第4話 初戦はテンプレ 腰蓑ドロップ
薄暗い洞窟を進む。俺の足音しか聞こえて来ないせいか、嫌に響く。
歩いているだけで呼吸が乱れるのは、緊張から心拍数が上がっているせいだろう。自ずと喉も渇く。
「…………出口探しと平行して水場も探さねぇとな……。」
喉の渇きに加え、小腹も減って来た。岩だらけの乾いた洞窟で、食いもんゲットは難しそうだ。リュックから飴ちゃんを一粒出し、口に放る。
「あぁー!空きっ腹に効く!しかもシュガーレス!!」
持っていた飴は、勉強中の眠気対策で買ったスーパークールミントの強刺激。空っぽの胃袋には優しく無かった。
でも、気が少し紛れたせいか、さっきより落ち着いてきた。そのまま枝道も無い真っ直ぐな洞窟を黙々と進む。それに、目が慣れて来た様で前よりは視界が広く持てた。
ふと、先にある黒い固まりの様な物が動いた気がする。歩調を緩め、出来るだけ音を立てない様に近づく。
「ギャギャッ!」
急に鳴き声を上げた黒い固まりは、蹲っていたのか、立ち上がったサイズは子供位の身長だった。
「……ゴブリン。」
ラノベ定番のゴブリン出現に、“ここはテンプレ乙です”と思った。俺のは優しく無い異世界転生だから、てっきり初心者無視のヤツをぶっ込んで来るんじゃ、と警戒してたからな。
ステータスを確認すると、さっき使った魔力が回復してる。
良かった…。どうやら時間経過で魔力は回復してくれる様だ。早速、ゴブリンのステータスを確認。
名前 なし
性別 男
種族 ゴブリン
レベル 1
属性 闇
状態 空腹
体力 5
耐久 3
力 3
魔力 2
知力 1
瞬発力 4
運 3
特技 なし
はぁ?!クソゴブリンの方が、俺より運が良いってどういう事だ?!ヤツの知力=俺の運って、この数字で表された底辺感がスゲー嫌だ!
しかし、やっぱ殴るの嫌だな〜生理的に。まだグローブとか手袋とか着けてりゃ別よ?殴った後で、手に色々付いたら……あ!確か除菌シート入れてた!どっかに入ってるはずだから後で探そ。
だとしても、先手は投擲から試すか。当たりどころが悪きゃ殺れんだろ。
後ろ向いてる内に、先ずは一投!後頭部にヒット!
良く分かるよ〜。頭ぶつけるとキーンとなって、グワングワン回るよな~!立ってりゃ余計に!俺もそうだったし〜(笑)
追撃をもう一投!2撃目も左側頭部に当たった。ゴブリンはその場で手を付き、ギャーギャー喚いている。
手持ちの石が無くなり、3撃目は素早く駆け寄って蹴り上げた。それでやっとゴブリンは倒れ、暫らく痙攣した後、黒い靄の様な物になって消えた。
「体力5のゴブリンに対して3回攻撃が必要とか、俺弱過ぎ!複数来たらどうしろってんだよ!」
あまりの不甲斐なさに独り言ちた。これからもすっげー苦労しそうな予感…。ちょっとサバイバルが過ぎるぞこのクソゲー。
ゴブリンが消えた跡に何か落ちてる。どう見てもヤツが着けていた腰蓑だ…。
「クソ要らねーもんドロップすんな!!せめて魔石でも残せよ!!」
あまりにムカついたんで、腰蓑を蹴飛ばしてから先へ進んで行った。
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