バレンタインデーを過ぎて・・・しまった

矢斗刃

バレンタインデーを過ぎて・・・しまった


俺、尾崎 陣は今日チョコをもらえなかった。


それは体調を崩してしまって、高校三年の最後のバレンタインデーをベットの上で過ごしてしまった。


「結局、彼女出来なかったな。」とぼんやりながら高校生活を振り返っていた。


俺の進路はそこそこの大学に進学することが決まっていた。

高校を卒業して地元を離れてしまう。


なんだか悲しく寂しくもある。


友達たちとの別れ・・・

それに結局自分の思いを最後まで伝えることは出来そうにもなかった。



翌日体調がよくなり、登校することになる。

教室のドアを開けて俺は中に入って行った。


「おはよー。」俺は皆に声をかけた。

「おう、体調どうだ?」と心配そうに聞いてくる友人たち。


「ああ、まぁ大丈夫だよ。」と適当に答えた。

「はは、ならいいんだよ。」と変な笑い声を出した友人の仁太。


割りとイケメンで結構モテる。

長年の友達で仲がいい。

一緒に悪いこともいっぱいした。


「?」と首を傾けた。


「どうしたんだ仁太の奴?」

俺はもう一人の友人のジョーに聞いた。


「ああ、昨日バレンタインのチョコを空野 夕に貰っらしいんだが・・・その勢いで告ったらしい。」


「ほう。」と俺は感心した。


それは凄い勇気を持って言ったこと何だろうと。

前々から俺はアイツのことが好きなんだと言っていたしな。

俺はそんな友人を応援していた。


たとえ自分が好きな子であっても・・・友人を裏切れなかった。


「勇者だな。」と俺は褒めた称えた。

それと同時に、俺にはできない・・・意気地なしだな。


「それでどうなったんだよ。付き合いだしたのか?」と続きを促した。



「振られたらしい、義理だとさ・・・」チョコのことを言ったのだろう。

「ちなみに俺も義理をもらった。」

「マジかー。」ちょっとうらやましいぞ。


「美味しかったな!手作りかな?俺のためだったりして!」

「そんなわけないだろう。」と答えておいた。


「お前、少しは期待してもいいだろう。たとえ儚い夢だとしてもな。」と語りだす。


「お前たとえ手作りだったとして、たぶん本命のついでだぞ!」

「あーあ、それ言っちゃうか。お前、夢ないな。」と嘆いた。

「知らん、現実主義者だと言ってくれ。」とカッコつけた。


「おい、授業始めるぞ!」と言って入ってくる先生。

「そしてはい、自習。」と言って、もう行ってしまう。


「まぁ三年のこの時期だからな。」

「くっそ!余裕ぶりやがって!俺も進路さっさと決めてやる!」と勉強を続けていた。


後ろを見れば仁太が灰になっていた。

もう何も言うまい。


机の空席が目立つ、自主出席のためもう来なくてもいい人は登校しない。

俺はお袋に、家にいても邪魔だから通え、と強制的に放り出されてここにいたりする。


そんなこんなで昼休みに入った。

仁太とジョーは二人で仲良く食堂に行ってしまう。


俺はお袋が作った弁当を食べて仕舞うと机に何か置かれた。


「?」とよく見れば箱のようだ。


これは一体?


「まっ、まさか!ば、爆弾!」と恐怖にかられる。


「チョコレートよ!」と言って声をかけてきたのは空野 夕だった。


なんだ、義理チョコかとホッとした。

生まれて始めて女の子からもらったような気がする。


その顔は黒板に向き表情は良く見えない。

なんだか顔が赤く見えるが気のせいだろうか。


「あ、ありがとう。」うんきっと義理だろう。


俺はチョコを開けようとして・・・


「帰ってから食べなさいよね!」と言われた。


せっかく食後のデザートにいいかなと思ったのに、そう言われたら仕方ないか。


カバンに仕舞った。


それを見届けてなんだかホッとしている空野さん。


「義理チョコありがとう。」と僕は言った。

「はっ?」となぜか切れていた。


「?」俺は首を傾けた。そんな姿を見続けてくる空野さん。

「まぁいいわ。」と言って、そこから離れて自分の席に戻って行った。


それからなぜか噂は広がり、俺は後ろからの視線を恐く感じた。

前からは目をキラキラ輝かせているジョーがいたりした。


一体何が起こっているんだ?

えっ義理チョコもらっただけなんだけど?


「お前・・・」と呆れるジョー。

「俺は何も言わねぇー。」と恨みがましく見てくる嫉妬の化身。


「俺達友達だよな!」と俺は二人に言ったが・・・そっぽを向かれた。

一体俺が何をやらかしたんだ!


その答えがわかるのは帰ってからご飯を食べて、思い出したように義理チョコを食べ始めた時のことだった。


「美味しいなー。」と泣きながら食べるのは仕方ないことだろう。


俺の恋はここで終わるのだと思いながら一つずつ食べる。


いつの間にか最後の一つ。

されを指でつまんで俺は口に含んだ。

これで俺の初恋は終わったんだ。


「あーあ、さようなら僕の初恋。」


ひとしきり泣いただろうか。

その箱を捨てようとして、捨てられない。


ああ、俺はこんなにも好きだったのかと・・・今になって思った。


「うん?」よく見れば小さい紙が地面に落ちているのに気付いた。


箱を開けた時に落ちたのか?

皆にも何か書いたのかな?と思いながらそれを俺は開いた。


そこには電話番号と夜、電話しなさいと書いてあった。


「はっ?」

ああ、チョコの感想が聞きたいとかそんな感じなのかな?


俺はスマホを取り出して、電話番号を入力する。

結構緊張している?


あれ、なんか身体が勝手に動いているような?

そんな感覚に襲われる。


耳元にスマホを近づける。


「遅い!」となんだか怒っている声が聞こえてきた。

「え、あっごめん。」俺は反射的に答えた。


「何時間待ったと思っているのよ!」と怒っている。


「えーと。」と俺は返答に困った。


「次の休み駅で待ち合わせ、十時デートだから・・・来て。」と言われて電話を切られた。


なんだか早口だったなー。


通話が終わった音が聞こえてくる。


スマホの画面を見続けている。


俺は何が起こったかわからずぼーっとしていた。


そして現実に戻ってくる。


「えっ?えーーーーー。」と俺の声が響き渡ったのは仕方ないことだろう。

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