第39話 魔法陣転移後の様子

 その後、暫らく悟郎さん撮影会場と化した、砂漠の地下フロアです。悟郎に了解を貰って、虚偽の術でカラーチェンジした悟郎の撮影も捗りました。


 超ホクホクです!ありがとうございます!!


 え?それ以外?あぁ………。例によって宝箱の中身を全て取得したら、箱が消えて魔法陣が出たけど?


 さっさと魔法陣乗れ?


 いや、別に俺急いでねーし。………あだ!悟郎さん、すいません。行きます!もう撮影辞めて行きます!


 とりあえず、折角なんでブーツとマントを着用してから進もうか。悟郎さんも準備オケ?………あ、色を元に戻すのね。はい、分かりましたー。……直しましたよー。


「では、士郎&悟郎、行きまーす!」

「ニャッォ!」


 魔法陣が光り、俺と悟郎を包む。万一は無いと思うが、悟郎をしっかりと胸に抱いていった。光りが落ち着くと、辺りの様子が見えて来る。


「………森だ。森だよ悟郎さん!俺、また過酷な自然環境行きを覚悟してたんだよ!………でも、まだ安心は出来無いか…。ジュラ○ックなワールドかもしれんしな。」

「ニャウ?」

「だな、探索前に決め付けも良くないな。一先ずは、辺りを見て回ろう。悟郎さん、体調は変わりない?」

「ニャニャッ!」

「じゃあ、色々見て回ろう。疲れたら言ってねー。」

「ウニャ!」


 あれ?あれれれ?…悟郎さんと会話が出来てる?!何で……あ、首輪のせいか?!


「悟郎さん、俺の言ってること分かる?」

「ニャァ!(分かる!)」

「えぇーーー?いつから?俺、今気づいたんだけど!」

「ニャッ!ニァニャウー!(遅っそ!鈍すぎるー!)」

「言ってよー!話せるよって!」

「ニャーオゥ。(喋ってたよ。)」

「ヤッベ!チョー嬉しいんだけど!おしゃべり沢山していい?!」

「ニャッフゥー!(いいから進め!)」


 会話が出来るのに気づき、テンション上がった俺と違い、悟郎さんはドライでツン気味だ。


 俺、結構一人しゃべり(愚痴&妄想)するからなー。悟郎さんにウザがられない様に注意しよ…。


「じゃあ、改めてよろしくな!悟郎さん!」

「ニャ!(うん!)」


 今回飛ばされた森は、常緑樹と落葉樹が混じり、程よく注ぐ陽光が下草まで届いて茂り、緑豊かな森だと分かった。環境はストレス無く超穏やか!あとは出て来る敵次第だな!


 悟郎さんは、砂漠以外を歩くのが初めてのはずだから、興味を惹かれた物の匂いを嗅いだりしながらも、慎重に進んでいた。


「“索敵の術”。」


 俺は敵の気配なんかまだ分からんし、転んでから杖〜杖〜と騒ぐより先手を取りたい派なんだ。だから、悟郎さんに“敵なんかいねーぞ?”って、目で見られても安全マージン取りますよ。


 特に、宿敵ムシ系との遭遇は、出来るだけ心の準備も含めて確保したいところであります。


「なんか食えそうな葉っぱもあるなー。俺の野草食魂がうずくぜ!」

「ニャーオゥ。(いらなーい。)」

「そっかー。俺は良く食ってたっつーか、それしか食うもん無かったからなー。食えるのあったら採取させてなー!」

「ニャ(うん)。」


 博覧強記はくらんきょうきを使いまくり、経験的に行けそうな草を色々調べてたら、思った以上に沢山あった!


 ここに四季があるかは不明だか、あるとすれば春の終わり頃の様な植生だと感じた。クサヌタ(ノビル)、ハスクサ(蕗)、マメツタ(葛)、ハヤキバナ(キクイモ!)と、色々あった。


 特にハヤキバナがメッチャ嬉しかった!根っこがジャガイモみたいなやつで、焼いただけでも美味しいんだ!調味料もあるし、今日はしょっぱい物を食うぞ!


 俺がウキウキと採取をしながら進んでいたら、前方で悟郎さんが「ニャニァッ(何か来るぞ)!」と、声を掛けて来た。


 何か来たか……。しかも複数か。


「悟郎さん。様子見たいからコッチ来てくれ。」

「ニャ(うん)。」


 悟郎さんを肩に乗せ、近場の木に登る。レベルが上がっているせいか登るのも楽々だな。木の影に隠れ、マントのフードを被り気配がする方へ注意を向ける。


 暫らくすると、向こうも注意しながら慎重に進んで来ている為か、ポツリポツリと順番にその姿を表した。


「………!!!」


 その姿は、間違いなく人だった。狩猟の最中なのか、前衛に2人、後衛に1人の配置でこちらへ来ている。


 前の2人はそれぞれ剣と斧の様な物を手にし、後ろの1人は弓の様な物を持っていた。ただ、外見には馴染みがなかった。


 どう見ても西洋風。東洋の風味は一切、感じられなかった。全ての人があの風貌だとすれば、俺スゲー悪目立ちすんな………。


 向こうはそのまま俺に気づかず、木の下を通り過ぎそのまま進んで行った。


「………ここには人が居んのか。思った程、感慨深くはなかった件について。」

「ウニャ、二ャオーン(ずっと、探してたんじゃ)?」

「うーん。正直言うと、“人”と言うより“人里”を探してた。俺が最初に飛ばされたのが洞窟。陽の光も無く俺が生きて行ける環境ではなかった。次が悟郎さんと会った砂漠。生きて行けなくは無いけど、俺には過酷だった。だから探してただけで、震えるほど逢いたかった訳じゃないんだ。」

「ニャニァフ?(なら、これからどうする?)」

「人がいるなら、人が造った村や街なんかが近くにあるはずだ。とりあえずは、そこを目指していいか?」

「ニャウッ(分かった)。」


 人の存在を確認出来た。だが、全くと言っていい程、何の感想も無く見ていた事に驚いた。


 どちらかと言えば、警戒する気持ちが強い。その時自分が、文化・文明は欲しいが、人はそこまで欲していなかった事に改めて気づいた。



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