****

「なおみちゃんはどう? 僕のどこが好き?」

 そう言われて、私はおもむろに顔を上げた。

 そうだった、私、彼の恋人だった。

 少年のような風貌の彼はお行儀良くコーヒーを飲む。

 カップから口を離すと私を見つめ、微笑む。

 彼、笑うと目尻に少し皺ができるようになったな。

 そこだけはちゃんと年齢を取っているようだ。

 彼の実年齢を感じて、ようやく私は会話の返答を考える。

「うーん、全部かな」

 すると彼は、困ったような顔をする。


「じゃあ、君は私のどこが好きなの?」

 彼はしばらく悩んで、

「どこなんだろう」

などと漏らす。

 彼は結論が出ないまま首を捻っている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る