第17話 回想 〜 父親はクズヘタレ
〔注意〕士郎の過去回想が入ります。親からの暴力表現もあるので、苦手な方は飛ばして下さい。
小学校も高学年に入れば、俺の感じる理不尽に対して俺も黙っている事は無くなった。要は口答えを始めた。
はじめての口答えは『弟がバカなのも、親父が帰って来ねーのもアンタのせいだろ?』だった。
でもアイツにはクリティカルヒットした様で、その場で容赦なく殴り飛ばされた。女の力でも、子供相手に渾身のグーパン決めれば、空を自由に飛べるんだぞっ、1m位は。
そっからは無理強いから、無視と物理攻撃にシフトされた。体格ではまだ敵わなかったから、主に口撃と捨て身の世間晒しで対応した。
殴られた後、これ見よがしに公園でポツンとしてれば、自己満善意を振りかざすお方の目に止まり、然るべき機関へお知らせ頂けますからね。
その後、一時保護を繰り返していた時、一度だけ親父が呼ばれて来た事もあった。ヤツが来た時、つい笑っちまった。話を聞くには、まだ離婚出来てなかったらしい(笑)
俺のうっかりミスではあったが、それを見た施設員の方は、俺が親父に対して好意的だと勘違いしてしまい、母親からの保護者変更手続き等の話を始めてしまった。
正直、どっちもどっちなんだが、もし暴力を振るわれた時のダメージを考えると、今の方がまだマシだろうと思った。だから、訂正も含めてキチンと説明した。
「すいません。その人が親父だとは思いますが、俺の面倒見る気は無いですよ。ここに呼ばれたのだって、しょうがなくだろうし、面倒くせー位にしか思ってないですよ。あと、俺自身、自分のケツも拭けないヤツに面倒見るとか言われても信じらんねーし。あと、さっきの笑顔はあざ笑いっす。」
俺がそう言ったら、職員さんも親父もフリーズしちまった。事情を知らない職員さんは兎も角、テメーがショックを受けるのはお門違いも甚だしいだろ?
クソ戯けた言い訳も聞きたくなかったんで、言いたい事だけ言ってその部屋を出た。帰り際、アイツがこちらを振り返って見ていたようだが、俺に話し掛ける気概も無いヤツに用はない。
中学校に上がる頃には、身長も伸び、体格もそれなりに育ったからか、暴力を振るわれる事はなくなった。代わりに、陰湿な攻撃が倍増したけどな!
当然の様に、義務教育にも関わらず、制服を買って貰えなかった俺は、世話になかった施設の職員さんに相談した。俺自身が面倒な案件だろうに、その職員さんは嫌な顔せず、いつも親身になって話を聞いてくれた。
腹の中は分かんねーけど、それを表に出さず、大人な対応をしてくれた事にはマジ感謝しかない。
暫らくして、その職員さんに呼び出され、期日と時間指定で俺宛に届く配達を必ず受け取る様にと、言われた。
詳しい事は教えて貰えなかったが、大切なもんが届くらしい。指定された、日曜日の朝9時着の配達を俺は外に出て待っていた。そして、無事アイツに見られる事無く、B5サイズの封筒を受け取れた。
その足で、いつも閉館間際まで居座っている近所の図書館へ行きトイレの個室で封筒を開けた。
中には一通の手紙、俺名義の通帳とキャッシュカード、印鑑が入っていた。
手紙には、クソ親父からの詫びと言い訳が書き連ねてあった。マジクソくだらない。きっとアイツは、これで俺をスッパリ切って以降サッパリな清々しい日々を送るんだろう。
その証拠に、何かあったら頼って来い等の言葉はなく、配達の依頼先には、今の俺の住所と電話番号と俺の名前が書かれてあった。
ホントは水に溶ける紙以外、流しちゃいけないのは承知してたが、持っているのも嫌だったのでビリビリに破いて手紙をトイレに流した。
通帳には100万円が入っていた。金に罪は無い。
そもそも、俺が俺に宛てて送った物らしいしな!俺の為に使おう!!
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