後の祭り
平和だった一年前とは大きく変わってしまった世界。
戦争というものを知らずに育った者たちは、この激動の一年間で無情な現実に打ちのめされた。
目の前で殺される家族や友人。生き残ったとしても四肢を欠損し、まともな治療を受けられずに苦しみの果て息絶える。
だからと言って、人殺しは殺せない。
例え敵であったとしても、その見た目が自身と同じ人間であれば躊躇する。
だからこそ、まともな反撃もできずに蹂躙される。
「…………ぁ」
俺たちが到着した時には既に終わっていた。
キ・ガルシュ兵の死体が数人転がっている。きっと神楽が話していた自衛隊員がやったのだろう。
辺りには鉄の臭いが漂っていた。
「……魔法による攻撃。魔力残滓から察するに岩の魔法が主に使われています。逃げる者を後ろからやっていますね。混乱の最中に何とか彼らが一矢報いたという事でしょう」
アルはそう言ってピクリともしない自衛隊員の死体に視線を向ける。
一人で行動を始めてから、このような光景は何度も見て来た。最初は嘔吐したものだが、好い気はしないが今では吐く事はなくなった。
しかし、問題は――――、
「ああッ!」
動かなくなった二つの躯を前に跪く神楽を見ていられなかった。
「っ――ままならないな」
空の青さが妙に腹立たしかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます