説明書をお渡ししますので、ご自身で良く読んでおいて下さい。トラブルになった時、説明書を読んでいない事を言い訳には出来ませんのでご注意下さい。」

「分かりました。一つ聞きたいんですが、この説明書以下にも野草や魔物について書かれた物は閲覧出来ませんか?」

「ええ、ありますよ。閲覧は2階に上がって左手の扉になります。中にある本は全て持ち出し禁止となります。」

「分かりました。ありがとうございます。」

「他にご質問なければ、手続きは以上となります。」

「こちらも大丈夫です。ありがとうございました。」


 ギルドでの事務手続きが完了したので、門にいた衛兵の元へ戻る。こう言うのは、さっさと済ませないとな。


「先ほどはありがとうございました。ギルドの登録が済んだので料金の支払いに来ました。」

「おう、では先に身分証明書をこちらに乗せてくれ。」


 そう言って、示された硝子板の様なボードに身分証明書を乗せると、ボワッと青く光った。


「よし、大丈夫だな。後は料金が従魔共で550ゼルだ。」

「はい。」

「確かに。これで手続きが完了だ。ようこそ!グランレインの街へ!」


 こうして、やっと街の中を歩いて回る事が出来る。先ずは市場調査だ。価格と取り扱い商品の確認をしたい。


 泊まりはハウスが良いから、街から出る必要がある。金もあんまり無い事だし、さっさとしよう。


 市場の様な通りには、様々な店の様々な商品が並んでいる。これは中々見応えあんな!買い物もしないのに、商品の説明を聞くのも悪く感じたので、気になる物を特技で確認していく。


 あ。そう言えば、博覧強記はくらんきょうきが、『5』になったら詠唱不要になったんだよなー。他の良く使うやつも、ガンガン使って早く詠唱不要まで持って行こうかと。


「悟郎さん、何か気になるのある?」

「ニャーァニャゥニャッ(あれ、美味しそうな匂いがする!)」


 悟郎さんの視線が向いている方へ目をやる。そこには、ジュウジュウと脂の弾ける焼き音と香ばしい匂いが漂っていた。あぁ!これがあの異世界名物で有名なザ・KUSHIYAKIですね!


「すみません!2本下さい!」

「はいよっ!200ゼルだ!」


 屋台のオッサンにとりあえず、1本ずつ食べる分を頼む。良き匂いだぁー!


「悟郎さん、熱いけど少し冷ます?」

「ニャオー(早く)!」


 俺達は屋台から少し離れ、操風の魔法で悟郎さんの分を冷まし一緒に食べた。


「…!美味しい!悟郎さんどう?美味しくね?!」

「ニャッニャァゥー(美味しい!もっと!)!」


 初めて食べた異世界串焼きは、とても柔らかい豚肉の様で、癖もなく脂も程よくあってとても美味しかった。屋台に速攻戻り、再度オヤッサンに追加を頼む。


「すみません!とても美味しかったんで、追加で買いたいんですが、何本大丈夫ですか?」

「おっ!ありがとよ!今、焼けてる分だと10本はあるがどうする?」

「全部下さい!あと、これ何の肉ですか?俺、ラビット以外食べたの初めてで!」

「あぁ、これはフォレストボアの肉だよ。柔らかくて美味かったろ?そっちの可愛い従魔も気に入ったか?」

「ニャニャァ(とっても)!」

「とっても美味かったそうです。早く食いたくて催促されました!」

「そうか!それは良かったよ!何か入れもんあるか?」


 俺は金を渡しつつ、森の木で造った簡単な皿を出し、串焼きを受け取った。


「はい!これにお願いします!」

「毎度あり!また来てくれよ!」

「はい!是非!」


 さあ、端に寄って早速頂きます!!追加で買った分もペロリと食べて、とりあえず落ち着いたな…。


 そして串焼き屋は、俺達が美味い美味いと食べていたせいか客足が伸び一所懸命焼いていた。


 目が合ったオヤッサンからは、サムズアップをもらった。どうやらこのゼスチャーは同じ意味で捉えて良さそうだ。


 他にもあるだろうが、残り950ゼル(金貨は除く)で、もう少し買い物したい!


 悟郎さんともう少し街ブラしますかー!



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