第40話 街への入場〜初冒険者ギルドへ
人がいっぱい居る……。
この規模なら街と呼んでも差し支えないだろう。そんな賑やかさが、外まで漏れて来ていた。どうせ最初に行くなら、もうちょい長閑な小規模の村が良かったけどなぁ…。
ぐるりと囲われた外壁は3〜4mの高さがあり、門には扉と入口の両脇に衛兵、真ん中には検閲をしている衛兵が1人立っていた。通る人は、揃って首に掛けた物を衛兵に見せてから通過している。
「俺、身分証明になるもん持ってないな…。」
「ニャウニャッ(とりあえず行ってみたら)?」
悟郎さんに促され、検閲の列に並びに行く。並んでいる他の人から、遠慮ない視線が向いてくる。
俺のアジアンな見た目のせいか?と、最初は思ったが、俺のマントの隙間からチョコンと顔を出してる悟郎さんが可愛い過ぎるからだと思い直した。
視線を釘付け!わかるわー!!俺もそうだもん!!罪な男だ……悟郎さんは!
その当猫を見ると、何か?と問う様な瞳で見返された。ハッ!これが、あの有名な視線のレー○ー・ビーム?!エキゾチックだぜ!!
「…次の者!」
あ、俺の番になってた。
「すみません。田舎の村から出て来たばかりで、身分を証明するものが無い場合はどうしたらいいでしょうか?」
「ゼルを持っていたら、300ゼルで入る事になる。従魔を使役して一緒に入るなら追加で、250ゼル必要だ。」
「途中で捕ったこれが換金出来るなら、それからでも大丈夫でしょうか?」
「……フォレストラビットか…良い型だな。それだけあれば十分だろう。入って右手の冒険者ギルドの会員になって、売るついでに身分証明を発行してもらえ。身分証明の発行でも300ゼル掛かるが、そうすれば以降の入場料が半額になるぞ。従魔の登録も必ずする様に。」
「ありがとうございます。登録したらお支払いに来ます。」
検閲の衛兵に礼を言って、右手の建物を目指す。
…あ、テンプレ来たらどうしよう!冒険者ギルドの扉に手を掛けながら、どうしようと思いつつもワクワクしていた。これが通常の異世界転生だよねー!
昼過ぎのギルド中の受付は、閑散としていた。奥からは何やら賑やかな声が聞こえて来る。いわゆる併設の飲み屋ですかね?
「いらっしゃいませ!ご用向は何でしょうか?」
如才なく、俺に受付嬢が声を掛けてくる。
「はじめまして。ギルドの登録と獲物の売却をしたいんですが。登録料はこれの売却額で大丈夫だろうと衛兵の方に聞いたので。」
そう言って、手に持っていたフォレストラビットを掲げた。
「はい!良いサイズのラビットが5羽もあれば十分ですよ!早速手続きに進みますね。まずは、こちらの紙に血を1滴垂らして下さい。」
俺は受付嬢から、紙と針を受け取り血を垂らした。すると、紙がフッと輝き血を吸収すると、代わりに文字が浮かんで来た。
名前 シロー
性別 男
種族 人族
レベル 15
属性 地
状態 普通
体力 25
耐久 25
力 25
魔力 25
知力 25
瞬発力 25
運 15
魔法
索敵の術
点火の術
分解の術
回復の術
護身の術
健脚の術
「…はい!シローさん大丈夫です。レベルもしっかりあるんですね!さすがラビをお一人で5羽も仕留められるはずです!」
お!優秀。名前以外の個人情報は口にしなかったな。
「1人ではないですがね。」
そう言って、悟郎を見る。頼りになる相棒を忘れんなよ?
「そうでした!可愛いですね!種族は珍しいですが、デザートキャットですか?」
「(そうだろう!うちの悟郎は可愛い)そうです。」
「では、従魔も一緒に登録しますね!従魔の場合は、首輪を付けて頂く様になるのですが……既に付けられてますね。従魔が起こした事は全て主であるシローさんの責任となります。ご注意下さい。」
「分かりました。」
うちの悟郎さんが、んなバカな事する訳ねーだろが!とは、思いつつも素直に返事はしておく。大事だからね、第一印象。
「では、証明発行まで少しお時間を頂きますので、良ければ先にフォレストラビットの売却を致します。奥のカウンターまでお越し下さい。」
「はい。よろしくお願いします。」
実はあの後、俺達に気づかず森で探索していた3人組を少し観察し、獲物にしている動物を確認、街に来るまでにうさぎを狩っておいた。
いきなり宝箱の金貨出す訳にもいかんしなー。
うさぎ肉の味は、初めて食べたけど結構いけた!悟郎さんも美味しいって言ってたんで、見つけたら今後も狩ります。
「ヨランさーん!買い取りお願いしまーす!」
そう受付嬢が声を掛けると、カウンターの奥から血塗れのエプロンをした、ガタイの良いオッサンが出で来た。やった!イメージ通りの人来た!!
「…おう。見ない顔だな。新人か?」
「はい。今日登録したばかりのシローと言います。よろしくお願いします。」
「何だよ。嫌に小綺麗なガキだな…。言葉遣いも丁寧だし、何処ぞの貴族のお坊っちゃまか?」
「違いますよ。名前も無いような田舎の村出身です。言葉遣いが丁寧なのは最初だからです。」
俺がそう言っても信じていないのか、オッサンは肩を竦めていた。
「はぁーそうかい。じゃあ、早速獲物を預かるよ。全部売却でいいのか?」
「これ全部でいくらになりますか?血抜きだけはしてあります。」
「後で確認はするが、問題なければ1匹500ゼルってとこだ。」
「じゃあ、全て売却でお願い致します。」
「分かった。査定が出たら呼ぶから待ってろ。」
オッサンは、俺からうさぎを受け取ると、また奥へ行ってしまった。
「悟郎さん、ちょっと待つけど大丈夫?」
「ニャニァッウーニャ(大丈夫。肩に乗りたい。)」
「いつでもどうぞ!貴方の指定席です!」
「ニャ(うん)。」
俺は悟郎さんに肩へ移動してもらい、近くにあった依頼書を見た。
『ヤーグル草の納品 10本〜 価格50ゼル』
『マイトナ草の納品 5本〜 価格75ゼル』
『フォレストラビットの納品 1羽〜 価格400〜(個体のサイズ、状態により変動)』
『フォレストウルフの討伐 1匹〜 800ゼル(討伐証明部位 尻尾)』
『フォレストベアの討伐と納品 1匹〜 1200ゼル〜(個体の状態により変動)』
これは常時依頼か?草はポーションの材料とか?その辺、説明が書かれた本みたいのないのかな…。
あ!そういえば、参考書の魔法もそろそろ勉強しなきゃだな。
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