第16話 回想 〜 母親はクソババア

〔注意〕後半、士郎の過去回想が入ります。親は選べずなので、苦手な方は飛ばして下さい。







 上からアリンコ。下からアリンコ。予想を上回るアリンコの数。お陰で、途中ドロップ拾いが面倒になり、自棄になって“まとめて収納しろよ!”とキレ吠えたら、一括で拾える事に気付けた。


 グッジョブ俺。大事だよな、自分で気付くって。


 最初から不親切設計なクソゲーに過度な期待はしちゃいかんのよ。使えねーなとか、アプデしろよとか言っても変わるもんでも無いしな。


 アリンコ共と遭遇し出してから約3時間。延々と同じペース、同じ敵。進む都度、現れる数に増減は見られるが全部アリンコ。


 “これが蟻地獄か?!”と、巣穴説からまた地獄説に傾きつつある今日この頃。皆様、いかがお過ごしでしょうか?


 俺は相も変わらず、石投げてます。


 16年と言う歳月の中で、こんなにも多くの石を投げたのは、俺が人類初の事なのでは?


 これはギネス認定ものだと自負し、この先も精進したいとは思っているんですよ…。思ってはいるんだけれどもねぇ?………限度があんだろ?!限度がよ!!


 いったい何百匹排出してくれてんだよ!!倒しても、倒しても、倒しても、際限無く出て来やがって!しつっこいんだよ!


 テメー等が数で集ろうと、既に倒し慣れた俺は殺られんよ!もうお前等とはフレンド解除だ!さっさと全滅して、俺に出口と休憩を寄越しやがれ!


「伝われ!俺のこの気持ち!!いいか、良く聞け。ここまで来るとな、既に作業だ作業なんだよ…。バイト代が1円?1ゼル?も出ない作業なんだよこれ…。金になるなら文句はねぇんだよ。だけどさぁ、ここを出る手段が今だに無い俺には、特に魔石なんてただの石ころよ。しかも小さ過ぎて投擲にも使えねークズ石だ。外に出られた暁にはそのクズ石も換金出来て、お前等にありがとうを言う日が来んのかね?蟻だけに?!うわー要らねー。マジ要らねーわ!!」


 つい、時給換算しちまうのは俺の悲しいさがだ。しかも自ら望んで持った性質では無い。子供の頃に必要に迫られて習得したもんだ。


 俺には兄弟がいた。弟だ。


 俺の記憶がある時点で、既に俺の家族は家族としての何かが壊れていた。親父は家にいない。勿論、単身赴任とかでなく、帰って来ない系の“いない”だ。


 極々たまに、本当に必要に迫られて家に来るが、直ぐに何処かへ帰って行く。親父がいると知ったのはその時だった。きっと親父は、既に自分の帰りたい場所を他に持っていたんだろう。


 接触は無いに等しい人だったが、俺にはその気持ちが良く分かった。あんな母親のいる所に望んで帰るヤツはいねーよな。俺だって帰らなくていいなら、喜び勇んで他所に行くわ!


 まあ、本人が望んだ所で成人前の子供が勝手に動ける訳もなく、その望ましく無い相手との生活を強いられ続けた。今思うに、俺の口が悪くなる前はまだ良かった気がする。


 事ある毎に『お兄ちゃんなんだから』を慣用句の様に付けられて、無理を言われていただけだったからなー。


 お兄ちゃんなんだから、欲しい物も我慢、食い物も我慢、着る服もお下がりで我慢、お出かけも我慢と、色々と我慢を強いられたもんだった。加えて、弟が出来ない事や不始末は全て俺のせいにされた。


 あの母親曰く、弟が勉強が出来ないのも、宿題をやらないのも、運動が苦手なのも、財布から金をくすねるのも、女の子にイタズラして学校に呼ばれるのも、あと、親父が帰って来ないのも、俺が親父に似てるのも、全部俺のせい。と、言う考えで成り立っていた。


 中々の思考でキモいよな。ジャ◯アンだってそこまで言わない理性があったぞ?ホント、医者に行け!レベルに病んでいたと今でも思う。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る