epilogue. 何もかも元通り
夢から覚めて何もかも元通り、というわけにはいかなかった。
いつもと変わらなかったのは景色だけ。
世界は明らかに変わってしまっていた。
あの事件から三日……
――私は学校ではなく警察署に通っていた。
私は三人の人物を殺したのだから。
けれど、警察は取り合ってくれなかった。
あの『ゲーム』に警察の人たちも巻き込まれていたから。
それで警察は人手不足になったにもかかわらず、こうして私のように出頭してくる人で署はごった返していた。
私はこうなることも見越していた。
『ゲーム』の会場が他にもあるなら、こうなるでしょうって。
だから、捕まらないって。
……本当、つくづく自分が醜いって感じる。
三日で起こった変化は他にもある。
生徒と教師の数が減ったために、学校は臨時休校。
働く人の減少に伴い物流が滞る。
品薄状態に陥ったことで、商品の奪い合いに発展することが日常化。
警察官の数が減ったことも、治安を悪くするのに拍車をかけている。
けれど報道関係者も減ったため、その情報はほとんど入ってこない。
私は、そういうことに詳しい現在の私の身元引受人である従兄に調べてもらった。
わかったのは、『方舟』が言っていたことは真実だったということ。
あの『ライフゲーム』には別会場がいくつもあって、
――その犠牲者は世界で三十七億五千万人にも上っていた。
従兄がリスト化してくれたものには、鹿恋枇杷、扇人好、竹上鷹視、薔薇園夫太、四人の名前も載っていた。
それだけではなかった。
従兄によると、生還者の中にはあんないかれた『ゲーム』に巻き込まれたことでおかしくなってしまう人が世界中で続出しているらしい。
私は彼が纏めてくれた記事を見て言葉を失った。
――○○県××町。
引きこもりの男による母親の殺害。
容疑者は
――△△△県□□市。
大学病院外科部長邸宅火災。
焼身自殺を図ったものとみられる。
一人、外科部長の
――●●都◇◇区。
大企業『スカイゴッド』の社長のご息女・
――☆☆府◎◎市。
養護施設職員による無差別殺傷事件。
同僚の職員と施設にいた子どもたちを計四十二人切りつけて犯人は逃走。
場所は「しょうぶのさと」。
被害者の名前が出されており、その中に
どれにも見たことのある顔写真が貼ってあって……。
殺人を犯した?
自殺を図った?
行方不明になった?
殺された?
私があの『ゲーム』でしてきたことは一体なんだったの……?
そう思わずにはいられなかった。
従兄曰く、今回の事件は世界警察という組織によって解決されたとのこと。
捕まったのは『世界食糧管理委員会』を騙った「新世界秩序団」という百八人からなるハッカー集団だという。
また、『世界食糧管理委員会』はそのハッカー集団との繋がりを完全に否定。
システムを乗っ取られただけだと釈明したらしい。
従兄は、これで一件落着だと解釈していたけれど、本当にそうなのかしら?
私は不安を拭えなかった。
だって、今回の事件を起こしたのが『世界食糧管理委員会』の名を借りたハッカー集団だったとしても、
――彼らが使っていた夢を操り、そこで起きた死を現実に繋げるというシステムは、どういう意図でつくられたの? って疑問が残るじゃない。
――――――――
「It's interesting, "Fujinomiya Sho".
(面白いね、「
「Shall we let join our commission?
(彼女を私たちの組織に参加させましょうか?)」
「That's a flesh idea! Make her want to come in now!
(それは斬新な発想だね! 彼女が今すぐに入りたがるようにしよう!)」
「But isn't it dangerous? She may turn against us.
(でも、危険じゃないか? 我々に歯向かうかもしれない。)」
「No. It would be easier to keep an eye on her.
(いいや。彼女を監視する方が簡単だ。)」
「All for the earnest wish of our "World Food Control Commission"!
(すべては我々『世界食糧管理委員会』の悲願のために!)」
「「「「「「All for the earnest wish of our "World Food Control Commission"!
((((((すべては我々『世界食糧管理委員会』の悲願のために!))))))」」」」」
人口調整の『ライフゲーム』【拙作】 日夜 棲家 @Hiyo-Sumika
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