第25話 砂漠を進む
「…………はぁ……。ちくしょう。やっぱりアイツは
!!………チッ!アラーム鳴りやがった……。いい所だったのに…………。でも、よし。テンション上がったわ!!
グスグスして単騎駆けの時期を逸する訳にはいかないからな。ここからは『仏と○えば仏を斬り 鬼と会えば○を切る』。その気概を持って行こう。
…………例え
外はまだ明るかったが、日差しは傾き、その威力を落としていた。この先は、完全に日が落ちる迄を目安に、行ける所まで進んで行く。
目標物に出来る物が見つけられたらそれを目標に。無ければ、方位を頼りに進むしかない。
「俺も出来れば、黒○号や松○みたいな相棒が欲しいな…。どっかで逢えないかな〜。逢いたいな〜。馬乗った事はおろか、触った事もないけどさ〜。」
読み耽っていた漫画の影響を残したまま、俺は玄関の引戸を開けた。認識阻害のお陰か、休憩中はトラブルも無く、心穏やかに傾き者の話に没入した為、多少は気分を上げてこの先に挑む事が出来そうだった。
外は相変わらず、砂漠が360度広がっている。まさにど真ん中。砂丘や砂紋は、見る分には綺麗に感じるが、残念ながら俺は、観光を楽しむ環境にはいない。
世紀末を生き抜いたヤツ等でさえ、盗んだバイクでヒャッハーしてたと言うのに、俺ってば徒歩だし。
せめて、頭からすっぽり被れるマントの様な物でもあれば、雰囲気出んのになー。
まあ、ガチで頭を覆ってガードしたいんだけどよ。少し外に居ただけで、風で砂が舞ってジャリジャリになって、砂漠の民が頭に何か巻いている意味を体感しからさ〜。
「スマホで方位は確認した。当座の目標はあの砂丘の頂点にするか…。」
目視出来た中で、一番遠そうな砂丘を目指す。砂丘は風で変わる事もあるのは知っているが、他に目に付く対象さえ無い状況なので致し方無い。
「あ〜ぁ〜〜。こっちの方がもっと果てしなかったわ…。千里の道も一歩からとは言うけど、千里も歩く気は無いぞ!この砂漠は1里(3.9km)だって辛いわ!」
歩きながらも、文句は尽きない。でも進んで行くしかない。この方角で良いのか?もしかして、正反対の方向かも?
いつのまにか、リングワンダリングに嵌り、同じ所を歩き回っている事にも気付かず、彷徨ってしまったら?見えるからこそ感じる不安と疑心が次々と湧き上がった。
砂と風は、まだピークの暑さを残している。足を飲むサラサラの砂が、靴の中にも容赦なく入って来た。
上着を脱いで頭から被り、カバーをしながら進む一歩は、通常よりも少ない。ここからは、身心共に過酷さが増すだろう。
『無理をしない』を第一の信条に、進んで行こう。俺にはそれしか無かった。
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