第22話 劇的!異世界ハウス

 宝箱の中身を全て出すと宝箱はそこから消え、代わりに魔法陣が出現した。


「……良く良く考えるとさー、魔法陣って何処へ飛ばされるか分かんねーんだよな。“〇〇行き”とかのお知らせもねーしさー。そのリスクを考えると、気安く乗れねーだろー。少なくとも、俺は乗りたく無いんだよ。ヘタレでごめんねー。」


確実に外へ出れるならまあ良い。行先がモンスターハウスとかだったら、ヤベーなんてもんじゃねーからな。


「と言う訳で、一先ずここで休憩することに決めた!マジックハウス、カモン!」


 俺は早速、頂き物のマジッハウスを出し、魔力を注いだ。そこに現れたのは、瓦葺き・白い漆喰壁が眩しい和風な平屋だった。


「純和風のマジックハウス?!ナニコレ?誰の趣味?!」


 建物中央に配された玄関引戸は木製で、太めの格子には繊細な彫刻が施されており、その隙間から外の光が入り込むと、床に淡く影を落とした。


 ソロソロと遠慮がちに玄関を開けると、1畳半ほどの三和土たたき、一本の材木を加工して造られた、木目も節も美しい飴色の上り框が来訪者の視線を誘い、更にその視線を上げれば、壁に設えた窓から中庭の樹々が迎えてくれる。


 入った第一歩から、建物の劇的なリフォーム前後をご紹介する番組風の感想が漏れて来た…。


 特技の時から思ってはいたが、日本被れが過ぎるぞ!お陰で、高級旅館の様なその趣きに、脱いだ靴をキチンと向きを直して揃えてしまったじゃないか!


 玄関を入って、右手にドンと広い約20畳のリビング・ダイニング。家具・家電付きに偽りなく、ベッドにも出来そうな立派なソファとローテーブルが置かれていた。床には幅広の無垢材が張られ、白木の色がまた美しかった。


「リビングだけでも広すぎるくらいにゴージャス☆だわ。俺、ここだけでも充分過ぎるんだけど。」


 リビング・ダイニングの奥にあるキッチンはL型のシステムキッチンが備わっており、シンク部分がリビングに向かって対面式になっている為、付属のカウンターで食事を取ることも可能だ。


「俺様の料理の腕が試される…のか……?」


 キッチンの更に奥にある扉を開けると、玄関からも見えた中庭に面した廊下に出られる。その廊下も、中庭を囲む様に配置され、庭に沿って造られた地窓からは、苔生こけむした鮮やかな緑がとても映えていた。玄関の窓とは視線が被らない様にした、気配りを感じさせる。


「いやー。ホント、どこの匠の設計でしょう?って感じなんだけど。俺、場違い感が半端ないわー。」


 廊下に沿って水回りがあり、納得の設備が整えられていた。風呂はこんなサイズのユニットバスがあるのか??と、疑問を感じるほど広々しており、洗面所には小振りな収納付きで、タオル等を仕舞っておくのに重宝しそうだ。


 トイレは、サイドに手洗いカウンターが付いていて、小洒落た飲食店にでもありそうな雰囲気がする。


「俺のキャパシティも試されているのか?はっきり言って、玄関で既にオーバーしてるからな?!」


 そのまま廊下を進んで行くと、突き当りで左右に別れ、各居室の入口ドアが並んでいるのが見えて来た。

試しに一番近い部屋に入る。3室共、入口ドアの意匠がそれぞれ異なり、間違えることもなさそうだ。


 約10畳の広さを有した洋室の室内には、ダブルサイズのベッド。ドレッサーを兼ねた衣装棚に同色の木材で造られた机とその横に本棚が設えてあった。


 室内にあるドアの向こうが、ウォークインクローゼットになっており、ハンガーパイプ、システム収納がそれぞれ中に設置されている。


「既にお腹いっぱいなんだけど、まだ“S”が残ってんだよなー。」


 部屋から廊下に出て、玄関方面に戻る様に進むと、ドアが一つ見えて来た。


 最後の一部屋はサービスルーム。廊下からも玄関の三和土からも直接入れる、土間空間になっていた。


 通常は、アウトドアグッズ等の屋外で使う物を保管・収納するのに使われるが、ここは異世界。討伐した魔物の素材や武器・防具などが代わりに措かれる様になるだろう。


「至れり尽くせりな物件見学は以上となりまーす。さぁ、風呂入って寝よう!」




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