***

 私の目の前にはアイリッシュコーヒー。

 ホイップクリームの上に小さな金平糖がいくつか乗せられてきらきらしている。

 金平糖のきらめきが崩れるのがもったいなくて、私はまだコーヒーを飲んでいない。


「思えば、どうしてみんな僕なんかに惹かれたんだろ」

と、彼はブラックコーヒーに口をつけた。

 そりゃあ、彼の肩書きや容姿を考えるとモテる要素しかないと思う。

 でも、肩書きや容姿でモテるってどんな気分なんだろう。

「たぶん、君の表面しか見てなかったんだよ」

 アイリッシュコーヒーを眺めながら、私は言った。

 金平糖に気をとられて、ほとんど呟きのような声しか出せなかったと思う。

「表面か、そうだろな、言われてみればそんな気がする」

 君は首肯する。

 まあ、私は君の過去の女たちなんて知らないけどね。

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